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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その十一


 ……ああ。これは、いけないな。


 『ギルガレア』という『ゼルアガ』は、人々の願いを聞いてしまう種類の神さまだった。ゼベダイ・ジスの言葉が、届いてしまうかもしれん。


「聞くなよ、『ギルガレア』!!こいつは、敵だ!!」


 そう叫びながらも、殺すために動こうとして―――『ギルガレア』の拳がオレのアタマを打とうとしてきやがる!!


 受け止めることは、さすがに無謀が過ぎるからな。全力を出して、逃げるように避けるほかになかった。


 横跳びで、その速過ぎる拳から全力で遠ざかる。ギリギリだったが、どうにかアタマは無事だよ。


「おっちゃん!!」


「リングマスターに手を上げるのは、大きな間違いですわ」


 そう。間違いだったが……こいつは頑固者らしい。


 殺意めいた殺気で、オレたちを威嚇しながら、穴の底を見つめやがる。


「聞くんじゃない!お前は、祈りや願いを捧げられることに、弱い」


『……ゼベダイ・ジスとやら。我に、知らせたい願いとは何だ?』


「無視かよ……ッ」


 さよなら、チームワーク。オレたちの関係性の弱さを嘆くべきか、あるいは、神さまの耳に届く声を使えたゼベダイ・ジスを褒めるべきか……。


 どちらにせよ、良くない傾向だった。


 この二人の会話を止めたいというのに……。


「お兄ちゃん!ツタが!!」


「私たちと、『ギルガレア』の連携を断つ気ですわね!」


「……くそが!!」


 壁と天井、それに床からも!刺々しいツタどもが、どこからでも生えて来やがる!容赦なく襲い掛かるそれらを、かわして、斬って、裂いて……ゼベダイ・ジスの戦術にハマっていく。露骨なまでの時間稼ぎをされているのだが、なかなかに密度のある攻めだ。


 『ギルガレア』の護衛をやれちゃいない。


『私たちは、多くの嘆きを聞き届けてきた。『蟲の教団』は、迫害された』


『邪教であるゆえのこと』


『かもしれない。多くの聖餐を行った。そもそも、お前を……オリジナルである『ギルガレア』をないがしろにした。意に反した『使われ方』だったのだろう』


『罪深い行いだぞ』


『行いとは、過程でしかないものだ。目的は、何だったと思う?』


『連中は、己たちだけの世界を欲した』


『それも、過程でしかない。彼らが、欲しかったのは……本当の意味で、満ち足りた世界だ。多くの者が、苦しんでいるのを知っているだろう?神ならば、聞こえるはずだ。少なくとも、お前の半身は、応えてくれている。私にも、少なからず入っているのだからな』


『呪術で惑わし、かすめ取っただけのこと―――』


『―――違うな。そんな、見え見えの嘘などつくべきではない。私たちは、もともとは一つだ。お前が、本当に、『蟲の教団』の全てを否定しているのであれば、彼らと接触することもなかっただろう。お前の本質は、彼らの祈りに呼応している。彼らの、欲した目的に』


「おい!聞くな!!敵の言葉を、聞くな!!そいつは、策士なんだぞ!!」


 ……無視される。


 分かっちゃいたがな。こいつは、頑固者だと!!……それに、困ったことに、たぶん、ゼベダイ・ジスは真実を述べていやがるんだ!!


 ツタの対応を強いられる。そのせいで、こいつらは二人だけの世界にいた。邪魔してやりたいが、それも難しいと来ている。ツタどもめ!薔薇め!邪魔が過ぎるぞ!!


『彼らは、皆が『孤独』だった』


『……っ』


 ああ。いかん。『ギルガレア』の心に、それは刺さっている。真の意味で、孤独を愛せるようなヤツじゃない。こいつの『ゼルアガ』としての性質なのかもしれないが、他者を必要としている。


 『ルファード』で証明済みだ。オレたちを見捨てようとはしない。


 戦場で、多くの苦しみから心がすり減って、本当に壊れてしまった者は職業倫理を捨てちまう。どんな悪行も、非道も、厭わなくなる。この神さまは、そうじゃない。神さまらしく、ヒトを助けようとしてしまう。孤独が嫌いな……良いヤツだ。


『戦争で、病で、貧しさで、飢えで……多くの者たちが、『孤独』を味わった。私とエスリンの場合は、運命か。彼女は、母になるべき慈愛の女性だったのに、運命に裏切られて、命も生まれて来るはずだった『娘』も奪われた!!』


 ……戦いながらも、心に刺さり、頭に響いた。ゼベダイ・ジスと、エスリン・リヒトホーフェンの運命に同情したくなっているからだけじゃない。どうして、生まれる前に死んだはずの子供の性別を、知っているんだろうな。


 嫌な。


 予感がしている。


 猟兵が戦場で感じる、こういう嫌な予感は、およそ当たるから困ったものだ。


 ゼベダイ・ジスか、エールマン・リヒトホーフェンか、それともリヒトホーフェンが雇った双子の『ゴルゴホ』どもか……あるいは、こいつらのコネがあれば、いくらでも用意できそうな医学的知識を持っている者か……。


「死んだ、エスリン・リヒトホーフェンの腹から!!子供を、取り出していたのか!?」


『そうだよ!!死んだ娘を、私は手にした!!とても、小さくて、産まれても生きてはいけなかったサイズだった!!あまりにも小さく、あまりにも弱く!!あまりにも、不完全で!!それでも、狂った奇跡を信じて、祈りながら……ッ。私は、『孤独』を再確認しただけだった!!』




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