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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その三十四


『GHAAAAOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』


 ゼファーの歌に合わせて、戦士たちが鋼を掲げ、歌を放つ!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


「戦いだあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」


「迷宮都市を帝国軍から解放するぞおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


 星の瞬く夏の夜を、戦いへの歌が揺さぶった。星でも落としそうなほどの熱量で、鋼と歌が暴れていたよ。


 行進が始まる。


 これまでは乱れた隊列であったが、ここから先は違う。


 オレが指揮を執れるからな。


 ミアとレイチェル連れてゼファーに乗り、空へと戻る。


「全軍、作戦に指示された通りに動け!!急ぐことはない!!疲れるからな!!落ち着いた歩みを使い、待ち構える帝国兵どもに見せつけてやれ!!」


 目と鼻の先にある『オルテガ』へと向けて進む『ルファード』軍の隊列は、完成していく。それぞれのリーダーたちが調整してくれているからでもあるし、ゆっくりだからでもあるんだよ。


「焦る必要はない!!オレたちこそが、勝者となるのだから!!こちらの作戦は完璧である!!全てが、そろっているのだ!!勇気も、力も!!我々に敗北する可能性は無い!!足音を、そろえろ!!地面を踏む戦友の足に、自らの足も合わせるのだ!!」


 歩調が、そろっていく。


 これが、いい。


 これが、起点になる。


 混沌を使うための、始まりだ。


 帝国軍の侵略師団とは異なり、わずかなブレがある。訓練で矯正し切っているものではないからだ。


 だが、このブレがいい。異なっていることが、違っていることが、いいのだ。それでもそろわせようとする行いが、結束を高めてくれる。


「皆の音を聞け!!足音に、違いがある!!当然だ!!誰もが、異なる体と魂のもとに、この戦へと臨んでいる!!それぞれに異なる、固有の人生があるのだ!!だが、その差は今では問う必要を失いつつある!!我々は、勝利を目掛けて歩いているのだからな!!」


 あらゆる種族の力を、集めるのだ。


「人間族も、エルフも、ドワーフも、巨人族も、ケットシーも……この場にいない種族たちも、今このとき同じ大陸で、同じ目的のために戦ってくれている!!我々ほど、孤独から遠い軍勢はいまい!!ただ一つの力ではなく、無数の力とつながっているのだから!!」


 鼓舞するための演説でもない。


 たんに真実を継げているだけにすぎん。


「我々は、究極にまで雑多な群れである!!それでもなお、示しているな!!我々の歩みは、ただ一つの目的のために融け合っているのだ!!これは確かに混沌であり、それと同時に大いなる可能性だ!!つい数日前までは、こんな軍勢が誕生するなど、誰も考えてはいなかただろう!!オレもだ!!とてつもない可能性が、実現しているのだぞッッッ!!!」


 敵対し合っていた者たちばかりではあるがね、それが偶然ではない一致のもとに集まっているのだ。


「我々は、強い!!我々ほどに、多くの反発し合うことが当然の力を、一つに束ねられた軍勢など、何処にいるのか!!軍隊の力とは、結束である!!我々は、その点においては、歴史上どの軍隊よりも、大きな結束の元に歩いている!!オレが保証してやるから、諸君も信じろ!!我々を、大陸最強の軍隊だと、心の底から信じろッッッ!!!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


「オレたちが最強だあああああああああああああああああああッッッ!!!」


「帝国兵どもを八つ裂きにしてやるううううううううううううッッッ!!!」


 歌う。


 勇ましい歌があふれて、夜を揺さぶり、『オルテガ』を襲う。


 帝国兵どもが慌ただしく準備を始めていた。上空から、見えているぞ。偵察したときに見た動きしかやれん。多くの駒を失ったリヒトホーフェンの貧弱な指揮系統は、過去の鍛錬に頼るほかない。


 数では、そう変わらん。しかし、質が違い過ぎるな。そちらは、あまりにも可能性が貧弱で、選択肢というものが見つけられない。


『じゃ、ジャン・レッドウッド!!い、行きますうううううううううッッッ!!!』


 声を裏返せながらも歌い、『巨狼』が猛烈な勢いで地上を駆け抜けていく。強烈な『囮』となるためにな。『オルテガ』の東側で暴れたばかりだ。城塞を飛び越える印象が、帝国兵どもには刻み付けられている。


 それを突くのだ。


 ジャンに引き寄せられるように、帝国兵どもの戦力と、視線が動く。魔眼を使っちゃいないが、知覚することが出来た。戦場など、数えるのを忘れたほどに多く、味わっているからな。経験が、知覚を鋭く磨いてくれている。


 見えずとも、感じ取れるのだ。


 鉄靴で、伝える。オレたちは、南側の空に君臨しておけばいい。破城槌と、それぞれの攻撃部隊が移動を完了するまで、星空に座して、敵どもをにらみつけて動きを殺しておけばいいのだよ。多くをすることはない。我々は、とても有能な群れだからだ。




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