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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その百三


『おのれええええ!!』


 両腕を失っても、エスリン・リヒトホーフェンの面影は戦い続ける。彼女が口から火炎を吹いた。レイチェルは、側転からの跳躍と、空中で身をひねるという動作を連続させて攻めを躱してみせる。


 『諸刃の戦輪』の呪いは健在でね。回転しながら着地したレイチェルの手に、それらは再び戻る。


『……ッ!!』


「はあああああああああああッ!!」


 加速するレイチェルに一切の容赦はない。銀色の一閃がエスリン・リヒトホーフェンの面影に迫る。面影は、その決着の瞬間……自らの腹を守ろうとした。身を屈めて、迫り来る鋼からそこだけを遠ざけようと動く。


 妊娠したまま、死んだ女性だったからだろうな。知っている。安心するがいい。レイチェルは、そこは狙わん。


『ゼベダイ……』


 切ない揺れを帯びたつぶやきが、あの男の名前を呼んでいたよ。斬撃は、彼女の首の半分を断ち、赤い血が夜空へと勢いよく吹き上がる。


 ……オレも、終わらさなければならない。


 殺しかけの『ギルガレア』に向かって、突撃していた。感情や記憶というものが、色々と浮かび上がる。神という存在に、ヒトは助けを求めてしまうものだよ。どうすることも出来ない現実を、どうにかして欲しいから神への願いが生まれた。


 『蟲の教団』たちは、安らげる場所が欲しかっただけだろう。リヒトホーフェンたちも、愛する者のために運命を変えようとしただけだ。虫けらに身も心も捧げ、それでゆっくりと願いさえも蝕まれていったしまったがね……。


 ……誰が、悪かったのか。


 大昔の邪教である『蟲の教団』だろうか、現在の研究者たちか、世にあまねく不幸のせいか……多くの原因が、重なり合って今が生まれているのだろうよ。


 だがね。


 それらの『器』となった存在は一つだけだ。


 『ギルガレア』……お前がそれだよ。お前は誰かの祈りや願いのために行動しているのかもしれない。『星の魔女アルテマ』と契約した『星』のように、主体性のない『ゼルアガ』なのかもしれないが……。


 存在そのものが、この世界にとっては大きなリスクだ。


 ―――虫けらどもの犠牲にされた魂たちよ、オレの影に宿れ。往古の時より、この悪神を封じようと命を燃やした戦士たちよ、竜太刀を貸すぞ。


 影が。


 集まり動いて、オレと竜太刀と一つに融け合う。


 戦士たちが感じられるよ。『歌』属性の力が、『ギルガレア』を倒せと


 小細工無しの、大上段の構えを選ぼうじゃないか!!


『ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギイイイイイイイイイイッッッ!!!』


 『ギルガレア』が叫びながら迎撃しようと身をひねったが、そんなのは無視していい。空を突くように構えた竜太刀からは、漆黒の刀身が伸びているのだから。塔のように大きく長い、死せる戦士たちの力だ。


『……逃げて……『ギルガレア』…………』


 偽りのエスリン・リヒトホーフェンが願うが、レイチェルの声が諭した。


「死でも、愛は終わりません。いるべき場所に、貴方は戻るべきです」


 選ぶべき正しさというものは、人それぞれだ。


 ストラウスさん家の四男坊と、サーカス団の『人魚』は、ずっと昔に決めている。愛する者のために、復讐者となると。敵を罰するのだと。


 愛する者の命が、永遠に戻らないものだから、これほど痛くて怒りが生まれる。


 偽りを手にしたところで、慰めにはならない。


 セシルは死んだ。レイチェルの夫も死んだのだ。それでもね、愛はまったくもって終わっちゃいない。


 だからこそ、これが正しいことだと信じられるのだ。再現された面影では、足りない。偽りなどを、オレたちの愛は認めん。


 ……いつか正々堂々と、この世を去った者と出会うために。『正義』を信じて戦い抜くのだよ!!


「うおらああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」


 空に歌い、死者の力を引き連れた漆黒の一刀を振り下ろす!!


 ズガシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!


 黒が駆け抜けて、夜を真っ二つにしながら、『ギルガレア』をも一刀両断する!!


 死せる戦士たち力が、邪悪な神を内側から爆破し、大地を深々と裂いて奔った!!


 ヤツの叫びさえも、黒く燃やして焼き尽くしていく。黒い焔が左右に分かれた『ギルガレア』の身を焼き尽くしていくのだ。


 『ギルガレア』は、真っ二つになり焼き尽くされていくが、それでも、もがく。もがこうとして、オレを攻めてくるが―――もはやそれらの動きが猟兵に届くはずもない。


 精彩を欠いたあらゆる動きに、竜太刀によるカウンターが与えられる。斬られ、弾かれ、突かれて、裂かれた。何かをするために、叩き潰される。そのムダな抵抗をしながらも、ヤツの全身が焼かれて崩れていくのだ。


 痛々しいまでのあがきであるが、こちらも体力も魔力も尽きかけている。油断もならん。残酷に対処して、破壊し続ける他になし。


 それでも、長くはもたん。


 力なく振られた大鎌が、地面に衝突する前に止まり、ボロボロと崩れて落ちる。


 エスリン・リヒトホーフェンの面影が、ささやいた。


『…………もう……いい……もう十分だ。もう、戻りましょう…………『ギルガレア』……あなたも、休みなさい……』




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