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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千三十




―――ククリとククルは、『デリバリー』を使った。

ひとつの魔術を分解して、ふたりで使う術。

ついさっきキュレネイに模倣されてしまったが、本家はこちらさ。

矢に『雷』の魔術を分散して、二人同時に放っている……。




「なんだ、外れた!?」

「い、いや。なんか、変だぞ―――」




―――優れた戦士は、直感的に己の危機を理解するものだった。

彼らもそうだよ、自分たちから大きく外れてしまった矢に疑問を持っている。

ククリとククルが彼らを『強い』と理解できるように、その逆も然りさ。

竜の背にいる強力な魔力と、戦場を暴れ回る様子を見ているのだからね……。




―――これほど無様な外れ方をする射手ではない、矢の速さだけ見てもそう思えるよ。

地面に深々と突き刺さった矢は、かなりの速さだからね。

エルフ族の弓使いのそれに似ていて、彼らのなかの誰よりも強い矢たちだった。

大外れした矢が、自分たちの右と左に突き刺さっている……。




「呪術を、かけられるかもしれない!!」

「みんな、散開するんだ!!」

「走れ!!これは、罠に違いない!!」

「どっちに、走るべきだ!?」




「気づいたみたいだけど、遅い」

「術は、いつでも発動できます」





―――『雷』の魔術が完成して、ベテランの傭兵どもを足元から襲った。

地面を伝う雷電の攻めから逃れる方法など、ほとんど存在しないだろう。

シアンやミア、レイチェルならやれるかもしれないがね。

『雷』を気取り、自分にたどり着く前に跳躍するのさ……。




―――世界で最も身軽な戦士たちならば、やれるかもしれない方法だ。

『炎』の魔力を高めて、それで弾くあたりが優れた戦士のセオリーだろう。

ボクなら優雅に、『風』を高めたナイフでも地面に投げて『避雷針』にするかも。

まあ、『デリバリー』という奇襲を見破るのは難しいものさ……。




「魔術というものは、強力な魔力による予備動作があるものだ。一対一の決闘ならばともかく、戦場では使い難い理由はそこにある」

「うん。めちゃくちゃ、見破られちゃうもんね」

「ですが、私たちの『デリバリー』は違います。ふたつに分けた魔力と、術のための構成は弱すぎて……」

「まるで魔術の予備動作とは、思えないわけだね。優れた術だよ。しかも、魔力の割りに構成の完成度が高いのも特徴だろう。比較的小さな魔力で、最大出力の攻撃魔術を放てる」




「どちらかと言うと、そっちが本命」

「奇襲にも使えますが、これをより大きな魔力でやれば」

『わくわくしちゃうね!『まーじぇ』と、ごかくのまじゅつをつかえるかも!!』

「うん。それは、目指していかなくちゃね!」




「リエルさんにも、ふたりがかりな勝てる……ぐらいの強さは欲しいです。現状では、難しいかもしれないけれど」

「……過剰な魔力は、戦場では使いにくいものだよ。疲れてしまうしね」

「そうだね。だから、今は……これで十分だ」

「奇襲的に『そこそこ強力な魔術』を使えるなら、合格です」




―――集まっていたベテラン傭兵どもは、雷電に焼かれてその場に倒れた。

半数が即死であったし、半数が重傷を負ってしまう。

『デリバリー』による奇襲は、かなり厄介なものだよ。

『普通なら想定しない場所から魔術が始まる』からね、空を警戒していたら地面からだ……。




「こ、こんなバカなことが……」

「どうして、魔術が……」

「ち、地上には、いなかっただろうに……」

「ば、バケモノどもめ!」




「降伏しないなら、殺してあげるよ!!」

「武装解除しなさい。ろくに、動けないでしょう!!」

「戦士としては生きられないかもしれないけれど、農民としては生きられる!!」

「二度と戦になど関わらず、故郷で畑と共に暮らすといい!!」




―――生き残りのなかで、それを嫌がる者もいたよ。

ククリとククルは、容赦なく抵抗の意志を示した敵を射殺した。

矢がもったいないかもしれないけれど、戦士として死にたいなら応えるべきだ。

それが『メルカ・コルン』であり、猟兵の思想でもある……。




「戦士として、死にたいのなら」

「私たちは、拒みません」




―――土にまみれて生きるのが、『絶対に嫌だ』と故郷を飛び出す者も多い。

農民という生き方に敬意を持てる者よりも、そうじゃない者の方が多数派じゃある。

戦士として死ぬことは、彼らにとっては人生観の表明ではあった。

万人にとって正しいかどうかではない、戦場で主張された個人的な生き様だよ……。




『てきのうごきが、なくなったよ』

「そうだね。思ったよりも多く、傭兵が逃げ出してくれたから」

「プレイガストさんの、説得工作のおかげです。無駄な矢を使わずに済みました」

「百点満点だろう。こうも、手練れの傭兵部隊を料理できるとは……」




「優秀でしょう?『メルカ・コルン』はね、猟兵の先輩たちにも負けないんだ!」

「『外』の人たちにはない戦い方を、もっと磨きたい。何かしらアドバイスがあれば、ご教授お願い致します」

『ぼくも、しりたい。つよくなるためのおべんきょうは、だいこーぶつ!!』

「ふむ。では、私なりの分析をお伝えしましょう」




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