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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その三十七



 ―――帝国軍は百戦錬磨で、常勝無敗の軍勢であった。


 それだけに勝負勘も発達していてね、帝国兵どもは敗北を察している。


 帝国軍にとっては、この混沌から生まれた軍勢は未知のものだった。


 基本的にどの種族も、自分たちの種族だけで軍勢を作るものだからね……。




 ―――それぞれの種族に対しての攻略用の知識はあるものの、今は別だ。


 どの種族もこの軍勢にはいて、対処すべき方法を選ぶだけでも迷っている。


 恐怖は想像力を暴走させて、想像力は可能性の海に呑まれるものだよ。


 賢いからこそ罠にかかる、罠の持つ能力の全てを想定しようとするのだから……。




 ―――それでも持ちこたえていられるのは、個々の強さ。


 鍛錬だけは嘘をつかない、帝国兵は惑いながら迷いながらも応戦を続ける。


 最大の力なんて発揮出来やしないものの、地力は十分にあった。


 疑いつつも命令に殉じようと、多くの兵士が行動し続ける……。




「負けるか!!亜人種どもに……ッ!!」


「ファリス帝国は、負けない!!大陸を完全に統一し、千年の繁栄を続けるんだ!!」


「歴史上最も偉大な英雄になられるのは、ユアンダート陛下と、その軍である!!」


「帝国軍、万歳いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!」




 ―――意地のような誇りを鋼に込めて、徹底的に抗い続ける。


 矢を撃ち手槍を投げて、接近戦も始めた『ルファード』軍に応じていた。


 戦術は動いているよ、『壊れやすい城塞』に向けて戦士たちが攻めていく。


 エルフがロープを引っかけて、ドワーフの腕力がそれを引いた……。




「ハハハハ!!崩れたぞ!!」


「やるじゃねえか、巨人族野郎!!……エルフの腕も見せる!!」


「どんどん射殺せ!!」


「テメーも、休んでるんじゃないぞ!!」




「城塞を、容易く崩す……ッ!?」


「脆くなっていたのか……いや、それを……知っていたのか!?」


「『オルテガ』から、情報が流れている!?……い、いや、そんなことよりも、集まれ!!」


「突破されるな!!一部が崩れただけだ、城塞を越えさせるなあああああ!!」




 ―――戦術が機能していたよ、城塞が崩れた場所に帝国兵が集まっていく。


 多少崩れたところで、機能が損なわれるものでもないけれど。


 夜の闇ではどれぐらい破損したのか、彼らに確認することは難しい。


 夜戦での命令はどうにも大味になるもので、過剰な人員が集まってしまう……。




 ―――そんな場所が、迷宮都市の外壁のあちこちで生まれていた。


 こちらの戦術のデザインの通りに、運命は転がっていく。


 ゼファーは喜び、ジャンは喉を痛くしながら咆哮した。


 帝国兵どもの意識を分散させて、こちらの破城槌の動きを隠し切る……。




「ついに、こいつの出番だ……」


「運ぶぞ!!戦士たちの戦列に隠したまま、急ぐんだ!!」


「風車を壊して作ったにしては、十分に使えそうじゃないか」


「……ストラウス卿よ、約束は守るぜ。オレのドワーフの目が、壁に埋められた鋼を見抜いてやるよ」




 ―――ドワーフの男も、当然ながらこの戦場にやって来ていた。


 殺された同胞たちの復讐と、自分の抱えた怒りを晴らすために。


 だが周りの戦士たちを見ていることで、彼の心は変わってもいる。


 復讐でも怒りでもなく、何かもう少し前向きな心が芽吹いていた……。




 ―――戦闘がもたらす、よくある高揚なのかと考えたものの。


 すぐにその答えを彼自身が否定した、何せ過去に感じたことがないものだ。


 その感情は復讐鬼の高揚などではなく、未知なるものへの期待だった。


 彼自身も分かりはしない、まったく知らなかった感情がここにある……。




 ―――群れることを喜ぶヒトの本能が、単純な戦士の心を捕らえていた。


 とても原始的な本能だけれど、どうしてこれほど多様なのかが不思議だった。


 おかしなことだ、おかしなことだからこそニヤリと笑える。


 虜囚の苦しみと怒りを忘れ、戦士は理想郷の感覚を覚えた……。




「居心地が良い。奴隷ではない。奴隷よりも、ある意味では過酷なことをしているのだが。どうにも不思議な感覚だ。戦というのは、いくつになっても面白いものだが。楽しいものだが。これは、ちょっと、いつもと違うなあ……そりゃあ、そうか。ありえねえほど、ヘンテコだ。どの種族も、並んで走っていやがる!!」




 ―――ありえなかった軍勢に、興味を覚えている。


 不揃いの混沌は、傷つけ合うことが多いのだけど。


 今この瞬間だって、無条件な仲良しだらけというわけでもないけれど。


 誰もがいていい原始的な軍隊があって、原始的なくせに歴史上どこにもなかった……。




「だから……強いってか、ソルジェ・ストラウスよ。アンタの言ってるコトの、半分以上はよく分からねえ。ドワーフと違って、人間族はヘンテコだ。とくに!どう考えたって、アンタは異常なまでにヘンテコだ!!それなのに……ちょっとだけ、意味が分からんままだが、分かった気がしているぞ!!」




 ―――ここは何処にもなかった、無何有の郷への入り口だ。


 誰もが生きていていい世界は、この大陸にかつてはなかったわけだけど。


 それを創れる者がいる、竜に乗って巨狼を従える死と歌の魔王。


 無何有の郷の獣が一匹、ドワーフの貌で笑う……。




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