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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その五十二


 臨機応変さが、少数精鋭の利点だからな!!『寄生虫』が気になってしょうがないのであれば!!リヒトホーフェンを探し出して、ぶっ殺してやるだけのこと!!


 単純にして明快なことだったぜ。


「ゼファー、ジャン!『呪い追い/トラッカー』を組み立てるぞ!!」


『おっけー!』


「は、はい!!」


「感じ取るべき情報に意識を向けるぞ。リヒトホーフェンは一定の士官の左肩に呪術を仕掛けている。命令書にも、呪術を仕掛けた。帝国兵は各種の拠点に、現場指揮を執る士官かそれに準ずる者を設置している。動きを見ろ、敵の動きを感じ取れ」


『うん……まちの、ぜんたいを、みる!』


「ま、街の全域を、か、嗅ぎます……っ」


「敵の動きが明瞭なところを感じ取れるはずだ。広場に集結しようとしている帝国兵どもの群れには、指揮官がいる。こいつは高確率で呪われているぞ。そして、城門だ。ここを守る責任者もしっかりと『寄生虫』を植え付けられていた!」


『そういう、ばしょを、いしきする……』


「じょ、城門がある場所、ですね……っ。そこに、呪いがある……っ」


「リヒトホーフェンの野心が、どれだけ形になっているかは知らんが、ヤツはヒトを操ろうという願望を持っていた。『寄生虫』は、死者だろうが生者だろうが、程度の差はあれ心も肉体も操ってしまう……『寄生虫』に支配された連中が、今、どんな動きをしているかを探っていくぞ」


 魔眼を使う。眼帯を外して、地上の傾向を見抜きにかかった。『寄生虫』入りの指揮官どもは、どう動いているのか。


「視覚で見る限り、傾向は明白だ。こちらの戦力に対して、衝突しようとしている。東に移動しようとする部隊や帝国兵どもが多いなか、こちらが掌握しつつある西側でも、統率が取れた部隊は、徹底抗戦の構えだ。中央の部隊の動きは、集結しようとしている。西側は、東に逃げ始めた兵もいるが……わずかに北西に移動している」


『……ていこくへいのうごきが、みえてくるね……』


「に、においも、そうです。汗をかいている、か、活動的な敵兵ほど……」


「街の中央の……北側に向けて、集まろうとしている。そこを、背に向けているな。守ろうとしているように、見える…………っ」


『……『のろいおい』が、くめたよ……っ!』


「ぼ、ボクも、です。あそこです……中央部の……城塞が取り囲んでいて、ま、周りよりも低くなっているところ……め、目立ちませんが……呪いが……あそこから、出ています」


「魔眼でも、そうだ。あそこから、『呪いの赤い糸』が、無数にあふれていやがる……」


『……のろいが、だんだん、つよくなっているんだ』


「で、ですね。戦闘が始まったときより、きっと、つ、強くなっています。だから、い、今になって感じ取れるようになった……っ。あ、汗のにおいだけじゃ、無いんだと思います。ボクが嗅ぎ取っているものって……!」


「悪意でしょう」


「あ、悪意、ですか?」


「違いますか?私に呪いは見えませんが、リヒトホーフェンという男は、この状況を『是』としているように感じられます。無策が過ぎますし、帝国兵どもを死なせることを、好んでいるよう。降伏しようとする帝国兵を、許さないというのも……死なせたいからです」


「帝国兵は、リヒトホーフェンにとって仲間なのに……死んで欲しいと、思っているんだね」


「あ、ありえちゃ、いけないことですが……で、でも……た、たしかに。ボクが、嗅ぎ取っているのは、そういう悪意……で、でも、そう、ですね。ぜ、『是』としているんだと思います」


「リヒトホーフェンにとっては、この状況こそ『正しい』と」


「は、はい。だから、ま、周りには悪意だけど……あいつ自身には、た、正しい行い。だから、こ、こんなに……渦巻くような、感覚で……お、お母さんみたいに、容赦ない……愛情……っ」


「愛、ですか。まあ、とても怖い側面を持つものであることは、私が保証いたしますわ。でも、そうですね。この悪意は、きっと……復讐心ではない。対象が、我々でもなければ、帝国兵でもない。帝国兵が死ぬのは、ただの過程……手段でしょう」


「……『聖餐』か。リヒトホーフェンは、帝国兵どもを生贄にしようとしているのかもしれんな。いや、帝国兵どもだけでなく……まさか、この戦闘そのものが……」


 『蟲の教団』の遺した、邪悪な祭祀呪術なのかもしれん。二つの『ギルガレア』を、衝突させることが……ヤツの望み。『聖餐』は、生贄を捧げることで、新たな『掟/法則』を世界に刻みつけるような行い。


 では。


 これだけの多くの兵士や戦士が、生贄にされたなら……どれだけ、大きな『掟/法則』に世界は歪まされるのだろうか。レヴェータ並みの、祭祀呪術を行うのかもしれない。


「放置しておけるような、気持ちにはならん。この呪いを、追いかけるぞ!リヒトホーフェンを見つけ出して、その首、落としてやればいい!!」


「簡単なことだね!!ゼファー、行こう!!」


『らじゃー!!』


 勝利に向かう戦場の上空を、飛び抜けて。『呪いの赤い糸』が導く、城塞に取り囲まれた、暗く淀んだ低い場所へと向かう。闇の気配が、濃くなったように感じられた。やけに灯りから遠ざけられた、暗い場所だった。


 記憶にあるよ。弱な呪術の使い手の多くは、陰気な暗がりによくいやがった。卑劣な悪意は、こういう深みから、世の中を歪んだ価値観で見上げるのが好きなんだろうかね。




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