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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その三十九



 ―――混沌を調和に変える意志は、自己犠牲と普遍的な欲求だよ。


 勇敢さだけではない意志が、この軍勢には備わっている。


 仲間意識を作り上げるためには、それらの意志が必要でそれらがないと脆いものさ。


 戦える力がなくとも戦場に立つことで、敵はその姿を警戒した……。




「城塞の穴から、入るぞおおおおおおおおおおお!!」


「雪崩れ込んで、占拠するんだ!!」


「陣取れ!!押し込め!!『オルテガ』を、帝国軍どもから解放するんだッッッ!!!」


「行け!!行け!!背後は、仲間に任せて、がむしゃらに突っ込めええええッッッ!!!」




 ―――闘争本能を皆が満たしていき、戦士らしい笑顔があふれる。


 迷いの無い戦術の道を突き進み、『ルファード』軍の戦士たちは迷宮都市に侵入した。


 帝国軍はその対処に追われるが、どうにも兵力の集まりが悪い。


 作戦の成功を知ったガンダラが、新たな策を放っていたからでもある……。




「『オルテガ』の市民たちに協力してもらうことにいたしましょう。お願い出来ますかな?」


「……おうよ。商人のつながりってものを、今こそ見せてやろう。ラッパを吹き鳴らせえええええええええ!!」




 ―――『ルファード』商人と『オルテガ』商人たちの、密かな結託が動いていた。


 城塞内への侵入を果たすと同時に、ラッパの合図を受けた市民が武装蜂起する。


 その密約は実行されて、『オルテガ』の男たちが剣と槍で敵へと襲い掛かった。


 市民たちも、いつまでも支配され続けたいわけではない……。




「今こそ好機!!帝国軍どもを、襲うぞおおおおおおおおおおおおおお!!」


「オレたちの街を、取り戻す!!」


「かつての敗北の屈辱を、今こそ!!」


「帝国兵の詰め所を、燃やしちまえ!!人手を分散させるんだ!!」




 ―――市民たちの戦闘意欲は大きくて、根深いものがそこにある。


 武装した帝国兵どもに襲い掛かる、市民に負ける帝国兵ではないものの。


 ここは『オルテガ』、複雑に入り組む道にも市民は詳しい。


 どこからともなく現れて、帝国兵どもは詰め所に火をかけられていく……。




「あ、あいつらあああ!!ひ、火をつけやがったのか!?」


「物資もある!!燃やさせるな!!消せ!!」


「く、くそ……なんてことを……ッ。火など、消している場合ではないのでは!?」


「だが、食料も燃料もある、矢もある……籠城戦をするには、これらを失うわけにもいかんのだ!!」




 ―――戦術が目指すところの差があった、『攻撃』と『守備』は大きく異なる。


 どちらが正しいというわけでもないが、『守備』の目指すのは確実さと堅実。


 保守的で反射的で、挑戦するという行いとは全く違うものだよ。


 後手に回る宿命的な弱点があり、それに呑まれれば愚鈍ともなる……。




 ―――籠城戦をしなければならない、という強迫観念は放火に弱かった。


 メダルド・ジーを経由して、『オルテガ』市民に入れ知恵していたのがガンダラだ。


 彼はソルジェの副官らしく、さまざまな仕事を成し遂げている。


 ソルジェの戦術を補うためには、どんな細かなことだって企画していたよ……。




「火の手が上がりましたな。帝国兵どもは、物資を守りたいと願う」


「……それで、攻め込む戦士たちへの対応が遅れちまうってことかい。戦というのは、性格が出るもんだなあ……あいつらの戦術が持っている性格そのものに動きやがる」


「ええ。それを修正するのも、現場の指揮官の機転というものですな。しかし、敵には、それが不足してしまっている」


「……そいつも計算済みということかい。アンタは、スゲー男だよ、ミスター・ガンダラ。ストラウス卿の部下じゃなければ、ヘッドハンティングしていたところだぜ!」




 ―――冷静な無表情で、ガンダラは誉め言葉に一礼だけを返した。


 元・人買いの商人は理解している、どれだけガンダラがソルジェに忠誠を捧げているか。


 無表情のまま、忠義ある者は地図とにらめっこする。


 敵の動きをイメージしながら、視線を北にある軍港へと向けた……。




「船と港を、放棄するようなことをしない。戦力を集中させるためには、犠牲を出すのも止む無しのはずですがな……解せないところです」


「……どういうところがだい?」


「無策が過ぎるのですよ。傭兵に声をかけていた割りに、この戦に対する執着が、『オルテガ』を防衛しようとする意志が、あまりにも希薄なのです。末端の帝国兵こそ死力を尽くしてはいますが……将の意志が、あまりにも不在でして」


「……やられっぱなし過ぎるということか、リヒトホーフェンは。ヤツも……そうだな。この『オルテガ』を落とすほどには、戦上手のはずだろうに……」




 ―――ガンダラは戦術家だから、戦術から対戦相手の心も読解していく。


 リヒトホーフェンは無能ではなく、十大師団の将ほどでないものの有能な軍人だ。


 それが無策のままに不動を貫く態度が、あまりにも不気味に思える。


 ガンダラは口に出すかを迷いつつも、不確定な予想を賢い商人に告げていた……。




「まるで、自軍を崩壊させたいかのような振る舞いですな」


「……どういう、ことだ?」


「そのままですよ。リヒトホーフェンは、勝利にも街の防衛にも、興味がない。それどころか、自軍を死なせたいかのようにすら、見えてしまうのです。ありえないことであり、戦士として軍人として、いえ、ヒトとしてもありえてはいけないことですがね」


「……しかし、そう、だな。兵を死なせるような動きを、ヤツは躊躇っていない。『ルファード』への反撃も、異常なまでに早く……兵士に『寄生虫』を入れていやがった。ヤツは、また、同じことをしたいのかもしれんが……それは手段では、ないのか……勝つための?」




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