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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二十六


 槍を抜いたルチアに、戦士たちが反応する。


 もちろん、牽制するに決まっているぜ。


 ミアの放った弾丸が、戦士の一人の踏み込みを邪魔し……。


 夜空に飛んだレイチェルの『諸刃の戦輪』が、戦士の槍を断って壊す。


 アーレスもやる気になっていた。乙女を守るために暴れるときは、いつだって、たぎった熱気が刃に宿るものだ!!


「おらああああああああああああああああああッッッ!!!」


「ぐふうう!?」


 一人目の槍を打って壊し、二人目の槍は技巧で躱した。ドワーフ・スピンの技巧だよ。鋭い突きであったとしても、オレの影にしか触れることは許さない。回転しながらの斬撃で、槍を断つ。


「おのれ!?」


「や、矢を撃て……ッ!!」


『そっちが、うつなら……こっちは、もやしちゃうぞ!!』


 大きく口を開き、金色の焔の煌めきを見せつける。アーレスみたいに、ニヤリと笑いながらな。ゼファーの言葉に、エルフの戦士たちの動きは止まったよ。不利を悟ったからだろう。元々、オレたちを招き入れた時点で、武力衝突の結果は見えていたはずだ。


 それでも。


 戦士たちには義務がある。死ぬことになったとしても、長老たちの命令に殉じて戦う。それを、こいつらは望んでいるのかはしらないが……少なくとも、選んではいた。


「……ッ!!」


「義務を……果たすぞ!!」


 覚悟を振り絞りながら、その身に力を込めていく―――だが、ルチアはリーダーシップを発揮してくれた。戦士たちの命も、彼女が救いたい命に含まれている。


「動くな!!長老を、死なせたくはないでしょう?」


 槍の穂先が老いた首にあてがわれていた。未熟さなどない大人びた冷静さで、ルチアはキーヴィーの祖父を人質に取っている。


 戦士たちは、止まった。


 他の長老たちを頼るように視線を向かわせるが、彼らの顔も苦悩に歪んでいるのだ。


「……この、状況では……っ」


「あきらめて。『聖餐』なんて、実行させたりしないから。呪術をぶっ壊せば、戦略を変えるしかないもの。撤退させて、全員の命を救う。故郷を、一時的に帝国兵が踏みにじろうとも……『オルテガ』と『ルファード』から戻って来た戦士たちと共に、奪い返せばいい」


「……簡単に、言ってくれる」


「簡単?……そんなはずないでしょう。私だって、こんな方法が最善だと信じてはいないんだ。でも、今は、これしかない。この選択が、罪だと言うのなら、あとからいくらでも罰してくれたらいい。罪は、背負うわよ」


「……ルチア・クローナー」


「いくらでも、私を悪人にしてくれて構わない。けれど、『聖餐』は中止してもらう。それに、同意できないのなら、非生産的だけど……もっと痛い目に遭ってもらうことになるわ。ストラウス卿、協力してもらえるわよね?」


「もちろん」


 クールなリーダーシップは、好きだよ。戦場は、シンプルな空間だ。力尽くという形で説得するというのも、明瞭さがある。


「……くそ……ッ」


「長老たちよ……っ。このまま、あの女に従うのか!?」


「命を捧げる覚悟は、出来て居るんだぞ!!」


『ぜんいん、やかれたいの?』


 ゼファーは目を細める。脅すための演技であるが、十分な迫力があった。戦士たちは、この状況に納得することは難しいかもしれないが……これで、オレたちは―――!?


 『呪いの赤い糸』が、動きやがった。


 岩山の一部が、ぐらりと揺れやがる……揺れた影は、そのまま立ち上がった。それなりに大きいが、それでも、『ルファード』に寄越してくれた個体より、小さい。


「……『ゴーレム』……っ。しかも、新しいヤツね!!」


「馬鹿な!?ま、まだ早い!!『聖餐』の力を、注いではいない……!?」


「ハハハハ!!」


 男の声が響く。


 『ゴーレム』の肩には、一人の男が乗っていた。少しばかり見覚えがある。


「キーヴィー!!」


 ルチアのライバルだった男で、半殺しにされ、故郷に送り返された男だ。包帯だらけの顔の下で、大きく口を広げて笑っていやがる。


 ……いかんな。


 戦士たちだけなら、手加減しながら制圧することもやれたが。無軌道なバカが、ヤケクソになって、この状況を引っかき回してくるのなら、ムダに死人が出てしまうかもしれなくなる。


 戦士たちは、期待し始めていた。乱戦となれば、こちらに一泡吹かせられるかもしれない、などという間違った認識に心を焦がしている。


 そんなことは、ありえないのだがね……。


 誇り高いということは、盲目的なときもあった。


 『ゴーレム』が動き、こちらに近づいて来る。ルチアは、ヤツの祖父を盾にした。


「こっちに来るな、キーヴィー!!お前の祖父を、死なせたくはないはずだ!!」


「おいおい。ルチア・クローナー。誤解してんじゃねえよ」


「……誤解?」


「オレが、どちらの味方なのか……ってことだ」


「え……」


「キーヴィー、ま、まさか。お前まで!?」


 ……渡りに船という言葉もある。エルフの古い秩序から抜け出したかった男は、今このときも変わっていなかったようだな。戦士たちが、力なくうなだれる。


「……若いヤツらの、考えは、分からない……ッ」


「どいつもこいつも、どうして、我らの伝統をっ!!」


「ふん!……そういうのが、うぜえから。オレも、兄貴も……ここから出たんだろうが。戻って来ちまったし……一瞬、くだらん罪悪感のせいで、『罰』を受け入れちまったが。そんなのは、オレのしたいことじゃねえんだわ、じっちゃん」




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