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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四


 ……自分の神さまに対しては、ルチア・クローナーも大人しくなる。


 罰を与える罪科の獣には、逆らい難いところもあるのだろうな。


「ルチア、情報共有しよう!」


「あ、ああ。現状は……見ての通り、混沌としているんだ。もはや、戦い合ってはいられないと、帝国兵どもも判断している。自ら投降して来た者も多くいるが……」


 東をにらむ視線には、疲労と悲しみの色が混じっていたな。


「帝国兵のなかには、もう『どうにもならない者』がいるようだ」


「体内の虫けらに、完全に支配されている者も少なくないだろう」


「……どうにか、ならないのかしら?」


「オレには、救えそうにない。その悲惨な状態から解放してやることならば出来るだろう」


「殺すというコト……」


「そうだ。戦士の魂を、虫けらどもに喰い尽くされた心と体から、解き放つのみ。神さまみたいな力は、オレにもないのだ」


 少し。意地悪な言葉を口にしてしまっていたかもしれんな。ルチアは、同情している。帝国兵どもが虫けらなんぞに食い荒らされて、まだ戦わされていることを、憐れんでいるのだ。


 実に、正しい感覚だったよ。


 虫けらどもに、戦士の持つべき尊厳が、食い荒らされている。敵と味方という違いをも越えて、これは悲しんでやるべき悲劇ではあるのだ。


 だから。


 神さまのことを、ルチア・クローナーは見つめた。すがるような目だ。『ギルガレア』は、こういう目を好まないかもしれん。自らの持つ権能を、利用しようとするように感じるのかもな。


 ……神さまに、祈ったことぐらい。誰にでもあるが……誰からも祈られるような立場は、神さましか味わえない。


 困ったことに。この神さまも有限の力しか持ってはないのだ。


『我にも、無理である』


「そ、そう、ですか……」


 この期待と失望に、かつて『蟲の教団』の連中は不満を覚えたのかもな。そして、より『ギルガレア』の力を引き出そうと生贄を捧げていった。自らの神から『半分』を奪い、奪ったそれを強化して、唯一の神として祀り上げていく……。


 ……絶対の力はなくとも、『ゼルアガ』としての権能を持つ本物の神さまだ。多くの信者が、人生を狂わされることもあった。


『……失望したか、娘よ?』


「……いいえ。貴方は、その……戦士だと感じられます。この狂ってしまった状況を、解決するために来られたのなら……それだけで、尊敬に値します」


 いい言葉だ。


 ルチアは、知っている。


「神さまに頼るべき時間じゃない。オレたちには、やれることがある」


「ええ。戦って、勝てばいいのね。こんな、わけの分からない状況でも、戦士たちが共にいてくれるのは、心強いことだ」


「『ギルガレア』、ルチア・クローナーは見事な信者でしょう?貴方に敬意を払いつつも、決して、依存する気はないのです」


『……ああ。それは、望ましい。罰の力になど、頼るべきではない』


「おっちゃんは、ただの戦士として力を貸してくれればいいよ。あ。もちろん、おっちゃんが解決できることがあれば、すぐにでも解決してくれていいけどね」


『……ないな』


「では。私たち南のエルフと共に、がんばりましょう。『ギルガレア』さま」


『……それで、情報は?』


「は、はい!失礼いたしました!……敵は、『寄生虫』に操られている帝国兵どもは、『オルテガ』の東側に集まる傾向があります」


「敵に対しての『逃げ道』として用意していたからな。『ルファード』軍が攻め込むほどに、街のなかに溜まる『内圧』を逃すために」


「機能しているみたいね」


「本来ならば、街から退却させるためだ。デザイン通りというわけじゃない」


「でも、おかげで街の西側をこちらが制したし、避難ルートにもなってくれている」


「それで。敵の動きに、特徴はあったかな?東に集まっているだけじゃなくて?」


「特徴、ね。猟兵さんたちの流儀に則ると、『防御』をしているように見えるわ」


『『ぼうぎょ』……せめては、こないんだ?』


「ええ。積極的に、西側に侵入しようという動きはない。だからこそ、帝国兵の避難も受け入れてあげられている……彼らにも、家族がいるものね。今の『オルテガ』から、何をしても逃したいと考えて」


「捕虜になっても、この『不滅の薔薇の世界』と化した街に留まるよりは、ずっと安全そうだと信じているわけですね」


「実際のところ、今はどれほど危険なのかしら?……空に蔓延る薔薇は増えているし、その奥に見えていた、天空の街並みも、どんどん地上に迫っているように見える」


『……この小世界を、完全な制御下には、おけていない』


「では……どうなるのでしょうか?」


『最悪の場合では、空が落ちて来て、全てが潰れることとなろう』


「……やはり、落ちて来ているのですね」


「最悪の場合ってことが大切だよ、ルチア!」


「そうね。やれることを、しなくちゃ」


『……それで良い。ゼベダイ・ジスとやらだ。その男こそ、倒せれば……』


「ゼベダイ・ジス。帝国軍の指揮官か……見つければ、いいのね?」


『見つけるだけでもいい。我が倒して、この状況を終わらせる』


「……了解しました、『ギルガレア』さま…………ねえ!ストラウス卿。一つ、私に案がある!」


「聞かせてくれ」


「帝国兵からも、情報収集をしましょう。蛇の道は蛇と言うでしょう?帝国兵のことを知っているのは、帝国兵だもの」




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