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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二


 空間を裂く。その感覚は、どんなものだろうか。是非とも体験してみたくもなるが、ヒトの身ではやれんのだろうな。竜でさえ、やれんかもしれん。ゼファーが、うらやむように夜空に広がった『裂け目』を見つめていた。


 くやしいよな。


 『ドージェ』もだ。


 しかし、鉄靴の内側を使う。ウロコをピクリと波打たせて、ゼファーは作戦のために素直さを選んでくれた。


『いこう!』


 漆黒の翼が夜を打ちつけて、加速しながら『裂け目』へと飛び込む。


 そこは、先ほどと同じ未知なる空間であったが、大きく異なることがあった。


「揺れてないね」


「ああ。安定している」


 迷路のように空間の細道がうねっているようなことはない。これならば、ジャンのように目を回すこともないだろう。


 赤いかがやきに縁どられた、空間のトンネル……『オルテガ』が吸い取っている風は真っ直ぐに進み、ゼファーの羽ばたきが起こした風も、普段の空のように遠くまで走る。


 普通とやらから大きく逸脱した不思議な空間を飛んでいるのだが、それでも、普段の空のように安定しているんだよ。


「大した力だな、『ギルガレア』よ!」


『偉そうだな』


「ハハハハ!……神さまよりは、偉くはないかもしれんがね。それでも、実のところ、かなりの大物じゃあるんだよ」


『『どーじぇ』は、すごいんだよ!』


『竜を従えるからか?』


「俗世にはファリス帝国という強国があるのですよ。それらとリングマスターは戦い、多くの勝利を獲ているのです。人間族と亜人種の同盟を率いる、リーダーの一人として」


『人間族と亜人種が、共に在るということは、稀有なはずだ』


「千年前の価値観と、今の価値観は違う」


『そうだろうかな。だが……竜とも心を通わすのなら、ヒト同士と共存することの方が容易いのだろうか……』


「考えることは、善き事ですよ。『ギルガレア』、貴方は、私たちと共闘するのです。互いをもっと知り合う方が、強くなります」


『慣れ合うことは、好まん』


「そういう性格をしていますのね。それを、伝えてくれたことも、交流となります。ありがとう、『ギルガレア』」


『『人魚』は、いつの時代も不思議だ』


「おっちゃん、『人魚』の知り合いがいるんだ?」


『いた、だ。大昔に……エルフたちと共に、『蟲の教団』と戦ってもいたぞ』


「『蟲の教団』は、私の古き同胞たちを苦しめたようですからね」


『多くの種族を、連中は殺めていた。『変異』の研究を成すために、あの邪教どもは様々な種族との『差異』を知ろうと躍起になったのだ』


「ヒトとヒトの、違いを研究すると、『寄生虫』の研究になったの?」


『そうだ。世界を『変異』させる力と、ヒトを『変異』させる力には、共通するところがある……』


「よく話してくれるじゃないか」


『お前たちは、大して知識を求めていないように感じるからな』


「ハハハハ!」


「あははは!」


 ストラウス兄妹は大笑いする。不思議な空間のトンネルのなかに、笑い声がどこまでも響いたよ。図星だからな。研究者たちとは違って、オレたちに『ギルガレア』が大きな知識のヒントを与えてくれたとしても、無価値に終わる。


 理解することも、それを応用して何かを成し遂げることもやれんだろうからな。そもそも、悪用する気も毛頭ない。


『笑うべきことか?』


「オレたちは、この世界を変えたいとは願っているが、そいつは実力でのことだ。人間族と亜人種が、共に生きてもいい『未来』が欲しい。それを創るために、『ゼルアガ』の権能を借りるつもりはないのだ」


「うん!勝ち取るだけだもんね!」


『……それもまた、修羅の道だな』


「ああ。戦って、殺して、奪い取るんだ。罪深いかもしれんが、オレたちの使命だ」


『多くの血が流れる。多くの願いが消える。それもまた、歪んだ教えを生むものだ』


「歪まないように、気をつけるとしよう」


『そうしておけ。お前が大物だというのならば、なおさらだ。多くの者を迷わせることは避けるといい』


「良い支配者を目指す。何か、アドバイスをくれるか?」


『力に溺れるなかれ』


「いい言葉だ」


『ふん』


「ねえねえ。おっちゃん」


『……なんだ?』


「こっちの入り口は動いているけれど……出るときはどこになるの?」


『……『オルテガ』があるべき場所に、出られるだろう』


「あら。そうなのですわね。つながっている入口と出口が、それぞれ別の場所だなんて、不思議です。てっきり、どちらも動いているのかと」


『我は、修正したいのだ。正しい形に、世界を修繕したい』


「そっか!おっちゃんが、そうなるようにしてくれているんだね!いいヒトだ!」


『……我は、邪悪でありたいと願ったことはない。罪に応じて、罰を与える。その仕組みを担っている。最小限の罰をもって、善き世の中を保ちたいと願った者に応えて、この姿とこの力を得たのだ……はるか、大昔に。故郷と呼べる世界から、この世界に渡ったときに』


「やっぱり、違う世界から来るんだね。『ゼルアガ』って。どんなところだろう。行ってみたいかも!」


『……我が故郷の一部には、入った。『ここ』は、我が故郷の一側面でもある』


 トンネルを抜けた。


 知覚が広がるのが分かったからな。外にあるオレたちの世界よりは、せまさがある。『不滅の薔薇の世界』は、『ギルガレア』の故郷に新しく作られた場所らしい。


「故郷に戻るのは、嬉しかろう」


『……代わり果てている思い出を見るのは、辛くもあるのだ』


「ああ。それは、痛いほど同意が出来るぜ。異分子を排除して、取り戻したくなるよな」




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