第三話 『愛する者に不滅の薔薇を』 その六十
「はあああああああああああああああッッッ!!!」
ヤツの伸び切った腕の群れに対して、側面から襲い掛かる!
対処は間に合わんさ!こちらは早く、そして速さもある!!
体勢不利の大神官ゾーンとやらは、無数の腕を引こうとしたが、そのまますべての腕を一刀両断される!!
『ぐはあ!?鉄よりも、硬い……罰の蟲の身を……ッ!?』
「それを断つのが、竜太刀なんだよ!!」
そして、オレもアーレスも、容赦なく攻め込むのが好きだと来ている!
『くっ!?』
体を返し、ヤツの正面から斬撃を放つ。予想通りの動きをしたよ。ヤツというよりも、虫けらどもの反射に近いのかもしれん。体内を突き破り、新たな腕が飛び出して、オレのことを迎撃しようとしてくる。
ガキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンン!!
体勢が不安定だったからな。押し切ることは叶わず、力の競り合いに持ち込まれる。ゾーンの老いた顔面が笑っていた。
『これぞ、『ギルガレア』さまのご加護よ!!』
「どうだろうな!!裂け、アーレス!!」
『な!?』
今の竜太刀を受け止めたところで、『牙』の威力まで止められるとは限らんのだよ。競り合う刃と虫けらどもの甲殻。互角の硬さだったとしても、こちらの刃には狂暴さに踊る『牙』の列があるのだ!!
ギチギチギチギチギギギガガガガガアアアアアッッッ!!!
『刃が、うごめくううう!?』
「竜の闘争本能は、死んだぐらいで止まらない。偉大なアーレスは、競り合う者の存在をも許さない!裂かれて、割れて、砕け散るがいい!!」
鋼のように硬いのだろう。それゆえに『牙』に壊されながら火花まで散っているのだ。しかし、それでもアーレスの『牙』の前には敗北者となるだけのこと。
『く、砕かれる、壊されていく……っ。い、偉大なる、罰の蟲の身が……っ!!竜、竜とは、これほどまでなのか、きょ、興味深い……っ!!だ、だが!!』
「……っ!!」
腕が、もう一つ生える。今度は、虫けらの形質を持ってはおらず、老人の弱々し気な手が腹から生えていた。しわの多い手ではあるが、その手のひらに魔力を集約させている。『雷』の魔力と来たか!
「悪くない、反応だ!!」
『この至近距離でなら、避けられまい!!砕けるがいい!!』
紫電のかがやきが炸裂する。至近距離で、腕との力比べ状態になっているオレに『雷』を注ぐ。発想は良い。アタマの回転そのものが良いのだろうが、やはり本職の戦士というわけではないようだ。邪教においても聖職者さまは、世慣れしていない。
竜太刀が『炎』をまとった。荒ぶる猛火が刀身から奔り、ゾーンの放った『雷』を歪めて弾いてくれる。
『な……し、しま……った。そう、か。属性の……ッ』
相性がある。三大属性の法則は、ヒト同士の魔力においては、ほとんど絶対だ。『雷』は『炎』の前に幻惑されてしまう。至近距離であろうがなかろうが、強大な『炎』を打ち破る『雷』を、瞬発力で練り上げることは不可能である!
「駆け引きが、下手だな!!見せたはずだぞ!!竜太刀は、火焔を帯びるのを好むと!!」
『お、おのれええええええええええ―――ぐふうう!?』
そして、忘れている。これは一対一などという道場の試合ではないのだ。多対多の真っ最中である。この大神官ゾーンとやらが、『スケルトン・パラサイト/白骨に寄生した蟲』の群れを使っているように、こちらもチームを組んで動いている。
ゾーンの側頭部に、ミアが放ってくれた弾丸が命中した。『風』の魔力をたっぷりと込めたものでね、ゾーンの愚かにもその意図に気づかず、我が妹の雄姿を見つめる。意識を逸らしてしまうから、我々の『連携』を許すのだぞ。
何も、魔術を融合させるのに『ターゲティング』という小細工を使う必要もないのだからね。とくに、兄妹の息を合わせた魔術同士、さらに言えば、ミアは魔術に込めているのだよ、『お兄ちゃん、『風』を使って』と。
竜太刀の『炎』とミアが弾丸で『届けてくれた』『風』が融けて合わさり、爆炎と成る。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッ!!!
『ぐ、があああ!?』
魔術による爆炎は、指向性を与えやすい。オレは無傷だが、ゾーンの虫けらだらけの肉体は吹き飛ばされてしまう。焦げながら裂かれたその肉体は、勢いよく壁に叩きつけられた。
むろん。
休ませるつもりはない。突撃し、間合いを詰める。殺気を十分に浴びせて、『命じる』のだよ。恐怖に呑まれろと。
『く、来るんじゃない!!近寄るな、竜ううううううううううううううううッッッ!!!』
虫けらの腕がまた増設される。まともに突破するのは、さすがに難しいから。手伝ってもらうんだよ。右に飛び込む。敵の腕の数の半分を、オレが引き受けて……密度を下げるのだ。
その策に、素直な邪教の聖職者は引っかかってくれる。オレを見ていた。オレの殺気に釣られてね。だからこそ、間違うのだ。レイチェル・ミルラはすぐそこにいる。『諸刃の戦輪』と共に加速し、左から虫けらどもの腕を片っ端から叩き斬った!!




