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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その六十七


 こうして連携は成り立っていたぜ。猟兵は、『家族』だよ。無言のままでも、互いのしたいことをよく理解してくれている。


「ぬ、ぐ……う……ッ!?」


 ミアに蹴り倒されたリヒトホーフェンのはるか上空で、ジャンも仕事を達成しようとしていた。


『がるるるうううううううううううううううううう!!』


 天井に描かれた紋章が、大きく砕け散っていた。『呪いの赤い糸』の多くが四散するのが見えたぞ。リヒトホーフェンを守っていた呪いも、この瞬間に潰えてしまう。


 だが。


 全ての呪いが消え去ったわけではない。オレも、いまだに空中にいる落下途中のジャンも、気づいている。にらみつけているぞ。


『て、天井の裏に、何かいますよ!!お、大きいのが、何か、います!!』


「ああ。だが、今は、回避しろ!!」


「うん!!」


「落ちてきますわね」


 ジャンの牙に破壊された天井は、古い石材を落下し始めていた。巨大な石材と土砂が、流れ星のように降り注ぐなか、我々はそれに押し潰されないように必死だったよ。


 落下物のせいで、この内臓みたいに赤い部屋を、大量の土煙が覆っていく。リヒトホーフェンは、その隙に乗じて、この場からの逃走を始めた。


 ヤツは、『蟲の教団』の力こそは求めてはいても、この邪教の信徒ではない。最後まで邪教の聖地を守るような気はないのだ。


「エールマン・リヒトホーフェン!!オレたちから逃れられると、思うなよ!!」


「これは、逃亡などではない!!勝利への凱旋である!!全てを書き換える、『究極の聖餐』は成し遂げられる!!私は、私が取り戻すべき者を、この腕に抱くのだ!!我が娘、エスリンが!!帰還する!!」


「それが、貴様の目的か!!死んだ娘を、取り戻したいがために、こんなおぞましい行いに頼ったのか!!」


「私にとっても、世界にとっても、望ましい!!死をも克服した楽園が、設立されるのだからな!!悲しみは、終わる!!苦しみは、終わる!!あの子の、願いが成し遂げられる!!」


「まやかしだぞ!!呪いで、そんなものが作れるものか!!」


「『ゼルアガ』の力を、使いこなせばいい!!幾度となく、連中はこの世界を書き換えているのだ!!連中の一柱、『ギルガレア』ならば、罪科の獣ならば、変えてくれる!!『聖餐』に応えてくれる侵略神だ!!」


「やめろ!!『ゼルアガ』に、これ以上、世界を破壊させるんじゃない!!異界の悪神に、世界を喰わせるな!!」


「ハハハ!!叫んだところで、私は止められるものか!!多少、予定は、変わるが……『大神官ども』よ!!最後の出番だ!!」


「大神官……ども、だと!?」


「お前たちの千年の悲願は、私が変わりに成し遂げてやろう!!お前たちは、この邪魔者を排除しろ!!」


「リングマスター!上から、来ますわ!!」


「『大神官ども』……か!!」


 リヒトホーフェンの気配が、崩落する瓦礫の向こうに遠ざかっていく。


 そして、割れた天井の奥に潜んでいた者が姿を現しやがった。巨大な、うごめく薔薇のツタの集合体。ところどころに、ローブを身に着けた白骨死体が混じっているのが見えた。あの死体どもから、薔薇のツタが生えているのか。


『だ、団長!さ、さっきの、老人と、においも、気配も、に、似ています……ッ』


「ああ。大神官ゾーンの、『前任者』どもだろうよ。連中、この場所を守るために、代々、あの植物混じりのバケモノに成り果てていたのか!!」


『な、なぜ、そこまで、して……ッ!!』


「それほど、連中にとって大切な場所だからでしょう。ここは、生贄を見つけるのには都合が良い土地ではありますからね」


『い、生贄を見つけるのに、都合がいい……って?』


「死者が、多く生まれた土地でもあるな。死にたくないと、願っていた……無数の死者が」


「そっか。ここは、たくさんの勢力が奪い合い続けた街だもん。大昔から、戦死者は、多かった」


「『蟲の教団』どもは、千年かけて、『聖餐』を用意したのかもしれませんね。この街ならば、いくらでも血と恨みが、この『深み』へと集まるのですから」


『じゃ、じゃあ。こ、この千年間の、せ、戦死者たちを、か、勝手に生贄として……じゅ、呪術に、組み込んでいたってことですか!?』


「途方もない時間をかけて、ひたすらに力をため込んでいたのかもしれません。連中の念願である『究極の聖餐』とやらを組み上げえるために。あのツタの表面を、よく見てください。私の耳には、小さいものの、無数の悲鳴が聞こえてきます」


 魔眼で、確認したよ。レイチェル・ミルラの感覚は、あいかわらず研ぎ澄まされていた。


「皮膚の剥がれた顔のような形状が、無数に連なっている」


「膨大な死者と、歴代の大神官ゾーンたちで、このバケモノを作ったのでしょう。このおぞましい圧は、往古の気配を帯びています」


「『巣箱』にも似ているな。あれの、真の姿が……これなのか。『寄生虫』で編まれた絡み合う薔薇のツタで出来たバケモノ。まあ、何で、どう作られていたとしても―――」


「―――倒さなくちゃならない!!落ちて来るよ!!みんな、こいつは、かなり強い!!肌に感じるもの!!」


「全員!!こいつを倒すことだけに、集中するぞ!!」




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