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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二十一


 『不滅の薔薇の世界』の果てから飛び降りる……。


 以前のそれとは、かなり風が違っていたな……。


 風の通り道を探すまでもなく、大きくて素直な流れだ。それに従う形で降下していく。夜空は『オルテガ』の地面よりも『下』にまでつながっていたな。風の勢いで分かってはいたが、ここを地下と呼ぶべきかまでは自信が持てん。


 不思議な空間だ。


 『ギルガレア』の権能は、未知なところが多い。それならば、確かめればいいだけのことだ。下へと向かうと……闇の果てに、不意に森が現れた。


 世界が、瞬時に広がってもいく。


 風のにおいが大きく変わり、聴覚で感じ取れていた『不滅の薔薇の世界』の大きさからも変わるのだ。つまり……ここは。


「『外』の世界に、出たようだな!!」


 ゼファーは羽ばたきを使い、落下の速度を制御する。


「さてと、『ここ』は何処だろうな?」


 周囲を見回すと森ばかり。


「『オルテガ』が本来あった場所からは、大きく離れているようだ。中海も見えない」


「『不滅の薔薇の世界』は、南東に移動していました。つまり……」


「ここ、私たちの土地ね。上空は、もやもやして空が見えないけど……遠くの星は戻っている。『不滅の薔薇の世界』って……空を飛んでいたってこと?地上は、つながっていたのに?」


「不思議だね!」


『ふしぎだね!』


「とにかく。『外』への出口がまた一つか……」


「『ギルガレア』さまの、『縄張り』だったから、『不滅の薔薇の世界』はここを目指したということ?」


「決着をつけたかったらしいからな。力の奪い合いをしている。しかし、『ギルガレア』め。『不滅の薔薇の世界』と、オレたちの世界の境界は、不明瞭になっているようだぞ」


「そうすることで、望みが叶うのかもしれません」


「どういうことなの、レイチェル・ミルラ?」


「彼は、私たちの世界を乱したくも歪めたくもないのです。『オルテガ』を、私たちの世界に帰してくれるつもりかもしれません」


「でも、ここは……本来の場所からは、遠く離れてしまっているけれど?」


「それはゼベダイ・ジスの思惑ゆえでしょう。彼には野心があった。『ギルガレア』を倒して力を奪い取ることと……おそらく、この土地のエルフたちも生贄にすることが目的だったのです」


「あいつらにとっては、『決戦の地』だったのね。『狩る』つもりで、ここまで移動させていた?」


「『ギルガレア』の力を奪い取るためにも大切な場所だったのでしょうし、私の勘が正しければ、ゼベダイ・ジスはここに向けて避難させてもいます」


「避難……『誰』を?」


「……そっか。『赤ちゃん』だ」


「『赤ちゃん』?……さっき、たくさん見ちゃって、暑いのに鳥肌立ったけど?」


「あれじゃないよ。ゼベダイ・ジスの本当の『赤ちゃん』の方だよ。産まれる前に死んじゃった、かわいそうな女の子。その子の遺体をね、ゼベダイ・ジスは取り上げていたの。その子はね……たぶん、あいつらが運んでいる」


 ミアは東を指差した。


 敵がいたよ。こちらに向けて進軍し続ける、帝国兵の部隊がな。ゼベダイ・ジスが率いた遠征隊の『残り』だ。その数は……。


『よんひゃくさんじゅうなな!!』


「四百三十七人か」


「あいつらが、ゼベダイ・ジスの『赤ちゃん』を運んでいるの?」


「私はそうにらみます。確証はありませんが、ゼベダイ・ジスの執着を想えば、埋葬はしなかったのではないでしょうか。小さくて、運びやすくもあります。それに、彼からすれば、『不滅の薔薇の世界』を完成させるための遠征だったのです。死んだ『娘』を同行させているのでは?最初に、真なる『不滅の薔薇の世界』に住まわせるために」


「……ゾッとするわ」


「親の愛って、怖いトコロもあるのですよ。覚えておきなさい。貴方も、いつかは母親になるのですからね」


「と、とにかく。その『赤ちゃん』よりも、私は……率直に、あの敵の軍勢が気になるし、避難という言葉で連想するのは、うちの部族のオトナたちのことね!」


「南の方、かがり火が見えるね」


『ひなんしていないね』


「そうよ。普通の敵でも、四百人以上となれば厳しい。私たち若い戦士たちは『ルファード』軍に参加しているわけだから。戦をやれる人数じゃない。それに、この敵は……」


「強兵だ。しかも、虫けらに取りつかれているかもしれん」


「絶対に、戦ってはいけない相手よ。それなのに、逃げ出していないなんて……!!」


「忠告をしに行ってやるか」


「時間を取らせるけれど、大丈夫?」


「聞きたいこともあるからな」


「そう、ね。長老たちなら、導いてくれるかもしれない。『ギルガレア』さまの遺された知識を、知っていて隠しているかもしれないから」


「行ってみましょう」


『てきは?』


「しばらく放置だ。あいつらも強行軍をしてはいるが、まだ南のエルフたちの村まで距離はあるからな」


「じゃあ、行こう!ルチアたちの故郷にね!!」


「……こんなとんでもない状況じゃなければ、歓迎してあげられたのにね」


「全部が終わったら、ゴハンをおごってもらうの!」


「ええ。約束よ。猟兵さんたちに、美味しいエルフ料理をプレゼントする」




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