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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その十六


 土煙の上がる街を、竜太刀を肩に担いで歩いた。ゼファーに叫びながらね。


「ゼファー!!『ギルガレア』を回収してやれ!!」


『らじゃー!!』


「こちらです、『ギルガレア』さま!!」


『……ふん』


 強い攻めの反動だけで、あの神さまは空高くへと弾かれていたからな。『火烏』も失ってしまったようだから、ゼファーに回収してもらうべきじゃある。


 ……いくら神さまだったとしても、体力も使うだろうからな。『ゼルアガ』は人外の力を有してはいるが、決して無敵でもなければ、不死でもない。


 『攻撃』に対して、オレたちは力を使い過ぎている。大きなダメージを与えていたとしても、敵に向かって単独で攻めさせたくはないのだよ。


 それをしたがりそうだからな。


 砕けた城塞の一部に飛び上がり、敵をにらむ。ゼベダイ・ジスを見つけたよ。その身は黒く焦げてしまっていた。割れて裂かれた巨大なツタの集合体も、その断端が虫けらの本性を現している。


 揺れながら煙となり、消え去っていくのだ。


「さすがに、あれだけ攻め込まれたら、もはや限界ということか」


「リングマスター、油断はしないように」


「いつでも、追加で攻められるようにしておこうね!」


「ああ」


 この会話も、半分ぐらいは罠だったりする。ゼベダイ・ジスが戦術を実行する体力を保っているのであれば、会話に反応してくれるんじゃないかと期待してだ。おしゃべりしながら、ゆっくりと近づくことで、こちらの呼吸を整えるためでもあるが……。


 敵は、動くことはない。


 それどころか、その巨体の消滅を加速しているように見えるほどだ。もちろん、レイチェルの指摘の通り、油断はしない。有能な戦術家は、己の身すらも犠牲にして、作戦の目標を達成しようとすることだってあるからね。


 壊れた城塞を伝うようにして歩く。猟兵三人と、上空を旋回するゼファーで連携を組みながら。煙と灰へと朽ち果てていく巨大な敵の姿を踏みつけて進み、血を吐いたゼベダイ・ジスと出会う。


 その体には、もはや生気はない。


 虫けらなんぞに寄生されていない『まともなヒト』であれば、戦う意志を一瞬で消してしまっていただろう。


「不幸なことだぜ。戦士として、末期の語らいをしてやることも難しそうだとはな」


 死の直前の戦士と言葉を交わすのは好きなことだよ。鋼で語らうのとは、また別の素直さがあるのだから。


 強い戦士は好きだ。ヒトは努力なしに、その高みへと至ることはない。固有の人生を経て、無数の努力を捧げて、ようやく強くなれる。


 そんな戦士の語りを聞くことは、有能な戦士が歌へと還るという文化で生まれ育ったオレにとって、楽しくないはずがなかった。


 竜太刀を向ける。


 にらみつけてくる力を失った視線に、鋼で応じるのだ。油断してやれるほど、ゼベダイ・ジスは弱くないのが残念ではあるが……この長い戦いを終わらせなくてはならん。


 加速する。


 ミアとレイチェルのフォローを感じつつ、竜太刀を振り上げ、踏み込み―――『牙』の並んだ竜太刀の斬撃をゼベダイ・ジスの腹へと叩き込んだ。


『ぐふうう!?』


「……腰の裏には、お約束通り、虫けらの中枢があるんだろ。そこにまで達したぞ」


 破滅が早まる。ゼベダイ・ジスの体ではなく、その末端であるツタから崩れていくのだ。『中心』となっているらしい。この巨大な敵の『中心』として、ゼベダイ・ジスの肉体は最後の最後まで守られようとするのかもしれん。


 ツタや薔薇を構成している無数の虫けらが、『中心』へと集中しているのかもな。ゼベダイ・ジスを存続させようと、虫けらどもの中から元気な個体が選ばれて、そいつらが常にゼベダイ・ジスの肉として臓腑として、交換されていくような形なのかもしれない。


 体が脈打ち、歪んでいるんだよ。


 苦痛を伴うように見えた。滅びの運命から、『部品』を交換し続けることで、無理やりな延命を施される。それは、耐えがたい地獄のような苦しみなんじゃないだろうか?


 同情はしない。


 そんな余裕も、そんな権利もない。こいつは、自分の『正義』を貫いた男だ。強い敵には、同情など相応しくないのだ。


 竜太刀に『炎』を呼ぶ。


 無慈悲な破壊で、ゼベダイ・ジスを構成する無数の虫けらどもを焼き払いにかかる。これで完全に滅ぼせるはずだ。そのはずだが……男は、『炎』をまとった竜太刀を抱き締めて来やがった。


 アーレスが、喜んでいやがるよ。その剛毅な態度を、気に入っているんだ。オレもかもしれん。あきらめの悪さは、戦士の得難い強さの一つだ。


『はあ、はあ!はあ、はあ!!』


「ゼベダイ・ジス、リングマスターの裁きを受け入れなさい。愛する妻の待つ、本当の終わりへと向かうのです。さみしくなんて、ないでしょう?」


『いいや。ま、まだ。まだ……ッ。したくは、なかったが……まだ、手段があるッ!!』


「……っ?……風が、揺れた?」


 ミアが空を見上げてくれる。オレは、ゼベダイ・ジスをにらみつけたまま、魔眼でゼファーの視線と同僚した。空に、異変はあった。


『おちて、くる!!』


「大変!!空が、空に咲いてる花畑が、『オルテガ』に向けて、落ちてる!!」


「……ゼベダイ・ジス!!帝国の民間人も、帝国兵もいる!!妊婦も、いるんだぞ!!」


『……そう。そうだ。したくはなかったが……ッ。それでも、この手段を選ぶ!!恨めしいぞ、ソルジェ・ストラウスよ!!こんな選択を、私にさせるとは……ッ!!』


「あきらめなさい。そんなことをしても、失われた命は喜ばない」


『だとしても、私に選択の余地はない。最悪の手段であったとしても……悲劇を増やそうとも……無欠の幸福のためだ……完全な世界を、創る……ッ。この街にいる全ての命で、聖餐を成すのだ!!街ごと、潰れろ!!』




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