第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その十五
爆裂の連鎖が空一杯に広がった。魔術では無理な連射だな。こんな魔力の使い方をすれば、人類最強の魔力の持ち主の一人であるリエルでさえも数秒でぶっ倒れてしまうだろう。さすがは、『ゼルアガ』と言ったところか。権能として、炎を使いこなす。
羨ましくなる力ではあるよ。
戦士は、どうしても強さに憧れを抱いてしまうものだ。
『おのれ!おのれ、『ギルガレア』あああああ!!』
オレたちの連携の挙句に『ゼルアガ』の力で襲われているともなれば、追い詰められるのは当然だ。ゼベダイ・ジスがいくら巨大な植物と一体化したところで、この『火球』の速射に耐えることは難しい。
またたく間に、巨大な薔薇の怪物は炎に包まれていく。ツタから生えた薔薇どもが、それぞれの声で悲鳴を上げるものの、『ギルガレア』は容赦も手加減もする気はないようだ。
『この世界を、歪め過ぎてしまっている!!これ以上は、我の力を悪用させはしない!!』
『お前が、悪と断じるか!!罪だと決めつけるか!!私たちの、切実なる願いを!!』
『そうだ!!世界を、正す!!』
気合いが込められ、『ギルガレア』が飛んだ。己が放った『火球』の群れを追い越しそうな勢いで、巨敵へと迫ると、ゼベダイ・ジスの肉体目掛けて強烈な蹴りを叩き込む!
『はああああああああああ!!』
『ぬ、ぐううううう!?』
ゼベダイ・ジスは、よく反応した。焼かれて撃たれながらも、左右の腕を動かして十字の守りを作っている。『ギルガレア』の動きは、やはり直線的過ぎるところがあるからな。武術の達人であれば、その着弾点を読解することもやれるのだよ。
たとえ、『火球』の弾幕に身を隠していたとしても。『ギルガレア』という神さまは、正面から敵へと挑むことを好み過ぎる。
とはいえ。防いだところで威力の全てが受け止め切れるわけでもない。
バキイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!
ゼベダイ・ジスの交差していた左右の腕が破滅的な音を立てて、へし折れてしまう。というか……。
『……力では、勝てんか……ッ』
『このまま、頭も潰してやろう―――!?』
折られるのも想定内だったらしい。ゼベダイ・ジスの体から、無数のツタが生えて来やがる。それらが『ギルガレア』を狙うが、こちらも好きにはさせんよ。
「『風』よ、いっけええええ!!」
「合わせます!!」
ミアが『風』を放ち、レイチェルが『諸刃の戦輪』を投げつけた。『ギルガレア』を狙う枝を真空の刃が断ち、呪いの鋼の軌跡が裂く!
「『ギルガレア』さま!」
ルチアもゼファーの背から矢を放っていた。ツタを打ち払う強さを込めた矢だったよ。おかげで、『ギルガレア』は枝に絡め取られることはないまま、ゼベダイ・ジスに蹴りを入れて宙へと逃げられた。
乗り物にしていた巨大な『火烏』に回収のために飛来して、未練がましく伸びて来る刺々しいツタから離れていく。
『逃げるなああああ!!』
「足もとに、オレがいることを忘れるんじゃないぞ!!」
『く!?』
無視されるのは嫌いでね。戦場で最も注目を集めてこその『最強』だ!!
牙を剥いたまま、竜太刀の斬撃と一つとなる!!
裂け目を残したままの巨大なツタの『根元』を、ギチギチと鳴く牙の斬撃が駆け抜けた!!
完全な断裂が、このとき完成したよ。
『このサイズを、斬ったと、言うのか!?』
「そうだ!!」
物理法則がゼベダイ・ジスと一体化した薔薇とツタの集合体を捕らえ、大きくぐらつかせる。『ギルガレア』は、それに反応してくれた。チームワークだよ。
『行け!!『火烏』よ!!』
『カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』
爆発するような加速を、燃える大烏が実行する。
夜空に大きく燃える翼が広がって、弾丸の速さとなった『火烏』ごと『ギルガレア』が突撃していく。
正面突破が、好き過ぎるぜ。その自信と、ガンコさを、戦士は嫌いになれないものだ。
衝突の瞬間。
『火烏』はゼファーの『火球』並みの爆炎へと変化していた。爆風と衝突の威力に圧されて、足場と切り離された敵の巨体が宙へと舞う。
『う、うおおおおおおおおおおお!?』
強気な『ギルガレア』は、更に攻めていたよ。自らの眷属である『火烏』の爆炎では、この神さまが傷つくことはないようだ。爆炎をものともせずに跳躍し、落下し始めていた敵へと追いついた。
『滅びるがいいッッッ!!!』
断罪の剛腕だ。重力に囚われて落下し始めた巨敵の中枢に……ゼベダイ・ジスの胸へと右の拳が命中していた。
ゼベダイ・ジスの体を赤熱する力が貫いて、その背中と融合しているツタも薔薇をも、爆裂が壊していく。
巨大過ぎる敵の体ではあったが、それをも四散させてしまったか。とんでもない威力だよ。
地上目掛けて、いくつかの巨大なカタマリへと裂かれた巨体が落下していく。迷宮都市の複雑に入り組んだ街路に叩きつけられて、破壊の振動と土煙が『オルテガ』に湧き立った。
あれだけの巨大さが持つ重量と、巨体ゆえの高所からの落下に、爆発と『ギルガレア』の剛腕の威力の合わせ技だ。それだけでも、圧倒的な破壊となったはずだぞ。大きな手応えを感じていた。
猟兵と神さまが連携を成せば、これだけの攻めも作れるということだよ。




