表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4030/5097

第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その八十九


「おお!ストラウス卿だ!!」


「竜騎士が生きていたぞおおおお!!」


「オレは、信じてたぜ。殺したって死ぬような人たちじゃないんだ!!」


「レイチェル・ミルラの姉御おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 漁師たちは大声で歓迎してくれた。喜びもあるだろうが、安堵を得てもいる。戦場で『仲間』と切り離されることほど、不安なこともそうはない。


 着陸すると同時に、叫んだ。


「心配をかけたな!!この通り、オレたちは健在!!『ルファード』軍も、帝国軍を追い払って生き延びているぞ!!」


「おおおおおおおおおおおお!!」


「ま、街が、消えちまったんで……どうなったのかと」


「よ、良かった……っ。オレの兄弟たちも『オルテガ』攻めに参加していたから……っ」


「……ストラウス卿よ」


 威厳があって愛想のない声が響く。日焼けしたドワーフの男が、ゆっくりと落ち着いた歩きで近づいて来てくれた。漁師たちの長だよ。


「ゾロ島のキケ、無事で何より」


「こちらのセリフと言うものだ。多少のことで、死ぬような男とは思っちゃいねえ。だが、今回ばかりは、死んだかと思ったぞ」


「悪神ごときに、殺されはしない」


「ふん。そのようだ。で。一体、何が起きていやがる?」


「説明をしよう。少しばかり、長くなるがな」


「だろうな。『オルテガ』の街が、一瞬で消えちまった。ありえねえことが、起きている。理解するのも難しそうだ」


 ゾロ島のキケと、聞き耳を立てている漁師たちに、状況を説明したよ。説明しながら、あらためて、とんでもない状況であることを自覚させられもしたが。不謹慎なことに、ワクワクしてしまっている。


「……なるほど。ほとんど、分からねえ」


「ですよね、キケさんっ」


「オレたち、馬鹿だから、難し過ぎて、チンプンカンプンだぜ……っ」


「『蟲の教団のギルガレア』を殺せば、全てが解決するということですわ」


「お、おお!なるほど、さすがはレイチェルの姉御ですっ!!」


「とても分かりやすい!!」


 長く説明したオレも、やはりアタマが悪いようだ。その一言で、良かったのかもしれない。


「そ・れ・で!みんな、見ていないかな?『ギルガレア』のことを!」


 漁師たちは互いの顔を見合わせていく。


「夜の、闇のなかだったからなあ……」


「そもそも、オレたち、『ギルガレア』ってのが、どんな姿かたちなのかも知らねえ」


「『オルテガ』が、赤い光に包まれて、そのあと、黒いもやもやが出ちまって……気づけば、地面ごと、ごっそりといなくなっちまったんだよ」


 目撃情報は、ないのかもしれん。視認性が良いとは言えん状況であり、混乱をしていただろうから、仕方がないと言えば、仕方がないことでもあった。『蟲の教団のギルガレア』の姿かたちも、オレたちは確かに知らん……。


 ……いや。情報はあるか。『オルテガ』の地下で見た紋章があった。


「『蟲の教団のギルガレア』は、狼と、カマキリの混じったような顔をしているようだ」


「……そいつは、不気味で印象深いな。一度でも、見れば、忘れられそうにねえ。おい!誰か、そんなバケモノを見ちゃいねえか!?」


 ゾロ島のキケの言葉に、漁師たちはうなり声をあげながら必死に考えてくれる。


「高い場所に姿を現すかもしれんのだ。『ルファード』では、そういう形で、もう一方の『ギルガレア』が現れて、『火烏の軍勢』を呼び寄せていたぞ」


 思考のうなり声が星空の下で続いてくれるが、収穫はない。


「こいつらでも、数十分前の出来事程度は脳みそが記憶している。学の欠片もねえクソ馬鹿どもだが、それぐらいはな……」


「見ていないのならば、しょうがない―――」


「―――あ、あの!!す、ストラウス卿、ニケさん!!」


 背中に長剣を背負った人間族の男が、腕を上げていた。


「どうした?」


「お、オレ、見たかもしれねえっす」


「『ギルガレア』をか?」


「そ、その……正確に、そう言えるほどの自信はねえんですけど。一応、船乗りで、夜目は利く方なんです」


「ジョーンか。また見間違えたんじゃねえのか?」


「こいつは島影とクジラを見間違うことだってある」


「い、いや!そうじゃねえ。オレだって、空に浮かんでた……魔物は、見間違えねえ……と思うんだ」


「空に浮かんだ、魔物、か。そいつは、どんな姿だったんだ?」


「虫っすよ。あれっす、あれです。カマキリ……三角の形をしたアタマで、牙がえぐくて。あ、あと。狼要素は、ねえっす。ば、薔薇みたいな、赤い、花びらをまとってて、羽で空を飛んでて……何とも、夢見が悪くなるような姿でした」


「リングマスター、『ギルガレア』を見たようです」


「ああ。上手くすれば、追いかけられるかもしれん。そのバケモノを、どこで見た?」


「じょ、上空っす。その、『オルテガ』が消える直前に……『オルテガ』の方か……ああああああああああ⁉お、お、狼っすよおおおおおおおおおおおおおッッッ!!?」


 『オルテガ』のクレーターに向けての叫びに、オレたち全員の顔が動いた。


 そこには、狼がいた。


 というか、猟兵ジャン・レッドウッドが化けた『巨狼』が、フラフラと歩きながら、こちらに近づいて歩く。


 ああ、いきなり、ゲロを吐いた。


「ジャン、大丈夫か?」


『は、はいっ。だいじょーぶですっ。そ、その、目が、ま、回ってしまっただけですっ。ぐるぐる、してましたので……っ』


 地上ルートでも風を頼れば、あの空間から脱出可能だということが、証明された瞬間だったな。ニヤリと笑う。これで、『ルファード』軍も市民も、避難させられるというわけだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ