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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その九十


「ジャン、一休みしたら『オルテガ』に戻ってくれるか」


『は、はい。問題ありませんっ。ちょ、ちょっと目が回っただけですから。それに、ちゃんと、においも『オルテガ』と、つ、つながっています』


「風もだよ。吸い込まれる音が、聞こえる」


『うん。『おるてが』は、みえないけれど、つながっているよ』


「この大陸があるオレたちの世界とは、別の世界に引きずり込まれているのかもしれないが。ちゃんとつながっている。脱出させよう」


「うん。そっちは、ジャンに任せて……あ!誰か、ジャンについて行ってあげて!」


「船乗りならば、風を読むことに長けているはずです。『外』の風を頼れば、脱出することも可能。ジャンにつづいて、向こう側の世界の『オルテガ』に行ってくれる者はいませんか?勇敢な海の男は何処に?」


 レイチェルの美貌と、勇敢さを問われる挑発的なセリフ。ゾロ島の男たちは、顔面を強ばらせながらも、挙手を連続させる。


「い、行ってやらあ!!」


「な、仲間のためだもんなあ!!」


「こ、怖くなんて、ねええええ!!」


『そ、そうですか。ありがとうございます。で、では、ボクに、ついて来てください。ちょっと、ふ、ふらふらするかもしれませんが、大丈夫ですから』


「お、おうっ」


「た、たのむぜ、狼の旦那あっ」


「……戦神よ、ご、ご加護を」


 ジャンたちが『オルテガ』へと向かうなかで、オレはジョーンを見る。驚いたように、肩を揺らしたが、彼も訊かれる質問の内容は理解していた。


「は、はい。あのカマキリは、『オルテガ』の方角から、西北西っす。向こうの方に、飛んで行きました……み、見間違っては、いないと、思います」


「ジョーンの目は確かだ。信じていい」


「キケの親方あ……っ」


「ふん。情けねえ面をするんじゃねえ。風を読む男がいるのなら、お前も行って来い。『オルテガ』から、仲間たちを連れ戻してやるんだ!」


「は、はいっ!……キケさん、あいつらも仲間なんすね」


「そうだ。過去は、気にせん。さっさと、助けて来い」


「はいっす!」


 ジョーンは元気に走り……弱気になったのか、すぐにトボトボと歩き始めた。だが、ゾロ島のキケが大声で背中を押してやる。


「ぶっ殺されたくねえなら!さっさと行って来やがれ!!」


「は、はーいッッッ!!!」


 大急ぎでジャンたちに合流する男がいた。


「部下の扱いに長けているようだな、ゾロ島のキケよ」


「ふん。そんなことよりも、『ギルガレア』とやらを追いかけろ。仲間を助ける最善の手段なのだろう?」


「ああ。行ってくるぜ。ここは頼んだ。帝国兵も、混乱しているだろうが、偵察部隊と鉢合わせするかもしれん。皆の帰ってくるための場所を、守ってやるといい」


「おうよ。ジーの一族だとしても、同じ船に乗ったら……いや、どいつもこいつも、ちゃんと面倒見てやる」


 『人買いジー』の名は重たい。過去は誰にも変えることは出来ないものだ。しかし、いつでも誰とでも、新たな関係性を始められる。


 可能性を閉じることはないのだ。


 そちらの方が、ヒトという生き物は、より多くのことを成し遂げられるに違いない。恨みを忘れたわけでもなく、恨みとでも、可能性は共に生きられるだけだ。


「何を、ニヤニヤしているんだ、ストラウス卿?」


「いいや。すべきことを、成す!ゼファー、飛んでくれ!!西南西だ!!」


『らじゃー!!』


 大地を蹴り、加速を深めて……宙へと舞った。


 闇を貫くように、その方角へと一直線に飛び抜ける。


「この方角は……ハリートビー廃鉱にも近しいな」


「帝国兵が、いるかもしれないよ。ゼベダイ・ジスは、『半分』しか連れて来ていないもん」


『そいつらと、『ぎるがれあ』は、ごうりゅうするつもりなのかな?』


「『ギルガレア』が近づきたくなる何かを、持っているのかもしれませんね。『不滅の薔薇の世界』を創ったとしても、それで敵の作戦が完璧となるわけではありません」


「ああ。だからこそ、南のエルフのテリトリーを目指していたし、『オルテガ』に全ての戦力を戻すこともなかった。『不滅の薔薇の世界』を、リヒトホーフェンとゼベダイ・ジスの願いの通りに完成させるためには、まだ、すべきことがあることの証明だ」


 そいつが何なのかまでは、具体的には分からん。


 ……だが、こちらの読みの幾つかは当たっているようだな。敵を見つけられた。帝国兵どもだ。残りの500人まではいない。数は、50人といったところ。


 帝国兵どもが小高い丘に隠れながら……殺し合いをしていた。


「あいつら、何をしているの?」


「帝国兵同士で、殺し合っていやがる」


「どうして?」


 ゼファーが、『望遠』の力で見た光景を、アタマのなかに映してくれた。二つのグループに分かれて殺し合う帝国の軽装歩兵ども。そいつらの片方のグループには、オレたちの疑問を納得させてくれる傾向がそなわっていたぜ。


「あいつらの半分は、『寄生虫』に体を操られている」


「だから殺し合っているわけですね。情報源と見ますか?それとも、見捨てましょうか」


「『ギルガレア』の姿は、確認できん。それに、あの帝国兵どもが、情報か、『ギルガレア』を誘導する何かを持っているのかもしれない」


「ええ。では、助けてあげましょう。より多くを助けるために、今は、『貴方』の敵を」




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