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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三十七


 夜の高みには、イバラが走っていた。『不滅の薔薇の世界』は、南東へと進みつづけているらしい。


「仕留め損ねてしまった……キーヴィー……ッ」


「キーヴィーのためにも、追いかけるべきだよ!」


「そう、ね……追いかける……」


「帝国兵どもの同士討ちは、我々にも有益です」


「……キーヴィーの死体は、あとで弔えばいいわね」


「ええ。今は、生きている者を優先すべきですから」


「……ストラウス卿」


「任せろ。もう一度、『不滅の薔薇の世界』に突入するぞ。『ギルガレア』が庇うのならば、追い詰めて仕留めるほかにない」


『うん!こんどこそ、たおしてやるんだ!!』


 殺し合い、生贄の道をひた走る帝国兵どもを置き去りにして、空の高みを目指す。


 ゼファーは鼻をヒクヒクさせながら、空に流れる風からにおいを選んだ。


『みつけたよ。『おるてが』の、におい……せんしたちの、ちのにおい……ばらの、へんてこなにおい。つよくなっているんだ!』


「『不滅の薔薇の世界』が完成しつつあるのかしら。『ギルガレア』さまの『場』を、獲得したのかも……」


「まとめて倒せばいいよ。『ギルガレア』のおっちゃんは、あの子を選んだ」


「ちょっと、ショックかもね。キーヴィーは、あれだけがんばっているのに」


「成し遂げただろう。戦闘を、東に引き付けた。敵兵を消耗させたし、避難のための時間を稼いだ」


「……立派に、がんばってくれたわ。『ギルガレア』さま……私が、リーダーとして、すべきことは、一つです……倒します。『ギルガレア』さま。貴方が、私たちの願いよりも、『蟲の教団』と……あのかわいそうな子を、選ぶなら……倒すべき敵です」


 旗幟鮮明とするのも、戦場の法則だったよ。ルチアは覚悟を固めた。


 ゼファーは夜空の暗がりを飛び抜けていき……空を『くぐる』。吸い込まれるような風の流れを追いかければ、あの神さまが創り上げた世界へとたどり着いた。


 空に、赤くかがやく薔薇の花畑が咲き誇る、『不滅の薔薇の世界』へと。


『ひろく、なってる……っ!』


「『オルテガ』の街並みの『外』に、『森』が出来てしまっているのね」


「なんだか、『外』と似ているよ。おっちゃんの、『縄張り』になっているんだ」


「ええ。それでいて……上空の……鏡合わせのように逆さまとなっている、もう一つの『オルテガ』は、降りて来ているようですね」


 薔薇の花畑よりもさらに高く、そこに並んでいた街並みは、先ほどよりも低く感じられた。


「……ガンダラたちと、合流するぞ。情報を共有したい」


「街並みは狂っていませんね。ですが……『森』の手前で、人々が集まっています」


「脱出できなくなっているのかもしれない。『ギルガレア』さまは、私たちを逃がしたくないのか……」


「だとしても、『蝶』を倒せばいい。『蝶』を庇おうとするのであれば、『ギルガレア』も倒すのみだ」


「……ええ。迷わない。あれだけ、助けなくちゃならない人々がいる。私たちの正しさは、彼らと共に在るのだから」


「それでいい」


 迷わせたくないからね。試すような複雑な価値観はぶつける必要もない。ゼファーは『オルテガ』の南東の城塞へと向かうと、人々の集まりの前へと降りた。『巨狼』に化けたジャンが、すぐさま駆けつけてくれる。


『だ、団長!!み、みなさん!!ご、ご無事で何よりです!!』


「ああ。そっちも無事だったか」


『は、はい。た、ただ。だ、脱出のための道が……と、途絶えてしまったんです』


「やっぱり、『ギルガレア』さまは……ッ」


「ガンダラは?」


『か、『風の旅団』と、巨人族の戦士たちとで、みんなを説得したんです。じ、自暴自棄にならぬようにと……っ』


「さすがは、オレの副官殿だ」


 視線を城塞に向けていると、ガンダラとギムリが肩を並べて現れた。ガンダラはいつものポーカーフェイスだったが、ギムリはいかにも疲労困憊といった顔面だよ。


「ああ!ストラウス卿、よく戻ってくれたぜ」


「市民の説得は大変だったようだな。よくやってくれた」


「帝国人も、混じっていましたからな。彼らを責めようとする者たちも、多かった。わずかばかりパニックが起きそうでしたが……団長とゼファーを見たおかげで、落ち着きが生まれました」


『ぼく、めだつもんね』


「ええ。竜は、力の象徴です。それは、我々だけでなく、帝国人にも認識されつつある」


「名誉なことだ。さてと、ガンダラ」


「はい。情報を共有いたしましょう」


 ゼファーから降りて、ガンダラとジャンとギムリと顔を突きつけ合ってミーティングだ。地上での戦いの結果を、ガンダラは喜んでいた。


「懸念が一つ減りましたな。南のエルフたちが、無事に逃げ延びてくれるのであれば、その後も動きやすくなります」


「その後、か。新しい情報が、入っているのか?」


「ええ。道が途絶える前にゾロ島のキケから。敵の動きを察知したそうです」


「どこに出やがった?」


「わずかな部隊ですが、『オルテガ』があった場所の北東に、敵が集まりつつある……『オルテガ』を早いところ、地上に戻しておかなければ、この部隊が『ルファード』に敵が向かうかもしれません」


「……長老たちも、『ルファード』に避難する……グズグズしていると、敵が、集まるわけね」


「言い換えれば、すみやかに『オルテガ』を地上に戻せたならば、敵の合流も起きない。南への強行軍のあとに『ルファード』まで帝国兵の残党が追いかけてくるだけならば、『ルファード』の戦力だけで圧倒できる。『オルテガ』でも敵を迎え撃てれば、大軍を成す前に各個撃破も狙えます。そこまでの色気を出さなくとも、追い払えれば御の字ですがね」




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