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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その一


 上空へと浮かんだ。夏の夜空を、薔薇の生えたツタが進んでいる。


「かなりの速度ですわね」


「ああ。馬よりも、速さがあるぞ。動きに、迷いも見えない」


「つまり、あいつらは行くべき場所を把握しているんだね」


「そういうことだ」


 一直線、最短距離で『ギルガレア』の『場』とやらを目指して走っている。


「おい!『ギルガレア』!!協力し合うんだ!!あいつらが目指している場所を、オレたちに教える気はないのか!?」


「情報を共有できれば、こちらとしては、かなり楽に戦えるのですが?」


 燃える大烏に乗っている男は、強い口調と険しい顔で怒鳴り返して来やがった。


『教えられん!!』


「おっちゃんの、ケチ!」


『けち!!』


「彼にとって、とても大切な場所なのでしょうね。おそらく、『不滅の薔薇の世界』と同じく……自らの力や、存在理由の化身のような空間ではないのでしょうか?」


「んー。えーと、『不滅の薔薇の世界』と同じなら、そこにも、『ギルガレア』のおっちゃんが、『分かれて』いるのかな?」


「本体のようなものかもしれません。あるいは、場所を教えるのを嫌がっているところを見るに……『奪われやすい』ものかもしれませんね」


 芸術家の感覚の鋭さは、信頼に値するものだ。たとえ、夜空に響いたレイチェルのつぶやきに『ギルガレア』が無表情と無反応を貫いたとしてもね。


 虫けらに心身を奪われているゼベダイ・ジスの面影に、『不滅の薔薇の世界』は乗っ取られてしまっているように見える。『ギルガレア』は、主体に乏しい『ゼルアガ』なのかもしれないということだ。


 必死に、『場』を遠ざけたいのも……誰かに奪われることを嫌ってだろうか?


「オレたちが、奪うとでも?」


『……ヒトの心は、不完全だ。お前たちの『叶えたい世界』を、我が力は与えられもする』


「偽りでしょうに?」


『小さな世界ではあるが、ヒトが願う幸せ程度ならば、全てを備えているものだ。信じ込めるのであれば、全てがある。疑うのならば、この世界であっても、お前たちは幸せを得られないのだろう。だからこそ、多くの者で信じるための『教え』を作る』


「宗教を、そのように解釈なさっているのですね」


『疑いから解放されたい。真実を得たい。そういう感情が、そういう弱さが、世界に虚構の真実を刻み付けようとするのだ。我には、お前たちヒトの、信仰と呼ばれる行いは、そう見える』


「まあ、正しいコトって、気持ちいいもんね」


『そうだ。快楽。正義。それらも、力を欲し、世界を捻じ曲げようとする動機となる』


「『蟲の教団』と戦い過ぎて、ヒトに対する見方が歪んでしまっているぞ」


『『蟲の教団』を作り出したのも、ヒトの心だ。それの遺産を奪い、自らの死の運命や、産めなかった子のために、あんなモノを生み出したのもヒトの心だ。全ての戦いも、災いも、我の力の半身を、使ってのことだ。我は、認めん!』


「勝手に、力を使われるというのは、屈辱だろうな!」


『そうだ!それを、今から、終わらせに行くのみ!!』


 火烏が、さらに巨大化した。加速する。オレたちを置いて行きたくなったのかもしれないが、ゼファーも負けずと加速した。空で負ける気は、毛頭ない。


『おいこせー!!』


『……これが、竜か。しかし、あの世界に入る方法を、持ってはおるまい?』


「風が、吸い込まれているから。分かるよ。あっちの世界と、こっちの世界は、小さな裂け目で、つながっているもの!」


『我の半身の力が、不完全な証か』


「貴方の『場』は、違うのでしょうか?」


『かつては…………』


 沈黙に徹することに決めたらしい。素直な『ゼルアガ』だよ。レイチェルの鋭い感覚に、情報を分析されるのを嫌った。


 つまりは、レイチェルの指摘のいくつかは正しい。『ギルガレア』は『蟲の教団のギルガレア』に力を奪われ過ぎて、完全な『場』を……世界を書き換えて、自らの望みのままの『完璧な小世界』を創る力を失っているのかもしれないな。


『……知識を求める。力を求める。それは、災いのもとだ』


「そうとも限らんぞ。医学の発達に、『蟲の教団』は間接的に貢献した。世界を変えるのは、そういう行いだ。災いだけとは、限らん」


『良い面だけを、見すぎている。この世界が、おかしな状況になっているというのに』


「正してやるさ」


「そのための協力関係だもんね!」


『ふん……っ』


「ゼファー、あそこだ!風が、吸い込まれている!」


『……うん。『みえた』!』


 『不滅の薔薇の世界』へとつながる、『裂け目』へと向かう。『ギルガレア』も、速度を増した。


『見抜くか。本当に……風など、見えるはずもないものを』


「竜騎士は、特別なんだよ!」


『りゅうも、とくべつなんだよ!』


「ウフフ。我々は、とても頼りになるでしょう、『ギルガレア』」


『……警戒したくなるほどにな。だが、時間は、貴重なものだ!裂け目の道を、うねりながらすり抜けている場合ではあるまい!』


 『ギルガレア』が、虚空に右腕を伸ばした。オレたちの感覚が『裂け目』を感じ取っている場所に、赤いかがやきが生じる。


『はあああああああああああああああああああ!!』


 気合いと、『ゼルアガ』の権能の満ちた声が夜空に響くと、『裂け目』が赤くかがやく力で縁取られたまま『開いていく』。


「おっちゃん、さすが!本家の『ギルガレア』だね!!」


『あそこを、通り抜けろ!!まっすぐにな!!』




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