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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千三十二

―――『魔力のデコイ』、それに対してゼファーは大きく心をくすぐられた。

『強者にほど有効』、そういう概念もね。

ゼファーがそれを修得したとき、使ってみたい相手はヒトでも帝国軍でもない。

自分と同じ時代に生まれてしまった、もう一匹の『グレート・ドラゴン』……。




―――ルルーシロアが独立独歩、野生の道を選んだのであれば。

ゼファーがヒトの力と知識を吸収する、同盟の道を選んだ竜である。

『魔力のデコイ』があれば、ルルーシロアさえ出し抜くかも。

戦闘を至高の快楽と考えている、ストラウス家の竜らしい発想だね……。




―――だが、『デリバリー』の構造を考えてもいだろう。

ヒトよりもはるかに賢い思考速度の持ち主は、プライドのせいで秘密にしても。

『ゼファーとルルーシロアによる、魔術共有/ドラゴン・デリバリー』。

その可能性をすぐに思いついて、そして意図的に遠ざけていたのさ……。




―――『メルカ・コルン』の双子が、魔力を共有できるほど似ているのならば。

『グレート・ドラゴン』たちは、どうだろうか?

その答えは、『とてつもなく似ている』。

似た存在であるだけでなく、竜には自身を最適な形質に変化させる能力がある……。




―――つまりは、『ドラゴン・デリバリー』を企画したとき。

『グレート・ドラゴン』が、『それ以上の戦術』を見つけられない限り。

ほとんど自動的に、お互いの形質は似通ってしまうだろう。

そもそも、先日の決闘的な空戦を経てお互いの進化構造は似通ってもいる……。




―――ただの協力魔術を超えた、『ドラゴン・デリバリー』。

ゼファーとルルーシロアが、その強大な魔力でそれを放ったとき。

どれほどの威力になるのかは、戦闘狂のソルジェじゃなくても興奮するよ。

数百の軍隊が、その一瞬で吹き飛ぶかもしれない……。




―――リエルやミアによって、『風』の力で気圧を調整した直後。

『ドラゴン・デリバリー』の『雷』が、その場に放たれたらどうなるだろう。

これまでの竜と軍団の戦いでは、あり得なかった結果が起きるかもしれない。

ゼファーはその可能性に、このとき潜在的に気づいたのさ……。




―――それは、竜の本能を満たすような戦い方ではないかもしれない。

だが、帝国軍を破壊するためには適した方法ではあった。

ボクとすれば、ゼファーがルルーシロアと決闘したいのなら止められないが。

それをする前に、帝国軍を破壊し尽くしてからにして欲しくもあるよね……。




―――敵は、とても多いのだから。

まあ、ゼファーも現状では『ドラゴン・デリバリー』を使えない。

ルルーシロアも協力など、そう簡単にはしてくれないだろうさ。

自分の強さを、それで向上させるとは思えないからね……。




―――瞬間的には、強くなるだろうけれど。

相手に依存した成長を、竜の本能は基本的に認めない。

ルルーシロアは、その傾向がとくに強くもある。

今は、『魔力のデコイ』についてゼファーが集中していてもいいのさ……。




『それが、あれば。てきへいのやを、かいひしやすくなるね』

「だよね。ゼファーちゃんは高速で飛んでいるから」

「空中で敵の認識を、ちょっとでも歪めれば」

「『魔力のデコイ』をばらまくことだけなら、やれるでしょう。ただし、魔力の消耗が激しくて、『デリバリー』の利点である魔力の共有による省エネルギー化があってこそ、活かせるのですが」




『るるーしろあと、たたかうときにつかうには……むいてないかも』

「ルルーシロアとは、誰でしょうか」

『いやな、しろいやつ』

「竜なんだ。ゼファーちゃんと同じ、すごい竜」




「仲があまり良いとは、言えないみたいなんです」

『あいつ、きらーい』

「竜のライバルがいるのですか。なるほど、それは成長を促してくれそうだ」

『それは、まあ、ある。あいつから、とびかた、けっこうおぼえた。ぼくのとびかたも、おぼえられたけど』




「切磋琢磨しているわけですね。竜もヒトも……」

「プレイガストさん、嬉しそうですね」

「教師、だからでしょうか?」

「そうかもしれない。君たちも、『外』とこの世界を呼ぶように。私も、長らく帝国に捕まり、日の当たらない場所に長くいた。妻との、狩りが最高の時間のひとつだったことも、すっかり忘れてしまうほどに……私は、『外』であるこの世界と、隔絶を強いられていた。嬉しいことだ。私は、少し、過去を取り戻せている。切磋琢磨する若い魂に触れることでね」



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