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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千十八


「竜呪術とでも呼ぶべき領域のものではなく、ただのヒトが使える呪術のものですが。それだけに、竜ならば私の上位互換でやれるでしょう」

『わくわくする。つよくなれるなら、おそわるよ。ぼくは、るるーしろあとはちがうもん!』

「ルルーの弱点ではあるよね。誰かから教わろうとはしない。見て学ぶ、見て盗む。そういうのが好みなんだ。私から学ぼうとも、してくれてはいるけれど」

「素直な方が伸びやすいもんさ。プレイガストよ、頼む。ああ、オレも、覚えておきたい。もちろん、ジャンもだ」




「ぼ、ボクにも呪術って使えますかね!?」

「イエス。嗅覚呪術というものを、すでに使いこなしているであります」

「だよね。正直、めちゃくちゃ高度な呪術ではあると思うよ」

「『狼男』の特性に依存しているものですが、呪術の一種ですよね、確実に。純然な嗅覚では、解釈不可能なものです」




―――ジャンも呪術師ではある、しかし受動的な呪術師だからね。

能動的に、つまり自分の意志で他者に対して使えるのかどうかは不明なところがある。

だが、何事も挑戦というのは事実なのさ。

若いジャン・レッドウッドの伸びしろが、どれほどあるかは誰にも分からない……。




「た、立ち止まっていては、いけませんよね。アルトー……か、彼が、ボクのように『自由同盟』の戦士として、い、生きるというのなら。きっと、より強くなろうとするはずだ」

「ジャンの先祖ならば、そうするだろう」

「せ、先祖だったら、いいなというだけですが……っ」

「血縁だと信じろ。『狼男』が、そうあちこちにいるとは思えんしな」




「数学的な統計を、精密に出すのは難しいのですがね。ジャン・レッドウッド殿、ストラウス卿や貴方自身は、ずい分な距離を旅しておられるはず。『狼男』の血は、この乱世では強大な武器となるでしょう。その力の継承者がいれば、目立つはずだ。まさに、貴方自身のように」

「そうだな。あちこち旅しまくったが、『狼男』に会えたのはジャンだけだ。『熊神の落胤』よりも、レアな印象だ」

「極めて少ない数の『狼男』が、この世界に残っている。となれば、大昔の『狼男』と貴方に血縁がある確率は、かなりのもの。少なくとも、他人である確率より、数万倍は高いものでしょう」

「じゃあ、絶対、ジャンのご先祖さまだね!」




―――絶対の確証にはならないものの、それでも数万倍は無視しがたいものだ。

とくにミアのように、素直な魂と直感の持ち主からすればね。

『狼男』は、あまりにも希少な存在だった。

『吸血鬼』と同じか、それよりは多いのかもしれないけれど……。




「強くなるために、信じることが必要だとするのなら」

「ジャンさんは、アルトーとの血縁を信じるべきですよね」

「……た、たしかに。そうですね。う、疑わないようにしますっ!」

「あんなに強いのに、繊細過ぎるな、この『狼男』は……」




「それがジャンらしさ、なんだよ。ノヴァークよりも、ちゃんと繊細」

「オレだって、繊細さ。軽口叩かないと、こんな不安な状況が耐えられないだけで」

『ぷれいがすと、さっさと、じゅじゅつをおしえて』

「ええ。この呪術は、太陽を頼りにするものです」




「よく晴れているね!すごく、向いてそう!」

「左様。太陽の光と、地面を使う術。なかなかに有名なものでしょう」

「『影縫い』、でありますか?」

「キュレネイ殿も博識だ。そうですとも、これより伝授するのは『影縫い』の体系に属するものです」




「太陽光で生まれる、影と……」

「ターゲットの肉体を、縫い付ける。とくに、腕と脚を、ですか?」

「その通り。『影枷』と呼ばれるものです。私が属する流派の流れにおいては」

「ほう。伝わりやすい名前だな。手足を影に、縛ると?」




「より精密には、筋肉と神経を狙う呪術になります」

「『雷』を意識した、呪術というわけでありますか」

「筋肉と神経を司るのは、『雷』の魔力だもんねー。私は苦手!」

「ぼ、ボクもだよ、ミア。ど、どうしよう?」




「呪術は魔術ほど、魔力は基本的には使わねーだろ。魔力があって困りはしないだろうけど、お前らの魔力でも、呪術は使えるかもしれないぞ」

「な、なるほど」

「私は呪術、あんまり向いてない気がするけど。対処法は知っておきたい!」

「お任せあれ。知識は、必ずや自分を救うことになる。たとえ自らが使えなくても、敵に使われたときの対処になるのであれば、何とも有意義なものでしょう」




―――プレイガストは、勉強熱心なミアのアタマを撫でてやった。

猫耳が楽し気に動く、プレイガストは自分の子供を一瞬だけ思い出してしまう。

猫耳の子たちではなかったが、嬉しそうに笑うときも嫌がるときもあったなと。

哀れなことに、幸せな思い出は彼に激烈な痛みも思い起こさせるものだった……。




―――どんな風に殺されかなど、考えないようにしよう。

冷静よりも深い冷徹な思考回路と、計算尽くめの選択を使うんだ。

記憶より知識を使い、術を述べる。

プレイガストは迫害と監禁の疲弊で枯れた指を、太陽に向けた……。




「呪術のイメージは、こうです。陽光に沿うような流れ……降り注ぐ矢がいい。魔力をその角度で獲物に向けて降ろすように練る。ヒトの魔力ならば、獲物の影に魔力を到達させれば、その瞬間に自信の『雷』を高める。影の首と、腰骨あたりに意識を集中させて……そこから手足へと延びる神経に沿うように呪術を走らせるのです。とくに、武器を握る右腕を思い浮かべて……」

「ああ。なるほど。やれそうだな」

「イエス。私もおそらく、再現可能」

「私は無理そう。でも、『炎』を首と骨盤に集めれば、対処できそうってのは分かった」




『ぼくの、まりょくなら……やじゃなくて、あめみたいに。あたりいちめん、ねらえる!』

「まさに、それが私の狙いですな」




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