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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千五十四


―――カレン・コルテスの血管には、屈辱の歴史が流れている。

それは熱量たっぷりに燃え盛る、反逆と反抗の精神性そのもの。

抵抗することが、彼女に背負わされたアイデンティティだった。

『プレイレス』から解放されたとき、ようやく屈辱の歴史は終わる……。




―――圧倒的な強者に挑むことには、生まれたときから慣れていたわけさ。

ソルジェとミア、ストラウス兄妹と連戦するなんて。

どんな愚行よりも愚かな選択であり、あらゆる死亡リスクの中でも最大級だ。

神々と戦う方が、まだマシだったかもしれないね……。




―――それなのに、喜びと共にミアに挑んでいく。

守りに徹していたカレン・コルテスが、より前傾してきたのさ。

命知らずな戦闘狂の性質は、死地へ飛び込む自分が大好きなものだ。

ソルジェと同じく、彼女も生粋の戦闘狂である……。




―――それでもなお、ミアは冷静だったよ。

氷よりもはるかに冷徹な鋭さで、カレンのあらゆる動きを読み取っていく。

紙一重の回避を連続で成功させながら、その回避の精度を上げ続けていた。

一撃で仕留められる隙を探して、静かな最小限の動きで待っている……。




―――勝利は目前だったが、それゆえにキュレネイ・ザトーは緊張していた。

無表情のままではあるが、予感めいたものはある。

この状況で『最悪の罠』があるとすれば、それが何なのかを具体的には示せない。

しかし、タイミングに関しては分かり切っているのだよ……。




―――勝利が確定しつつあり、敵の脅威が最も解除された瞬間にこそ。

『最悪の罠』が動き出すべきタイミングで、それは今まさにこの瞬間のことだ。

警戒する、あらゆるフォローの動きを想像しながら。

床に転がる死体と、壁に貼り付けられている死体を監視した……。




―――ミアが棍棒をかいくぐり、致命傷を与えるために動き始めたそのとき。

祭祀呪術が動き始めてしまう、どちらの死体の『内部』にもあったんだ。

ソルジェの魔眼対策だろうね、『死体の内側』に仕込めば呪術は読み解きにくい。

そのためだけに、わざわざ仲間を殺したのかもしれない……。




―――死体どもの目が見開き、崩れた卵の黄身みたいに黄色く濁った光を放った。

ソルジェもミアも、もちろんキュレネイもこの異変に気付く。

攻撃ではなく、守備へと戻っていたよ。

集まりながら出口へと向かいつつ、ソルジェを『盾』として使うのさ……。




「祭祀呪術が、動き始めやがった。ふたりとも、離れるんじゃないぞ。オレを盾に使いながら動け。後退するぞ」

「イエス。ミア、先に進むであります」

「うん。コルテス兄妹は、どうするの?」

「最優先事項ではないな、彼らの暗殺なんてものは―――」




『ぎゃぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!』




―――おしゃべりな死者には、気を付けるべきだ。

幽霊に騙された噂話は数多く、もっと現実的には呪術が関与した現象である。

死体どもの体が腹を中心にして、真っ二つに裂けてしまう。

そこから黒くて歪んだ、無数の触手が生えていた……。




―――そして、それらの触手たちは大樹の枝のように広がっていく。

地面も壁も天井も、お構いなしに。

黒く脈打つ、邪悪な血管の群れだったよ。

それがまたたく間に室内のあちこちを、冒涜するように飾り付けた……。




―――悪夢のような光景であり、実際のところ危険性に満ちてしまっている。

それらの触手が平面から浮かび上がるように、ソルジェを目掛けて降り注いだ。

四方八方であり、それぞれが個別の意志を持っているのか。

危険なことに、軌道もタイミングもそれぞれが全くの別であった……。




―――ソルジェであり、なおかつ後退しながらだったからこそ。

それらの無数の黒い触手の乱打を、防ぎ切れている。

体格と筋力と技巧、すべてが要求される威力だ。

猟兵たちの陣形選択は、最適解ではあったのさ……。



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