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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三十八


 ガンダラらしく『攻撃』的な戦術だったな。


「ククク!……確かに。攻めて、勝ってしまえば、全て御の字となるわけだ」


「忙しくはありますがね」


「……休ませておけばいいわ」


 ルチアの発言は、オレとガンダラを喜ばせた。我々も考えていたからだ。脱出できないのならば、休ませておけばいい。この状況を終わらせたあとで、『次』の戦いをするために。


「ギムリ」


「何だい、ストラウス卿?」


「ルチアの言う通りにするぞ。オレたちの帰還で、戦士たちも市民たちも落ち着きを取り戻してくれているのならば、食事にしろ」


「しょ、食事?……マジで?……この状況で、か?」


「そうだ。この状況だからこそだよ。メシを食うだけでも、ヒトは落ち着けるものだからな。それに、体力も相当に使ってしまっているだろう」


「ああ。それは、確かに……」


「『オルテガ』を、元の世界に戻したら、戦になる。そのときのために、備えておく意味もある」


「……戻せるんだな?」


「疑う必要はない」


「それって、つまり。戻せなければ、終わり……だから?」


「消極的な考え方をしないことね。ギムリ、私たちは勝つのよ。『ギルガレア』さまを討ち取ってね」


「……お前らの神さまだろ?」


「そうよ。敬意は持っているけれど……あの方も、罪深い。選ぶべき相手を、間違ったから。私が罰して倒すのよ」


「分かった。オレは、確かに消極的過ぎるかもな。以前から、南のエルフたちは、いつだって勇敢だったよ。攻めて、攻めて、奪う……ああ、これは、褒めているんだぜ」


「知ってる。仲間なんだから。そっちも、私たちが成し遂げると信じて、行動しなさい。堂々とね」


「了解。だが、一つだけ」


「ストラウス卿に逆らうの?」


「違うさ。ルチア・クローナーに、仲間としてアドバイスを一つ」


「……何よ?」


「気負うなってことを。何か、あったんだろうが」


「知らないくせに」


「知らないよ。でも、見当はつくんだ。戦場で、イライラしちまう理由ってさ、そんなに多くはないだろ」


「……ええ」


「オレも、お前も。ストラウス卿たちに比べれば、弱い。弱いってことに、甘えたいわけじゃなくてな。事実なんだよ」


「出しゃばるなって?」


「死ぬなってことだ。お前たちは、仲間が死ぬと、躍起になる。勇敢だ。恐れを知らない。それは素晴らしくもあるが、危険でもある」


「……死ぬ気はない。ストラウス卿より前に、出れるとも思ってはいない。でも……」


「チームワークをしようぜ。エルフだけではやれないことを、するんだ。巨人だけでも無理なことを。お互いの、持ち味を合わせるとしようぜ。それが、きっと、オレたちの本当の強さだ。色んな連中が、協力してくれている。頼られて、頼りもしようぜ。そうすりゃ、強い」


「……口が上手いんだ」


「実力も、知っているだろ。オレも、知ってるよ。じゃあ、死ぬなよ」


「そっちもね」


 若手たちの成長を目の当たりにして、嬉しくなっちまうぜ。ルチアもギムリも、経験値に磨かれている。この二人が、傭兵隊長として率いる戦士たちと共に、帝国軍と戦えると思うと、ワクワクしちまうぜ。


 楽しい戦がやれそうだ。


「じゃあ。メシの炊き出しをするぜ!……きっと、大勢のヤツが驚くぞ。のん気すぎるってさ」


「驚かせておけばいい。すぐに、元の世界へと『オルテガ』を奪い返してやるからな」


「信じてるぜ。アンタは、オレたちの英雄なんだから!」


 ギムリはニヤリと笑って、背筋を思い切り伸ばして歩き始めてくれる。若い巨人族の体は、遠くからでも目立つからな。自信満々でいてくれるほど、統率を保てるだろう。


「……さて。それでは、大きな問題を解決しましょう。『蝶』と『ギルガレア』を、探し出さねばなりませんな。あるいは、おびき寄せる方法があれば、そちらでも。何か、見つけていますか?」


「『不滅の薔薇の世界』は、先ほどまでといくらか違う」


「地上の道が途絶えましたが……空では、つながっているのですな」


「ああ。『ギルガレア』は、ダブルスタンダードだ」


「我々の仲間か敵か分からない状況ですな」


「どっちもが、本音なんだろう。あいつは、どちらの願いも、叶えたがっているだけだ」


「つまりは、完全な敵対でもない……ルチア、私をにらまないように」


「……ごめんなさいね、ガンダラさん。私は、未熟者だから、神経質になっている」


「ええ。信仰からは、なかなか自由にはなれませんからな。失望が大きいときは、重みともなる。許しますよ、私は」


「……ストラウス卿、つづきを。この世界は、どこが変わったの?」


「ゼファーも気づいていたが……ジャン!」


『は、はいっ!?』


「薔薇のにおいは、どうなっている?」


『ば、薔薇は、その……強く、なっています。さ、さっきから、どんどん……っ』


『だよね!』


「『外』にも漏れ出して、ゼファーの鼻に届いた。空にいた『蝶』を奪った『道』は、地上にはない。あの活性化している赤い花畑の近くに、つながっている」


「……それは、予想?」


「いいや。呪術だよ」


 『呪い追い/トラッカー』を試している。『ゼルアガ』である『ギルガレア』の権能を読み解くことは、難しいかもしれんがね。『蝶』は、ヒトが生み出したものだ。


 ジャンも、同じことをしてくれている。あちらは嗅覚を使う呪術だがね。


『……そ、空に……においが、混じっています。こ、これは……ぼ、ボクには、覚えがありますよ……っ』


「何の臭いだと言うの?」


『……や、薬品に、薄められています。け、けれど、分かる。つ、罪深い血のにおいです。ち、小さな子供の血を……つ、罪深いボクは、知っていますからっ。『蝶』が、あ、赤ちゃんが変化したものなら……き、きっと、このにおいになる』




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