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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九百九十


―――林のなかに逃げ込んだ、というよりも逃げ込むことを強いられたのさ。

帝国兵どもは、あっという間に追い詰められたことに腹を立てている。

どうして、こうまであっさりと術中にハマってしまったのだろうか。

地の利の浅さは、同等のはずだろうに……。




「ちくしょう。どうなっていやがるんだ!!」

「メイウェイは、魔法まで使うのか!?」

「静かにしておくんだ。せめて、声を出すな……」

「体力を温存しておけ。戦うにしても、投降するにしても……」




―――レイ・ロッドマン大尉の耳は、エルフほど鋭敏ではないけれど。

十分な追跡者としての能力を備えていて、連中の話し声のすべてを聞いた。

敵の質のバラバラさに、つい先日まで帝国軍であった彼は嘆く。

情けない、十大師団以外の兵士の質の低さにはいつもあきれ果てる……。




「お前ら!!追い詰められているということを、教えてやろう!!こちらの数は、二十人余り。お前らは、たったの四人と来た!!」




「人数を、当てられたぞ!?」

「どうして?情報が、漏れていたのか?」

「……違うさ。足跡の数から、判断された。あるいは……」

「……あるいは、魔力や話し声からだろう」




「困ったもんだな!!この村には、呪いで強化された猟犬たちもいるぞ!!ワンワン、ワンワン!!あいつらは血に飢えて、残酷だ!!帝国兵の肉が、お好みだってよ!!」




―――レイ・ロッドマン大尉の挑発に、帝国兵どもの半分が腹を立てる。

安っぽい挑発だが、練度の低い兵士にはこれはとても有効なものさ。

語彙のレベルが等しくなるからかも、真偽のほどは不明だね。

いずれにしても、帝国兵どもは覚悟すべきときだった……。




「私は、メイウェイ!!有名だと自称するほど、派手な性格をしているつもりはないが、諸君らは私のことを知っていると思う!!諸君らの生殺与奪を預かる身となった指揮官として、投降を進めてやるぞ!!」

「うちの親分は寛容なんだよ、お前らだって、死にたくはないだろう!?犬死にだぞ?ここで死んでも、何にもならん!!捕虜になるなら、帝国軍が金を払って、貴様らを回収してくれる可能性はある!!」

「……ねえよ!!オレたちは、ただの雑兵なんだぞ!?こんな、つ、使い捨ての任務を命じられるような!!」

「分かるぞ。その苦しみはな。オレやメイウェイも、ガキの頃から軍にいたが……何度も使い捨ての憂き目にあった!!その度に、生き延びてしまえる運が、我々にはあったが。お前らには、どうやらなかったらしいな!!」




「投降したまえ。人数は、先ほどからすでに十人増えた。今、さらに二人が追加されたぞ。君らは十分に逃げるための計画を練らなかったわけではない。こちらの追跡能力が、君らの戦術に勝っただけだ。あきらめて、投降しろ。さもなくば……殺すことになる。君らは情報源としては、おそらく弱い。使い捨てにされたんだからね」




―――軍隊は残酷であり冷酷だし、合理的すぎるのさ。

この帝国兵どもは、まさに使い捨ての憂き目に遭わされている。

敵軍の中枢を攻撃して来いだなんて、生還可能な戦士は猟兵ぐらいだよ。

帝国兵どもは、舌打ちした……。




―――集中を絶やさないレイ・ロッドマン大尉は、その音さえ聞き逃さない。

指で若い兵士たちに合図を送る、向かって右側に兵士の数を増やすのさ。

防戦しようとしたとき、そちらから攻められたらヒトは弱いからね。

ブラインド・サイド/死角となり、ろくに攻めを受け止められない……。




―――バカバカしい悪口めいた応酬の裏側で、きっちりと戦術は組み立てられている。

逃げる敵をせん滅するための動きもある、中央にいちばん戦力を集めるだけでいい。

レイ・ロッドマン大尉は、指のサインだけでそれを成し遂げる。

教えたわけではないが、不思議とヒトってものは指の動きをおよそ読解した……。




―――戦術は成されつつあり、それはまた敵へのメッセージでもあるのだよ。

そこそこ賢い兵士ならば、包囲陣形が持つ意味を読み取けるはずだからね。

レイ・ロッドマン大尉は、この敵どもの半分に期待している。

ちょっとは賢く、練度が高いと判断したからだ……。




―――あるいは、あきらめてしまって何もしないかもしれない連中かも。

そこまでは、戦上手の大尉殿にさえも責任は負えなかった。

だが、この帝国兵どもの賢い半分は応えてくれる。

投降すべきかと、話し始めていた……。




「投降すべき、ではある。それが生き延びる唯一の道だ」

「だ、だが。投降したとしても、連中が捕虜を生かしておくのか!?」

「それは、絶対ではない。メイウェイ殿を、信頼するしか……」

「メイウェイ殿だと!?あいつは、裏切り者で、敵なんだ!!帝国の敵を、そんな風に敬意を込めて呼ぶ必要はどこにもない!!」




「ケンカするなよ、若い帝国兵ども!!かつての上官であるオレは、悲しくなっちまうよ!!」

「うるさい、貴様も裏切り者か!!」

「まあ、裏切り者ではあるな。だが、帝国軍もオレを裏切ったんだ。殺そうとした。政治ってのは、厄介だな。関わりたくもねえのに、戦争ってのは、政治そのものと来た。お前たちも、政治が嫌いじゃないのか?帝国貴族のお偉いヤツらのために、こんな故郷から遠く離れた土地で死ぬハメになっている!!」

「投降するのだ。そうすれば、命だけは助ける。そして、投降しなければ、君らの命は、あと三十秒もないだろう。包囲は、完璧なんだ」





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