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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その百


『……竜!!こちらを、狙うのか!!』


 蠅の群れが動いた。集まり、『ギルガレア』に対して守りの壁を作ろうとするが、薄い。手数に頼って分かれてしまっただけに、こちらの突撃を個々の力では防げないからな。


『ギギギギギイイイ!!』


『ギャギギギイイイ!!』


 集まり囲もうとする虫けらどもの鳴き声を無視して、突破する。『ギルガレア』の鎌がゼファーを斬りつけようとした。避け切れないなら、迎撃を試みる他にない。悪くない判断ではあるが、相手が悪いんだよ。


 鎌の斬撃が走ったのは、飛び抜けたゼファーが残した影に過ぎない。ゼファーは、その攻めよりもわずかに下を飛び抜けていた。


『外し……た!?』


 高さを取ることは、空中戦では有利だ。こちらには低空に飛び込む権利も与えられるからね。ゼファーは回避しつつも、『カマキリ』の後方に伸びた『腹』に噛みついた。


『ギギャガアアアアウウウウウ!!?』


 悲鳴が上がる。手応えを感じたゼファーが歓喜し、うろこを逆立たせた。そのまま、地上目掛けて巨体を引きずり下ろすように飛び抜けていく。『カマキリ』の脚がゼファーを捕らえようともがくが、レイチェルが戦輪を使って叩き斬る!


「近寄らせませんわ」


「ゼファー、このまま!!」


「地上に叩きつけちゃえ!!」


『がるるるううううううううううううううううううううッッッ!!!』


 ゼファーは旋回を使った。地上に向かって逆さまに走る竜巻みたいなものだ。ぐるぐると回転する動きは、『カマキリ』の貧弱な羽による飛行能力を破壊してしまう。


『動けない……力に、引きずり、込まれている……ッ。竜の力が、これほどとは!?』


 護衛どもを置き去りにして、地上ギリギリまで落下していく。


『だが、自滅は出来まい!』


 戦士ではないから、賢さが過ぎるぜ。エスリン・リヒトホーフェンの面影を使うことの良い面と悪い面が『ギルガレア』には与えられている。賢さによる分析は、大きな力であることは言うまでもないが……分析というものは、知識と常識に頼り過ぎる。


「自滅ね。する気はないぜ。ゼファー、加速だ!!」


『がるううううううううううううう!!』


『馬鹿な!?減速するはずだ!!そうでなければ、自ら地上に叩きつけられて……し、死ぬことになってしまうではないか……ッ!?』


 だから。牙を離して、こちらが減速するタイミングで、逃げようと企んでいた。そのときのために残っている力を全て注ごうとしていたのだろう。


 とても賢くて合理的なものだよ。


 悪くないし、正しい考え方だな。


 だからこそ、想定外の動きには脆さがある。賢い者が信じ切れるのは奇跡ではなくて、合理的で常識的な現象だ。


『死ぬ気か!?』


「ハハハハ!!違うさ!!」


 とっくの昔に、減速していなければならない低空に到達しているがね。だが、我々には考えがある。地上ギリギリの世界で、ゼファーは『ギルガレア』からようやく牙を抜いた。その直後、『ギルガレア』は逃げようとしたが……ゼファーは逃がさない。


 『火球』を至近距離から撃った。


 もちろん、外せるような距離じゃないからね、直撃したよ。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッ!!!


『ぐ、は、ああああ!?』


 地上衝突のダメージを減らそうと、羽を開いてもがこうとしていた『ギルガレア』の胴体が爆破して、抵抗の動きは消える。むしろ、『火球』による爆破のせいで、より加速してしまった状態で地上へと激突していたな。


 オレたちも、このままでは地上に激突してしまう運命であったがね。ゼファーは翼を使ってくれる。オレとミアも、ゼファーの思惑を形にするために、全身を『引いた』。背後に身を倒すようにして、ゼファーの翼が広がりやすいようにサポートしている。


 『火球』の作った爆風を、ゼファーの翼が受け止めて……減速の力が強まるのだ。


 地上に墜落する運命を、こうして無理やりぶっ壊してやるのさ。


 ……まあ、地上に激しい勢いで着陸することにはなった。ゼファーの骨格に負担を与えてしまっているが、『ギルガレア』の体に訪れたダメージと比べれば、かすり傷とも言えんものだ。


 戦士とは、傷を恐れんものだよ。


『そんな、馬鹿な、減速を、やれる……なんて……ッ!?』


 ダメージと、『火球』の残した炎に身を焼かれる『ギルガレア』の頭で、エスリン・リヒトホーフェンの面影が顔を引きつらせていた。


 オレとレイチェルが、ゼファーの背から跳んだからだろう。


 そう、『攻撃』の戦術というものは、有効な攻めを連ねて重ねて威力を組み上げていくものだ。地上を踏むと同時に、筋力任せの加速をしたぜ。負けたくない、と負けず嫌いのリングマスターは考えている。


 しかし、『人魚』の踊り子の敏捷性には、置いて行かれそうだ。身軽さ勝負でレイチェルに挑むのは、至難の業だ。


 どうあれ。矢のような急加速となった我々が、追撃のために神速を帯びる。エスリン・リヒトホーフェンの面影が、賢く悟った。


『動きなさい、『ギルガレア』!!このままでは、一方的に、狩られてしまう!!』




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