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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千六十一


「だ、誰かの役に立つのは、う、うれしいですが。でも……」

「ジャン・レッドウッド!!でも、クソもないんだよ!!」

「の、ノヴァークには分からないよ。ぼ、ボクたちのきもちなんて……っ」

「その通りだ。自分以外のヤツの痛みなんて、分かるわけがない。固有の痛みなんだからな。だから、少尉も、あんたの気持ちも痛みも、分かっちゃいないんだ!!」




「そ、それは、そうかもしれないけれど」

「考えるんだ。騙されそうなときは、考えろ。自分にとって、最適解が何なのかを。冷静にならなくてもいい。必死さだけでもいいから。とにかく、考えろ。現実だけを、直視するんだ」

「げ、現実…………そう、だ。そう、いえば。この『ニオイ』に、お、覚えがある」

「何の『ニオイ』だ?あんたは、『狼男』なんだ。とてつもない嗅覚で、何かを見抜けているんだな!?」




「た、漂ってくるんだ。さ、さっき、彼女と傭兵たちが立てこもっていた場所から。何かが、これは……これは、お、思い出した……っ」

「何を思い出したのか、私に教えてくれるかな?」

「そ、それは……」

「だ、大丈夫だろう。ちょっとした情報だけで、少尉に操られるようなことはないはず」




「……ギルガレアの、ニオイが混じっているんだ。さっきまで、ち、違っていたのに」

「ぎ、ギルガレア。罪科の獣だな」

「け、顕現していたんだ。『ルファード』や、お、『オルテガ』で。こ、ここの遺跡自体も、少し似ているニオイがしているのか……いや、だ、だんだん、あいつのニオイが濃くなって来ているような……」

「神の、ニオイ……さ、祭祀呪術に関わっているんだな。もしかして、少尉。あんた、ギルガレアの一部でも、回収していたとか?」




―――ジャンの目が見開かれる、ギルガレアの一部がばらまかれたときがある。

『不滅の薔薇』の状態だ、天空全体をおおいつくしたイバラの状態。

あれから花びらが、舞い落ちるときがあった。

あの瞬間のニオイにこそ、この地下にまん延しつつあるニオイが同じだった……。




「ば、バラの花びらを、か、回収していたんだ……っ」

「その通りだ。あの呪術の本質に、命を感じ取ったのでね」

「い、命。たしかに、あ、あれはギルガレアが、不滅を求める人たちのために化けた姿で。あ、あなたの思惑には……」

「合致しているものだよ。死を恐れる人たちへの答え。黄泉から人を救済する方法。そのための欠片が、求めている私に向けて降って来たのだ。勇気づけられたよ。回収できたのは、おそらくギルガレアが私に応えてくれたおかげだろう」




「そ、そんなのは……」

「私の身勝手な解釈か。だとしても、事実として、私は祭祀呪術に必要な要素を手に入れたのだ。お前たちが破壊してしまった、あの巨大な薔薇の一部をな」

「あ、あれが、あったとして……で、でも。この、ま、禍々しいニオイは、どういうことなのでしょうか。な、何か、違います。ぎ、ギルガレアは、誰かの願いを受け入れたがる神さまだったと思いますが。こ、これは……」

「姫さまの一部も、混ぜてあるんだ」




―――ノヴァークは、吐き気を催した。

当然だろう、死んだお姫さまの一部。

それを『混ぜてある』ものが、一体どんなものだったとしても。

どう考えたって、吐き気を催すべき何かに間違いないのだから……。




「ら、ライザ・ソナーズ姫さまのご遺体を、も、持ち出したのかよ」

「必要な分だけの、些細な冒涜だ。私とて、本意ではなかったが。他に方法がないじゃないか。だから、一部を回収したんだ。臓腑の一部、腎臓の一部だけ。本当ならば、すべてを保存したかったが。この真夏の暑さのせいで、それは難しそうだったから」

「少尉。やっぱり、そんな真似はするべきじゃない。死者は、静かに眠らせておくべきだよ。し、死んだあとでも、連れ回してやるのは、あまりにも可哀そうだ」

「うるさい。黙れ。ガキには、分からん」




―――たしかに痛みは、固有感覚だったのさ。

ボクにもノヴァークにも、死者を切り刻んで神さまの一部と混ぜるなんて。

そんな真似をする理由は、まったくもって理解が出来ないんだ。

でもね、やはりヒトの人生は興味深くて可能性の宝庫でもある……。




「ぼ、ボクは分かる。ボクも、た、食べてしまったから、分かるんだ」

「た、食べてって……」

「の、望んだわけじゃない。で、でも。く、食い殺してしまったから。ちょ、ちょっとだけ、混ざった。た、たくさん、たくさん吐いたけれど。すべてを、体の外には、出せなかったんだよ。そ、それは、罪深いけれど。で、でも……ボクは思うことにした。い、いっしょに生きているつもりになろうって……し、シドニア・ジャンパー。あ、あなたも、彼女を、食べてしまったんですか?」

「しょ、少尉……あんた、ま、まさか……あ、あんたまで、し、死体を……く、食ったのかよ?」




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