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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千五十五


「ハハハ!!何だろうな、こいつは!!」




―――当然のことながら、ソルジェは喜んでいた。

おぞましく暴れる黒い触手どもは、ソルジェを興奮させる。

強敵が現れてしまったのだから、しょうがないよね。

あらゆる角度で動き回る触手の乱打は、武術の達人以外には防ぎ難い……。




―――竜太刀みたいな重たい剣で、鞭のようにしなる触手どもを打ち返す。

それも完璧になんて、さすがは我らが猟兵団長ということさ。

防ぐために弾いてるわけではなく、崩しと同時に攻めまで兼ねていたよ。

竜太刀で触手を受け止めて弾くと同時に、斬撃で他の触手を斬り落としていく……。




「いい動きであります。『捻じりながら斬っている』であります」

「おうよ!!魔物の触手には、こいつが伝統的に有効だからな!!」




―――ああ、我らのような戦士には伝統と教訓の山がある。

様々な魔物との戦いを、戦士という立場はやらされて来たものだよ。

その結果として、こんな未知の触手に対しても瞬時に知識で応じている。

魔物対策の伝統策、触手を持った魔物には『捻じりながらの斬撃』だ……。




―――伸び縮みをする構造は、引っぱることも押し込む力にも強さがあるからね。

しかし、それに対して捻じるような力で挑むことは有効になる。

ソルジェは竜太刀で弾く瞬間にも、斬りつける瞬間にも捻じりの圧を叩き込んでいた。

器用なものだよ、数秒以内にもう対応してしまっているのだから……。




―――それでもなお、状況は良いとは言えない。

この黒くて暴れる触手どもは、とてつもなく豪快な破壊力を持っていたからだ。

床も天井も壁の別もなく、それらのすべてに亀裂が走って壊れていく。

崩壊してしまうリスクこそ、地下迷宮の最も遠ざけるべきポイントなのさ……。




「生き埋めリスクを、回避するであります」

「お兄ちゃん、下がろう!あちこちミシミシ言ってるよ!」

「おう!!コルテスの兄妹よ!!お前らも、無駄死にするんじゃないぞ!!」

「……当たり前。そっちこそ、こんなオモチャで死なないように!!お前は、我々の獲物なのだから!!」




―――友情めいた、あるいはただの戦士らしい共感だったのだろう。

コルテス兄妹からしても、この触手にソルジェを殺されたくないらしい。

まあ、彼らには余裕はあるよ。

この触手が狙っているのは、ソルジェたちであり彼らではなかったから……。




―――ソルジェに壊されながらも、攻め続けている触手ども。

それらは彼らには見向きもしない、おかげで命は拾えそうだ。

治療のための時間を、カレン・コルテスは手に入れた。

今にも毒と失血で死にそうな兄に、一族秘伝の霊薬を大量に飲ませにかかる……。




「死なないでよ。ソルジェ・ストラウスの命を、まだ狙うんだから」

「ああ。お高い霊薬を、使ってもらっている」

「そう。死ぬ傭兵に使うには、過ぎたる投資になってしまう。そういうのは、お互い嫌でしょう。傭兵コルテスという生き物は……」

「……ケチだからな。命に関しても、とてつもなくドライだ。ちくしょう。ストラウスの兄妹の、どっちにも負けちまった」




「生き延びた。そのことで、私たちはあいつらへの免疫を手に入れたの」

「次は、今より差が詰まっている。頂点にいる連中の、弱点だな」

「あれ以上の強さを得ることは、連中には難しい。私たちは、そうじゃないわ」

「追いかけて、追い詰めてやるぜ」




―――因縁の深くなる相手は、可能な限り戦場で処分しておくべきだ。

これは大きな失敗であり、先々の不穏なリスクとなるだろうね。

だが、ソルジェは喜んでいる。

傭兵コルテスを『雇う』のはこの戦場では無理だが、『次』は分からない……。




―――暴力的で、戦争だらけの人生ではあるけれど。

我らが赤毛の北方野蛮人は、実に前向きな男として生まれついていた。

おぞましい触手どもを、叩き返しながら。

崩壊しそうな地下迷宮にリスクを感じながらも、ニヤニヤと笑ってしまう……。



「連中、良い腕だったなあ!!」

「うん。ガルフおじいちゃんと、もしかして同じ一族だったのかも」

「そう思うと、面白い!!だから、そう思うことにしようぜ!!」

「そだね!!いい傭兵だったよ!!」




―――ミアも、傭兵らしい生き様を見せつけた彼らを気に入っている。

強さだけでは、ミアが認めることはない。

精神性こそ、最も純度の高い猟兵は共感を見つけられるのだから。

勝利を求め戦いの価値を信じる傭兵の哲学こそ、我々の共通項だった……。




「しかし、シドニア・ジャンパーの祭祀呪術。おぞましくはあるな。死体から、生えてきやがったぞ」

「イエス。あの女は、性格がとても悪いであります。ジャンでは、騙されてしまうかも」

「ふむ。強さではともかく」

「ずる賢さじゃ、ジャンは負けちゃうよね」



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