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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その三十八



 ―――秩序で大陸を支配しようとしている帝国には、まったくの真逆の力だよ。


 混沌の可能性から生まれて来たのは、調和した無限の力。


 統率こそが軍隊を強くするけれど、『ルファード』軍には別種の強さがある。


 闘争本能だけでなく、豊かな世界観が限界を越えさせていた……。




 ―――エルフの軽快さに守られながら、ドワーフはすべきことに集中する。


 ドワーフの明確な指示を受けて、巨人族は力を注ぐことに尽くせていた。


 巨人族の豪快さを頼りながら、巧妙な作為で迎撃を企む敵をケットシーが見破る。


 亜人種たちと共に在ることを、今このとき人間族は嫌うことがない……。




 ―――人種に分かれて生きることが、この大陸では当たり前だったけれど。


 その隔たりが混沌のなかで消え去っていき、融け合う力は何倍にもなる。


 帝国軍は経験にない未知の軍勢と戦っていた、この夜の闇のなかでね。


 それは我々の有利となり、連中にとっては破滅的な不利となっていく……。




「何なんだ、この勢いは!?」


「どうして……ここまで、攻められているっ!?」


「し、シロウトじみた、バラバラの隊列のくせに、どうして……こんなに、一致しているんだ!?亜人種どもと、人間なのに……なんで、こいつら、仲が……いい……ッ!?」


「竜か……ッ。竜騎士が、こいつらを統率しているのかッ!!」




 ―――ソルジェは楽しそうに空で笑って、矢を撃っていたよ。


 帝国兵どもを片っ端から仕留めて回っていたね、殺すほど楽しい。


 ファリス帝国は彼の宿敵だからでもあるし、それだけじゃない。


 敵を殺すことは闘争本能を満たすことで名誉であるが、それだけでもない……。




「守るぞ、ゼファー!!『仲間』を守るんだ!!この……ガルーナ軍みたいな……ベリウス陛下のいたころみたいな……この空気をまとった軍勢は、何とも愛おしいものだ!!」


『うん!!まもる!!みんなを、まもるよ!!なんだか、ちが、あつい!!』


「そうだ!!それでこそ、ストラウスの竜!!ガルーナの竜!!その熱こそが、アーレスの血に刻まれた使命!!オレたちこそが、魔王軍の一番槍!!ストラウス家の竜騎士と、その竜だあああああああああああッッッ!!!」


『GHAAAAOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』




 ―――歌は熱であって、力だった。


 ソルジェとゼファーの歌は敵を恐怖に震わせて、仲間に無限の力を与えていたよ。


 竜騎士と竜と共に在る戦は、戦士の本能に居心地の良さを与えるものだ。


 歌と共に戦士たちは鋼を振り、それぞれの使命に迷うことなく突き進む……。




 ―――歌の加護を帯びた我らの軍列は、とっておきの策を実行しようと目指す。


 戦列の影に隠れて進むのは、風車より生まれた破城槌だ。


 分散されていく敵の群れ、敵の意識の隙を貫くべき時間がやって来る。


 エルフの戦士たちが、援護のために弓を構えた……。




「援護する!!行けえええええええええええええええええええッッッ!!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「突撃だああああああああああああああ!!」


「ぶちかませええええええええええええええええええええええッッッ!!!」




 ―――虜囚となったドワーフたちの復讐が、ここに始まる。


 破城槌は戦士たちに押されて、ひたすらに走る。


 敵兵は気づいて対応しようとするが、その数はまだ少ないものさ。


 ドワーフの目が見つけた鋼の目印に向かい、破城槌が襲い掛かる……。




「ドワーフの根性を、見るがいい!!……オレたちを、奴隷にした罰だ!!邪悪な帝国人どもに、今こそ、罰を与えてやるがいい!!」




 ―――矢の応酬のすぐ下を、加速した破城槌が走り抜けて。


 復讐はそこに成立し、城塞を風車の軸が貫通していた。


 見た目こそ頑丈に作られていたものの、ドワーフの技巧は確かなもので。


 狙いの通りに空虚で弱く、またたく間に貫通を許してしまっていた……。




「城塞を、貫いたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「情報の通りだったぜ、スゲーぞ、ドワーフ!!」


「やったな、オッサン!!アンタらの執念が、成し遂げたぜ!!」


「ヘヘヘ。当然だよ。オレたちは……ドワーフなんだぜ!……だが、だけど。テメーらがいたからやれたんだ。こいつは、オレたちだけの手柄じゃねえぞ。まったく、ここは、面白い軍だ!!」




 ―――帝国兵どもは驚愕していた、頑丈なはずの城塞が一瞬で穴を開けられた。


 驚きのあまりに凍てつくが、巨人族とエルフの戦士が突入したことで反応する。


 危機感が燃え上がる、怒涛のように集中して侵入してくる戦士たちの姿に。


 練度の十分な帝国兵どもは、たしかな戦術を感じ取れていたのだから……。




「まずいぞ!!こ、こいつら、狙い通りだ!!」


「作戦がある!!亜人種どもには、作戦があったんだ!!」


「集まれ!!兵士を、集めろ!!ここが、ここが……敵の本命だぞおおおおお!!」


「し、しかし!?しかし……分散してしまっている!!これが、敵の狙いか……ッ!!」




 ―――帝国兵どもは恐怖し、必死に危機を伝えようと叫び声を上げた。


 だが、その声は怒涛となった戦士たちの声にかき消されていく。


 予定された勝利の始まりに、若い血が興奮に燃え盛っていたからね。


 必勝を宣言する声と躍動する動きを、ドワーフの男はニヤリと見つめた……。




「戦神の加護を、あの若い連中に……オレの仲間だぜ。ドワーフの英霊たちよ、あいつらの鋼が、良い働きを出来るように。加護をくれてやれ!!……オレも、戦場に立ってれば、敵の矢の囮ぐらいは、やれるから……やってやるとするぜ!!」





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