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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千六十五


―――事実誤認なのか、それともソルジェが現れたことの影響なのか。

戦場はシンプルだけれど、それを取り巻く環境にはフクザツさがあるのは事実。

ライザ・ソナーズとの日々は、戦争の最中に終わりを告げた。

生き残った『忠臣』として、この詐欺師は苦しみ続けている……。




「お、お母さん……みんな、あ、愛情のせいで、壊れていくんです」




―――アリアンロッドは語らないが、記憶を知性が読み解いていく。

彼女は邪悪な神のひとりだったけれど、確かに愛情と慈悲は持っていた。

北方で苦しむあらゆる孤児たちを救いたかったけれど、それは実現しなかった。

殺すことが救済だなんて結論には、ボクには認められない……。




―――でも、ジャンからすれば違っているのかもしれない。

誰もが個別の痛みを背負って、生きるしかないわけだけれど。

それはつまり、自分以外の者が背負った痛みを理解するのは不可能ってことさ。

孤児院と殺りくと、孤独なレッドウッドの森のなかでの日々……。




―――それがどれだけの痛みであって、その痛みが紡ぎ出した価値観とは。

想像だけでは及ばない場所に、そういうものはあると思うんだよ。

ボクらからすると困ったことに、ボクやソルジェよりも。

シドニア・ジャンパーの方が、ジャンの痛みの場所に近かったのかも……。




―――呪術と詐欺師の才能だけでは、ジャンの苦痛を読み解けやしない。

話術で情報を盗み出せたとしても、この結果は起こせなかっただろう。

痛みってものは、絶対に他人のそれを理解できないくせに。

似たような痛みは、お互いを引き付けてしまう引力を宿していたんだ……。




「お、『お母さん』も、罰を望んだのでしょう。じ、自分が壊れて、狂っていて、守らなくちゃいけない、こ、子供たちを殺して……こ、殺したあと、遊ばせてあげたけれど。そ、それは、あまりにも……つ、罪深かったことを、分かっていたんだと思います」




―――アリアンロッドの心は、ボクには分からない。

というかヒトには分からないと思うよ、『侵略神/ゼルアガ』の心なんてものは。

でもね、ジャンは違うのさ。

罰されたいと思ったから、自分に殺させたのだと信じ込んでいる……。




―――正しいかどうか、そんなものはどうだっていいことなのさ。

思想を体現するために、突き進んでいる者からすればね。

シドニア・ジャンパーもそうだし、ジャンもそうだった。

我らがやさしい『狼』は、罰と贖罪を望んでしまっている……。




「ぎ、ギルガレア。ぼ、ボクを―――」

「―――目的を、果たすんだ!!オレたちの目的のためだけに、行動しろ!!」

「も、目的……っ」

「過去なんて知ったことか!!オレに、必要なのは、これから先のことなんだ!!」




―――圧倒的な破壊力を持った触手の群れのなか、ノヴァークは叫んだ。

シドニア・ジャンパーに対してもだし、ジャンに対しても。

過去に囚われているふたりとは違い、先を見たがっている。

痛みを知らないからこそ、口にできる言葉だってあるのさ……。




―――おかげで、ジャンは正気に戻ってくれる。

ギルガレアの罰を望むような真似はしない、触手から離れようとした。

シドニア・ジャンパーを確保して、もちろんノヴァークも守りたい。

自分がどれだけ罪深かったとしても、今は猟兵なのだから……。




―――だが、祭祀呪術というものは恐ろしい力だったよ。

ジャンの『狼男』の力をもってしても、生贄になろうと考えてしまったとき。

発生してしまった心の隙に、触手はやはり届いていた。

とっくの昔に、ジャンは呪われてしまっている……。




―――厄介なことに、アリアンロッドに操られたときの呪術の残骸。

そんなものがまだジャンの体には残っていて、その特性を引き出している。

『ゼルアガ』を信奉する者どもも、この世にはわずかにいるからね。

アリアンロッドにあった、善と悪の二面性のように……。




「『ゼルアガ』も、神は神だ。悪神だろうとも、力を有している。その種の存在に、ヒトは生贄を差し出し、対価を求めて来たものだ。そのための呪術も、もちろん、伝わっているのだ!!」




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