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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千九


―――乱世の愛は、極限を強いてくるものだからね。

いつ想い人が死んでしまうか、分かったものじゃない。

愛の成就と、幸福まで確約セットになる時代のはずもないんだ。

誰もが『家族』を失って、悲恋はあちこちに満ちている……。




―――戦士として戦を求めてしまうソルジェだけど、罪深さだって知っているよ。

過酷な愛の表現を是としながらも、一族丸ごと平和に生きる日々だって好きだ。

戦いを飽きるような魂は、ストラウスの血族には生まれないだろうけれど。

その血の性質の最たる者、ソルジェ・ストラウスは生涯戦を愛するはずだ……。




―――それでも、戦だけでは全てを生み出さないことをソルジェも学び。

誰もがストラウス家の哲学に、命を捧げたがっているわけでもないことを知った。

大きな成長だし、人類全員からしてもとてつもない救済だよね。

最強の軍事力が闘争本能のまま、世界を襲いはしないのだから……。




「少尉はオレの運命だ。その結末が、幸せだとか、そういうものじゃないにしても。全力を尽くすよ。少尉だって、分かっている。アンタには勝てないだろう」

「戦いの是非を、勝ち負けだけで判断するなどと思うなよ。愛といっしょさ」

「死んでも、構わない。なるほど。ちくしょうめ。ちょっと、分かるし……理解不能だとも思える」

「だろうな。誰もが、ストラウス家の価値観を有しちゃいない。最近、学んだことだ」




「異常な戦闘欲求だ。復讐心だけじゃない。そもそも、アンタは好戦的なんだよ」

「戦士だからな。ストラウス家に生まれたら、お前もそうなる。お袋の言葉を聞かせやろう。『戦場で死んで、歌になりなさい』」

「怖いね。そんな教育していた結果が、目の前で竜に乗っている」

「お前もな。竜に乗っている。生まれも思想も問わず、巨大な運命に翻弄されちまう時代というわけだ」




「嬉しそうだな。戦争好きの戦士とは、やっぱり分かり合えない」

「お前の無礼なほどの正直さは、実に好ましいよ」

「敵を作り過ぎるんじゃないかな、その性格?」

「強い敵も好きだ。むろん、仲間を死なせたいわけではない。だが、戦士の居場所など、究極的に戦場だという点を否定するのは、どうにも無理があるだろう」




「戦を愛するのか。悲鳴と、焦げた血の悪臭。死んだヤツは、夏なのに粘土みたいに冷たくなるんだぜ」

「死者へは敬意と友愛を。オレは死の冷たさを愛しちゃいない。生きている者を守るために、死者を背負って生きるんだ」

「……愛があれば、幸せはいらない。でも」

「迷うべきだ。それも正しい。愛しい者には、やはり幸せでいて欲しいものだよ」




「少尉は、欲張りだと思うかい?……男女の愛情とは、ちょっと違うだろうけれど。あの忠誠心は、もはや愛だと思うんだ」

「正義や愛のいいところは、正しくなくてもいいところだ」

「間違っていると、思っているんだよな」

「オレはな。だが、どこまで否定できるものか」




「完全に、蘇らせるのは……本当に無理なのかな」

「ねえ、ノヴァーク。さっきのハナシ、聞いていたよね?」

「私たちだって、生き返らせたい人はいるの。ジュナ姉さんだって……」

「……すまない。デリカシーが、足りなかったかも」




「いいよ。みんな、一度は願ってしまうから。死んでしまった大切な人を、生き返らせる方法があるとすれば……」

「選びたくなる気持ちは、分かるわ。でもね。私たちと、ソルジェ兄さんは、愛しい人の『面影』に過ぎない存在を、本物だとは思えないの」

「……分かった。さっきの言葉は、忘れてくれ……でも。でもな。ソルジェ・ストラウス」

「言いたいことがあれば、言え。聞いてやるべきだろう」




「戦争は、やっぱりろくなもんじゃないぜ。愛する人のとなりに、戻れない者がたくさん生まれてしまう。アンタはさ、それを肝に銘じておいてくれ。帝国の皇帝を殺して、どこかの王国の王になるのなら。戦争が大好きでも、徹底的に避ける王さまになってよ。悲しみを、減らす最高の方法のひとつに違いないから」

「……他人のために、それだけの言葉を吐いたのは初めてかもな」

「オレは平和主義者だ。反抗期で、家出野郎だけど。愛のためなら、不幸にだってなれるかもしれない。でも、喜ばしいことではないから」

「肝に銘じておく。戦がなければ、確かに、戦士は『家族』といっしょにいられるのだから。それがどれだけの価値あるものかは、オレには痛いほど理解できる」

「……戦いがない世界なんて、想像できない。それでも……頼むぜ」




「ああ。善き王を目指す。歴史の遠い果てからも、オレの統治の時代が恐れられぬように。偉大な大魔王となってやろう。そのためにも、力を貸せ」

「分かっている。善き大魔王さん。愛だけでも、十分だけど。戦士になれないオレは、やっぱり幸せが欲しいから」

「踏ん張れよ。シドニア・ジャンパーは、勝ち目のない戦はしない女だろ」

「そうだ。だから、もしも、オレが二度とアンタに文句言えない状況になってしまったときのために。今、伝えておいたんだ。残酷さは、きっと不毛なのだと」




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