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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百四十四


―――戦場は恐怖を強いてくる、戦場で生まれ育ったような傭兵兄妹にもね。

兄は殺されかけた記憶が、自分を変えてしまいつつあることに気づいた。

猟兵への執着を、言葉と態度と目標設定で歪まさなければならない。

死の恐怖と、誘惑してくるような挑戦心を制御しなければ破滅が見える……。




―――どうあがいても勝てない相手だとは、考えていたものの。

それを確かめるようになってしまった結末から、一種の人生の洗礼を受けていた。

暴力とは純粋な領域で、明確なまでに序列を強いられてしまう。

いつか憧れた『最強の傭兵の座』は、少なくとも彼にはやって来ない……。




―――『未来』に絶望したとき、人は良くも悪くも変わっていくものだ。

その道を追求することが破滅だと理解したのなら、道そのものが恐怖へと変わる。

最強の傭兵という夢はこうして終わり、彼はある意味ではオトナになったのさ。

支配を受け入れる民衆たちの目を覚まさせ、権力の言いなりにならない民衆を創る……。




―――ケガのせいでしばらくは戦場で暴れることはなく、思索に耽るだろうよ。

いい革命家となるかもしれない、恐怖をより理解したことで。

あるいはもっと恐ろしいテロリストへ、化けてしまうのかもね。

この傭兵の男に、恐怖について深い学びを与えるべきではなかったかもしれない……。




―――恐怖は、生存本能が持っているワガママだってことに気が付いている。

『プレイレス』の古い哲学者が洞察したそれは、あまり主流の派閥は作れなかったが。

ボクからすれば、なかなか的を射た答えだった。

だって、『ルードの狐』や猟兵として恐怖と遭遇することは多々あったからね……。




―――思い返せば、どんなときの恐怖もそうなのさ。

『未来』への悲観、あるいはリスクに対して自分の生存本能が戦う前から叫んでいる。

ワガママだよね、実際どんなときでも危機の対策に挑むときは気楽なものだった。

恐怖は闘争のときには、あっという間に消えてしまうものなのさ……。




―――正しいとか悪いとか、それはもちろん時と場合に応じる必要があるものだよ。

生存本能が訴えてくる恐怖に従った方が、ケガすることは少ないかもしれない。

リスクのある行いに対して、何もしない傍観者を選ぶのは英雄的ではないけれど。

少なくとも、合理的でオトナな判断とは言えるケースが多いだろうからね……。




―――ソルジェは喜ぶだろう、この傭兵の成長を。

だが、それと同時に懸念もするだろうね。

それもまた『未来』に対しての恐怖さ、傭兵コルテスが大きな悪夢をもたらすかも。

厄介なライバルは、可能な限りその芽を摘んでおくべきなのに……。




―――まあ、ソルジェのことだから恐怖と喜びの境界線があまりにも薄い。

ソルジェにとって恐怖とは、打ち勝つための敵でしかないからね。

生粋の戦士が恐怖を理解しにくいのは、『未来』と戦うことに慣れているからだ。

傭兵コルテスは、その点ではソルジェよりオトナだった……。




―――『手を組む』という手法で、ソルジェに近づき命を狙うかもしれない。

『最強の傭兵』を追いかける時期は卒業し、狡猾な合理主義者になったなら。

それはときに有効な選択肢になるだろうし、同時に厄介な暴発も心配だ。

彼らの目的は帝国打倒ではなく、祖国の民衆たちの覚醒なのだからね……。




―――混沌と戦乱と不毛な闘争の時代を、彼らは『トゥ・リオーネの地』に呼ぶかも。

戦いばかりを知り過ぎた傭兵が作る国は、大きな危険性がある。

それを相手にする統治者の候補に、メイウェイがいるのさ。

メイウェイは『トゥ・リオーネの地』に、自身の国を創る野心を持っている……。




―――ソルジェが推奨すれば、イルカルラのドゥーニア姫も喜ぶだろう。

ペイルカのカール・エッド少佐も、紛争のリスク管理の面から納得する。

メイウェイは放置しても、受け入れても厄介な軍事的天才だからね。

『自由同盟』側の功労者である以上、暗殺だって不可能だ……。




―――『統治しにくい土地の王』をやらせて、安定を保つ判断も妥当だよ。

その土地で、革命家兄妹が暗躍する『未来』を考えれば。

やはりメイウェイの生存本能が、恐怖を感じるだろうね。

ここにメイウェイがいれば、ソルジェに追撃を依頼したはずだった……。




―――だが、歴史にもしもはない。

傭兵コルテス兄妹は生き延び、より狡猾な獣となった。

恐怖を知り、その使い道を研究し始める手練れの傭兵だ。

情報戦だって、慣れていく……。




「海まで、来たわ。どこに行く?」

「もちろん。大学半島だ。潜伏し、傷を癒し、情報を集めるぞ。どの勢力だって名乗れるからな」

「そうね。どこの連中とも戦って」

「所属を偽る……証明するための品は、ちゃんとコレクションしているんだ」




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