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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その七


「それで。ゼベダイ・ジスの拠点を、どこだと考えているんだ?」


「……見張りの位置は、高い場所がいいのがセオリーです」


「たしかにな」


「大尉は、以前の大尉ならば、民間人を巻き込むような戦術は採用しなかったでしょう。彼は高潔な軍人だったのですから」


「かつてのハナシになる。今は、大量虐殺の最中にあるぞ」


「……それでも、大尉は、あくまでも帝国軍人であろうとしていると思います。彼の血や魂にまで、その傾向は刻み付けられているのですから……」


「軍事施設ではなく、民間の施設を巻き込むのであれば……帝国商人の屋敷は、除外すべきだと言いたいのかな?」


「その通りです」


 ……悪意と混沌が支配する戦場にも、いくつかのルールはあった。民間人を可能な限り巻き込まないというのは、基本的なルールではある。その傾向を、あくまでも守るということか……。


「短い返事は、確信を持てているということの証。そう認識しても良いのだろうかね?」


「もちろんです。大尉が、民間施設を利用しようとすれば、帝国商人が所有している施設は除外して選ぶはずですよ」


「情が深い男だと?」


「情も深いと思いますが、帝国軍人であることを、大尉自身は望んでいるはずだからです。間違いは、ないと思いますよ」


「虫けらに心身を奪い取られたとしても、か」


「はい」


「信じてやるとしよう。そういった行動方針をゼベダイ・ジスが採るとすれば、どこを拠点に選び取ろうとするだろうか?君の考えを、率直に伝えてくれるかい?」


「了解です、ソルジェ・ストラウス」


 瞬間的な敬礼をしてくれた。すぐに、どこか気まずそうな顔になって終わってしまったがね。それでも、言葉が止まることはないのだ。


「『オルテガ』市民の、商工会……そこの会長の屋敷が、街の東にあります。高さは十分で、十分に見渡しが利く……かなりの広範囲を」


「今、ここからでも見えるだろうか?」


 うなずいた。


 若い父親の指が、ツタの柱に打ちぬかれ、薔薇の天井に閉ざされた迷宮都市の一角を指差してくれる。


 オレたちの全員が、その指が示す場所を追いかけていた。


「赤い屋根のあれかな?」


「あの屋敷、ツタが周囲に生えてはいませんわね」


「十分な視認性が確保されている。『オルテガ』の広い範囲を探ることに、向いているように見えるな」


「怪しいってことね?」


「ああ。まさに、あそこであるかもしれん」


「か、確信があるとまでは、言えません。ですが、ああいった場所を、大尉は選ぶはず。大尉は、戦場の視界を好みます。雑な戦いをするような人物では、ないのです」


「情報提供に、感謝するぞ。見返りは、しっかりと渡す」


「頼みます……妻と子だけは……守りたいんだ」


「守ってやれる。このソルジェ・ストラウスと、『風の旅団』の誇りにかけて。この『オルテガ』から、ちゃんと脱出させてやるよ」


「ありがとう……」


 その『家族』を、戦士たちが護衛してくれる。周囲に取りついたまま、ゆっくりと移動を開始した。街の西から脱出すれば、命は助かるはずだ。


『……情報を得たな。お前の、敵であった者の口から』


「敵の敵がいる。戦場に混沌を持ち込むべきではなかったのに、ゼベダイ・ジスやエールマン・リヒトホーフェンが鉄則を破った。この混沌のなかでは、あの若い父親を責めることは誰にも出来ないだろう」


 明瞭さは、戦場においても有効なことだ。敵か味方かは、ハッキリとしておかなければならない。兵士が情報提供しなくてはならない状況に陥らせたのは、どう考えても指揮官の失敗に起因している。


 ……あの『家族』から視線を外し、赤い屋根をにらんだ。魔眼でも、敵の気配を探り当てられない。かなりの距離があるし、虫けらの力で気配を消しているかもしれん。


 それに、時間を与えすぎてもいた。


「隠遁薬だろうが何だろうが、持てる装備を準備するには、十分な猶予をゼベダイ・ジスに与えてしまっているか……」


『なればこそ、だな』


「単独行動はダメだよ、『ギルガレア』のおっちゃん」


『……ふん』


「ゼファー、頼むぜ」


『うん!みんな、ぼくのせなかに、のってね!!』


 好戦的な笑みをゼファーは浮かべてくれる。『ドージェ』もさ。敵を追い詰めることは、大好きだよ。


 おそらく、ルチア・クローナーもな。


「ルチア、君も来てくれるか?」


「ええ。うちの戦士たちも、成長している。『ギルガレア』さまを見て、今まで以上に落ちつけたというか、気合いが入っているから。任せても大丈夫のはず。みんな!私は、ストラウス卿たちと、『ギルガレア』さまと一緒に、敵の親玉を討ち取りに行く!」


「了解だぜ、ルチア!」


「『風の旅団』の強さを、『ギルガレア』さまに教えてやってください、リーダー!」


「ええ!」


 迷いなく返事をする。それがやれることは、本物のリーダーの器を持っている証だ。


 若い戦士たちを成長させられている。そういう自覚を得られるぜ。必要だからな。より多くの戦士と、オレたちはつながらなければならない。


 『群れ』を大きくするのだ。


 そうなれば、より多くの勝利を勝ち取れるようになるのだからな。




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