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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その八十三


『……んーっ!?どうなってるの!?』


「薔薇の花が咲いて、光ってるよ……あ。花びらが、落ちてくる」


 夜空を埋め尽くすほどに咲いた薔薇の花どもが、ひらりひらりと花弁を散らす。炎のような明るさを放ちながら、幻想的ではあるものの……。


 誰もが融け合う『不滅の薔薇の世界』、死者と生者のあいだもなくしてしまう世界。『蟲の教団』どもが夢見た、一種の楽園。あるいは、冥府。


「何にせよ、この世界に在るべきものではないな」


「うん。そんなカンジ。キレイだけど、あまり見ていない方がいいと思う。何だか、吸い込まれそうになるから」


「舞い落ちるあの花弁にも、触れない方がよろしいでしょう」


「ああ。ゼファー、避けてくれ」


『らじゃー!』


 燃えるように赤く光る花びら……そいつは、一枚一枚が5メートル以上はありそうだ。幸か不幸か、地上に降りる前には、まるで燃え尽きるようにバラバラになっていく。そういうデザインの花火だと言われたならば、火薬職人を褒め称えたくなるほどには美しい。


 いかんな。


 つい、見てしまう。首を振り、ほほを叩く。


「幻惑されているのかもしれない」


「疲労もありますからね。皆で、会話をしながら意識を確認し合った方がいいです」


「『ギルガレア』を、早く見つけたいね。どこに、いるのかな?」


「『ルファード』では、『火烏の軍勢』のような特異な現象が起きているときに、不意に現れた。この現象の指揮官のような立場だ」


「指揮を執るには視界が明瞭な方が良いですわね」


「……そうだな。『ルファード』でも、すぐに見つけられた。つまり、視認性が良い場所にいた」


『『おるてが』は、みえにくいし、ていこくへいどもが、よくかくれるよ』


「城塞が入り組んでいるし、迷路みたいだもんね」


「地上では、ない。ツタが天高く伸びたのは……物見やぐらのような効果もあるのか?」


「じゃあ。もしかして……」


「この薔薇たちの上空に、『蟲の教団』が崇拝していた方の『ギルガレア』が、いるかもしれませんわね」


『いってみよう!』


「ああ。街並みに、『ギルガレア』らしき姿があれば、上空からでも見える」


「いちばん高いところから、探せば早いよね!」


 鉄靴で合図をした。ゼファーは、楽し気に空へと首を伸ばして、翼で空を叩く。


『むふふ。たのしみ!』


 不謹慎ではあるが、それでも、『ドージェ』も同意してしまう。口もとがゆるんだ。強い敵が待っているかもしれないし、この不思議でおかしい空を楽しむ機会は、そうあるものではない。


「星々の代わりに、赤く輝く薔薇の花たちの咲いた夜空に……『ゼルアガ』との戦いか。たしかに、最高だな。と……未曽有の危機の最中に、口が過ぎてしまったか」


「いいえ。猟兵らしい解釈で、よろしいかと」


「そだね。変に緊張しても、良くない。怪しいのには、あまり近づかないようにして、リラックスしよう」


 最も純度の高い猟兵、ミア・マルー・ストラウス的な発想である。ガルフが提案してくれそうな言葉だ。


 気持ちが楽になる。


 連戦の疲労と、未知への恐怖。そういうネガティブなものが、想像力を嫌な方向へと引き込んでいるようだからな。それは良くないことだよ。戦闘において、負けてしまうパターンだった。


「戦士たちは、避難してくれているのですから。リスクは、最小限となっているはずです。戦闘も落ち着いています。我々は、余裕を持って、ことの解決にあたるべきですわね」


『うん。そういうの、だいじだよね』


 ゼファーは、もしかして、オレたちの緊張を嗅ぎ取っての発言だったのだろうか。そうだとすれば、本当に大きく成長してくれている。『ドージェ』として、鼻が高い。


 ヒトと連携するという点に関しては、もしかするとアーレスをも超えているかもしれないな。


『るーんるーん!』


 舞い散る輝く花弁を楽しそうな飛行で躱しつつ、高みを目指した。狭い空だ。すぐに、薔薇の花畑の上空へと到達する。


「わー!」


『きれい!』


「壮観ではあるな」


 眼下に広がる輝く薔薇ども。異常なまでの巨大さであり、光を放っている点については不思議さが過ぎるものの、美しさはあった。


「さてと、『ギルガレア』は、どこだ……?」


「ここからなら、『オルテガ』の、全部が見えちゃうよね!」


「ああ。高台どころじゃない視界の広さだが…………ん?」


「どうしました、リングマスター?」


「いや。地上に、海がない」


『え?……あ。ほんとだー?』


 この高さからなら、見えるはずの中海が、どこにも見当たらない。暗がりに沈みすぎていて、何も見つけられない。ありえんことだ。空の星々の灯りだけでも、海はきらめくはずなのに……。


 星が曇っているのかと、さらなる上空を見上げて……さすがに驚いた。


「……街が、あるぞ」


「街?」


「……あら。本当ですわね。街が見えます。星ではなく、街の灯りが、上空に……あれは、『オルテガ』です。不思議なことですが、はるかな空の高みに、鏡合わせのような形で、迷宮都市がありますわね」


『かんぺきに、ちじょうとおなじだよ。ういてるんじゃなくて、さかさま』


「リングマスター。ここは、すでに敵の術中なのかもしれません」


「『不滅の薔薇の世界』とやらに、オレたちは、閉じ込められたと?」




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