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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千六十


―――シドニア・ジャンパーの洞察力は、大したものだったよ。

言葉に対する反応、『狼男』という特性と。

『ゼルアガ』や生贄に対しての反応に、作戦への必死さ等々。

ジャンが正直者過ぎるのもあっただろうけれど、さすがは稀代の詐欺師だ……。




―――ジャンにとって、最大のトラウマもほとんど言い当てている。

『家』を壊したからこそ、『家族』に依存しているのだと。

そうだよ、孤児院の人々を片っ端から食い殺した事実に近づきつつある。

辛い事実に踏み込まれるのは、ジャンにとってどれだけの苦しみなのか……。




「ああ、狼よ。口元を隠したな。なるほど、なるほど。『そこ』を使って、『家』を壊したのか。孤児院を破壊しただけではない。生贄に捧げたんだから。『ゼルアガ』は、あまりにも残酷だと聞いている。悪神は数多いが、連中はこの世界に干渉したがっている厄介な連中だからな―――つまり、お前は、孤児院の子供たちを食い散らかしたんだ」




―――ジャンをいじめるのが、目的じゃない。

ノヴァークは気づき始めている、だが痛みのせいで集中できなかった。

ジャンの恐怖心も、なかなかに怖いものがある。

『狼男』が『暴走』すれば、どれだけ容易く命を奪えるのか……。




「ひょ、ひょっとして。少尉、ジャン・レッドウッドに……自分を、殺させたがっているのかよ!?」

「ぼ、ボクを、挑発して……っ!?」

「やるなよ、ジャン・レッドウッド。少尉は本気じゃない。あんたを苦しめたいだとか、思っているわけじゃないんだ。ただ、利用できそうだから利用したがっているだけなんだ」

「わ、分かってるよ。も、もしも、そうじゃなかったとしても、ボクは、し、シドニア・ジャンパーを生かしたまま捕まえなくちゃいけないんだ。た、たとえ……その他を、犠牲にしても」




「あ、ああ。オレのことか。そうだよな、そうだ。それでいい。オレごときより、少尉の命ってのは、正しいよ。でも……」

「た、助ける。そのために、治療だってしているし、き、君にもシドニア・ジャンパーにも、動かないでもらっているんだ」

「器用な真似だ。それを達成できるだろうか?」

「や、やれます。ボクだって、こ、子供のときとは違うんだ!!」




「感情は、抑えるんだ。少尉はあんたの感情の昂りを利用してくるぞ。少尉の言葉は嘘であっても真実であっても、道具でしかない。あんたは過度に傷ついちゃダメだ。少尉の言葉の本質は、とても空虚なものだ」

「言ってくれるじゃないか、ノヴァーク。私だって傷ついてしまうぞ」

「そうだ。そういうのだ。オレを傷つけて、コントロールしようとする。それだけだ。それだけのための言葉なんだ。オレの言葉に傷つくような人なら、オレは、こんなに惚れたりしないよ」




「惚れているなら、愛のために死んでくれ」

「そういうのが、愛だとは思えないんだ。人生経験、足りてねえのかも。オレより、少尉の方が大切だ。でも、生贄になったところで、少尉に待っているのは、ライザ・ソナーズ姫さまの『器』になるとか、そんな末路だ。それを、オレは望めない」

「あきらめろと?敬愛すべき君主を、このまま黄泉に放置しろと?」

「自然な結果だ。死者は、眠ったままにしておいてやるべきだよ」




「ああ。狼よ。お前の意見を聞いてみたいな。お前は大切な人々を喰らったのだろう?無垢な孤児たち。不幸な罪なき者たちを、お前は喰らったんだ。そんなお前に、もしも、彼ら彼女らを復活させられる機会が訪れたら?選ばないのか?」

「……そ、それは……ッ」

「否定するんだ。ジャン・レッドウッド。自分の気持ちなんて、考えるな。今は、否定しておけ!!」

「は、はい!!え、選びませんっ!!」




「それこそ空虚な言葉じゃないか。選ぶはずだぞ。お前の耳には残っているはず。悲鳴がな。あるいは骨や肉を食い破る音かもしれない。お前自身の口のなかで、命は砕けて爆ぜて、飛び散ったのだから」

「ぼ、ボクは……」

「だから、否定するんだ。言葉は、自分を支えてくれる」

「え、選びませんっ」




「正しい道を選ばないのか?罪が許される日が、やってくるかもしれないのだぞ?お前は、誰よりも私の気持ちが分かるはずだ」

「わ、分かりません!!ぼ、ボクの……痛みは、ボクだけのものです。そ、それは、あなたも同じ」

「この復活の術が完成すれば、お前はいくらでも罪を償えるんだ。それを、成し遂げたくはないのか?お前も、呪術を使う者だ。お前ならば、いつか私の完成させた復活の呪術で、お前が殺した孤児たちを蘇生させられるだろう」

「そ、それは……」




「否定しろ、ジャン・レッドウッド。同調するな。耳を貸すな。少尉は、絶対にあんたを利用しようとしているんだ。それだけしかない」

「で、でも……」

「死者だけが、ずっと冷たいままか?腐敗して、苦しみ続けなくてはならないのか?奪われたのだぞ、幸福や栄光を。我らには幸いにも奇跡が転がり込んでいる。不幸な死者を、黄泉から救い出すための道があるのだ」

「そ、そうだと、しても。呪術で、蘇らせた存在が、ほ、本物だなんて思えない」




「本物だよ。少なくとも、今よりはずっとマシな状況になる。力を貸してくれないか?お前の協力が欲しいんだよ、ジャン・レッドウッド」




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