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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八


 ゼファーが羽ばたき、空へと戻る。


 上空から降る花びらの数は増えて、空を覆う薔薇は広がっている。よりせま苦しくなっているように思えるぜ。


「空が、下りて来ているわ。それに、夏なのに冷えている」


「そうだな」


「焦っていないんだ?」


「焦っても、戦術的なアドバンテージにはならないからな」


「そう、よね。経験値の違いってヤツかしら?」


「君の成長も著しいよ」


「どうかしら。神さまと一緒にいるのに、平然としているような猟兵さんたちと比べると、どうにも未熟に思えちゃうんだけれど」


「未熟を理解していることは、強さの種を見つけたということですわね。克服して、より強くなるための課題が見えて良いことです」


「レイチェル・ミルラらしいわ……そうね。落ち着こう。力を見せるために、ここにいるのだから」


「うん。準備しよう。ルチアは、ゼファーと一緒に射撃チームだよ」


「役割分担として、正しいわね。上空からの援護は、任せて」


『ぼくも、いるからね!』


「ああ。外に引きずり出せるのであれば、そうしよう。ヤツは、逃れようとするかもしれないが、地上に姿を現すのならば、叩きのめせ!」


『らじゃー!』


「『ギルガレア』のおっちゃんは、どうする?」


 火烏に乗った『ギルガレア』は、腕を組んだままうなずきもしなかった。それでも、口を開く。


『……中に入る。我が直々に、決着をつけたい。それに、我がいるのであれば……ヤツも逃亡しにくくなる』


「お互い、決着をつけたいと願うか」


『当たり前だろう。焦がれるものがある』


「当たり前か」


『お前には、分からないだろうがな』


「さすがに、自分の体が半分になった経験なんて、一度もないんでね。想像力が及びにくい範囲じゃある。だが、話してくれるのならば、知れたぞ」


『……ふん』


「文句を言わないのは、偉いぜ」


「……ふ、ふう。さすがに、神さま相手に、態度が大きすぎないかしら?」


「オレの信仰している神さまじゃないんでね」


「だとしても……まあ、貴方たちらしいかもしれないわ。『パンジャール猟兵団』は、規格外なのね」


「ククク!そういうことだよ。さてと……ゼファー!!」


『うん!!かそく、するねー!!』


 羽ばたきを重ねて、速度を上げていく。そのまま、くだんの赤い屋根へと迫ると……猟兵三人が宙へと舞った!!


 赤い屋根へと着地を果たす。そのまま、右へと駆けて、屋根を飛び降りたよ。


 地上に向けてじゃない。南向きに突き出たベランダにだ。


 盗賊のように侵入の技巧を使う。広さのあるベランダとつながったドアを蹴破り、室内へと侵入した。竜太刀ではなく、ナイフを構えながら室内に飛び込んでいく。鎧を身に着けた者の義務というものがあるのだよ。


 最前線は、誇り高くいられる気持ちのいい場所だ。


 ミアとレイチェルが、音と気配を消したまま、オレの背後についてくれる。頼りになる陣形を組めた。


 外界と隔絶されたせいなのか、冷えつつある夜の空気が満ちたその部屋は、本棚と執務机とベッドがある。『オルテガ』商人たちの長の私室だったのかもしれない。壁に貼られた地図には、商業用の道が赤い文字で描き込まれていた。


 ……敵の気配はない。


 『隠遁薬』を使われたら、気づくこともやれないがね……だから。ナイフによる構えを解いて、誘ってもみる。


 あえて油断を演じて、背後に振り返りもしたのだが……冷え始めた空気は、動くことはなかったよ。


 ただし、『ギルガレア』の気配は濃密だった。


 ドゴオオオオオオオオオオオオン!!


 屋根を貫き、神さまがやって来た。


「おっちゃん、派手だね」


「ここは罪なき民間人の屋敷だぞ。手加減してやるといい」


『……『オルテガ』は、邪教の拠点であった。手加減などしてやる必要もない』


「これも罰のつもりか?」


『そうだ』


 『ギルガレア』はその黒い手を床に押し付けた。舌打ちしながら、後ろに跳ぶハメとなっていたよ。罪科の獣は、罰を与えたくて仕方がないらしいな。


 爆発が起きていた。


 罪なき商人の屋敷の床に、『ギルガレア』の巨体が容易く呑み込まれるほどの大穴が開く。そのまま、『ギルガレア』は下の階へと向かったよ。穴に飛び込んだというわけだ。


「連携が出来ちゃいないな!おかげで、こちらが合わせることになる!!」


 文句を言いながらも、行動はしているぜ。


 床に空いた大穴へと身を投げて、『ギルガレア』の背中を追いかけた。


 穴を降りながら、理解しつつある。


 ……この神さまは、どうやら焦っていた。時間がないから?それとも、半身との決着を求めているから?


 どちらなのかは、分からない。


 しかしね、行動というものは多くを語る。こいつは頭を左右に素早く振ると、そのまま、もう一度、床へ向けて手を叩き落とした。


 一つの事実を、見つけられるよな。


「『ギルガレア』!お前、近くに半身がいれば、悟れるんだな!!」


 その事実があるのならば、伝えておいて欲しいものだがね。ヤツは、オレたちとのコミュニケーションを無視して、新たに開けた穴へと身を投じる。


 もちろん。


 即座に追いかけなくてはならない。焦っている者には、援護がいる。罠をデザインして、待ち構えているかもしれない賢い軍人が敵なのだ。こんな厄介な者の相手をするときは、単独で突出しない方がいい。あっさりと、狩られてしまうこともある。




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