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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千十


―――ノヴァークも理解している、自分の命の儚さをね。

ソルジェやプレイガストがいるから、守ってもらえる可能性はあるよ。

だが、いきなりシドニア・ジャンパーがノヴァークへの殺意を全開にすれば?

今この瞬間に、血みどろになって死ぬかもしれない……。




―――祭祀呪術は強力だし、その一端がノヴァークの腹には残っている。

ソルジェにもジャンにも、それは把握できていた。

祭祀呪術の残滓は狡猾にも彼の腹に根を張り、寄生しているのさ。

どれほどの威力があるかは、ソルジェやジャンをもってしても分からない……。




―――だが、腹部を深く走る動脈近くにその残滓は残っていた。

それは術者の悪意に反応して、動脈を縦に引き裂く可能性がある。

シドニア・ジャンパーが施していたのかは、不明であるけれど。

ノヴァークを人質に取る可能性は低いから、口封じ用の呪術かも……。




「死ぬ覚悟と、死と抗う覚悟をしたわけだ。いい顔をしているぞ」

「戦士らしいとか言うなよ。オレには、それは誉め言葉にならない」

「分かった。だが、言い顔なのは確かだぞ。だから、教えてやろうか?お前がどうやって死ぬか。可能性の一つだ」

「少尉に逆らっている。呪術での殺され方を、教えてくれるというのか?」




「そうだ。処刑用、あるいは口封じのための呪術らしきものが見える」

「は、はい。ボクにも。か、かなり危うい場所にあります」

「最悪、腹の底で血が爆発するように噴出してしまう。死ぬほどの激痛が始まりで、それから数分後に腹が血まみれになって出血死することになるだろう」

「最悪じゃねえか。くそ」




「何のために話したと思うんだ?お前だけに伝えたわけじゃない。我が猟兵たちにも伝えている」

「イエス。救命の方法はいくつかあるであります」

「裂けた大動脈を、『炎』で焼いて止める」

「猟兵の救命処置の方法として、確立してはいるんです」




「確立してはいるんです……って、言い方の弱さだよな」

「か、確実に助かるわけじゃないんだよ。結局は、しょ、処置をどれだけのタイミングで始められるかと、治療を受ける側の生命力次第だ」

「オレは、魔力は高いが……身体能力とか、根性とかはないほうだぞ」

「威張ることじゃないよね、ノヴァークちゃん」




「正直になっただけだ。お前ら猟兵なら、少々のケガでも死なないのかもしれない。だが、オレみたいな繊細な男は、腹の底で大動脈が縦に裂けるというのなら、十中八九、死んでしまうだろうよ」

「フフフ。甘いね。魔力による致命傷のコントロールの方法だって、あるんだよ!」

「はあ?そんなもの、聞いたことがねえ」

「猟兵は発見したのさ。まあ、魔術師たちには伝わっている場合もあるけれどな。ガルフはどこかの文献で見つけて、オレたちに練習させたんだ」




「ぼ、ボクみたいな魔力のないヤツには、無理な方法なんだけれど。の、ノヴァーク、君はハーフ・エルフだ。魔力がかなり高いし、呪術みたいな力まで使いこなせるなら。た、短時間で修得しちゃうかも」

「向いていますな、それは。ノヴァーク。教えてもらうといい。君だって、犬死にするのは好ましい末路ではないだろう。愛のための殉教は、とても美しくて詩的ではあるけれど」

「……まあ、そうだな。教えてくれ。たしかに、犬死にしたいわけではない」

「分かった。まずは、祭祀呪術が動き出す場所を覚えておけ」




―――ソルジェは魔眼の力で血の流れと、呪術の位置を教えていく。

ノヴァークの腹を指で押し当てながら、解剖学と呪術の講義というわけさ。

さすがはハーフ・エルフ、魔力と血の流れを把握するのは上手い。

最高の魔術師レベルではないけれど、かなりの有能な若手っぷりだったよ……。




「ここから裂けるだろう。激痛が始まったら。身を逸らせ。身を屈めたがる本能に反する必要がある。この呪術は、本能に応じた動きで、より致命的な傷へと至らせるものだ」

「マジかよ。嫌な、呪術だ」

「シドニア・ジャンパーらしいか、それとも」

「少尉なら、そんなややっこしい呪術は組まないだろう。殺したい相手を、長く苦しめることは好まない。怨敵の苦痛を見たくないわけじゃなくて、より高い精度で殺すためには、惜しみなく最短ルートを組むはずだからだよ」




「なるほど。なら、こいつは元の呪いが主体となっていたか。移動自体は、シドニア・ジャンパーがしたのかもしれないが。取り除くのに、失敗した結果にも見えなくはない」

「祭祀呪術を取り除けるなんて、夢のまた夢だと思うけど」

「魔眼があれば、対処は可能だ。見えるからな。それに、より優れた呪術師であれば、何か別の方法を思いつくかもしれん」

「少尉は、オレを殺したくはなかったはずだ。利用したかったから」




「部下への愛情みたいなものだって、あるだろうさ」

「で、ですよ。そういう感情、ひ、ヒトならみんな持っています。じゅ、純粋な愛情じゃなくても。ヒトって、ざ、残酷を嫌うこともあるんです」

「……何だって、いいさ。少尉を、過度に悪者あつかいするなよ。詐欺師だけど、悪い人じゃないんだ」

「まあ、少年よ。その意見は世間が拒むものだろうが、オレは納得しておいてやる。女性はとても繊細で多面性のある美しい存在だからな」




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