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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その十


 建築家のドワーフは、さすがに疲れ切っていたからね。そろそろ休ませてやることにした。体力の証明を果たしたドワーフと共に、彼のことを御者台から降ろすと、そのまま馬車のなかへと運び込んだ。


「すみません……一休みしたら、また何かしらお役に立ちたいです。城塞の崩し方のコツも、周りのドワーフたちに……彼らも、土をいじる作業に、慣れていますから」


「地獄の廃鉱で、さんざんやらされたからな!まあ、現場仕事は、任せておけ。鋼を振り回すだけが、戦じゃないってことは、横で聞いてて自覚出来たしな……オレたちは、そういう方面でも、貢献できるだろうぜ。本当は、前線がいいんだが……」


「全員で効率的に役割分担をこなせばいい。作業する『仲間』たちを守る男もいれば心強いじゃないか」


「敵の群れに飛び込んで暴れたいが、まあ、今回は、それでもいい。回復したら、次の戦は、最前線だ。思いのほか、体調は、良いようだしな」


「故郷には戻らんのか?」


「気にはなるが、敵から逃げるのもつまらん。どうせ、アンタはまだまだ先も戦うんだろう?」


「帝国を倒すまではな」


「オレも、似たようなことをする。いい鋼を手に入れて、帝国兵どもを殺しまくるぜ。弔い合戦をするんだよ、満足が行くまで」


「ククク!……そうしてくれるのならば、ありがたい。戦力は、いつでも不足しているからな。帝国軍というものは、大陸のどこにでもいやがる」


「……蟻のようにうじゃうじゃとな」


「そろそろ、君も休むと良いぞ。体力を回復しておけ。遠からず、戦となる」


「……おう。干し肉をかじって、寝転がっておこう。戦になれば、勝手について行く」


「止めんさ」


 馬車から離れて、ゼファーを呼んだ。『ルファード』軍との合流が始まったからな。馬車隊の護衛を、他の戦士たちに引き継いで、ガンダラの元へと向かう。


『……がんだら、はっけん!』


「降りてくれ」


『らじゃー!……からの、ちゃーくち!!』


 ガンダラはゆっくりとした歩調でやってくる。ドワーフたちとの合流を、休憩のタイミングとして選んでいたのさ。進軍そのものが止まり、夕飯の支度が始まっていた。


「お疲れ様です、団長。どうやら、作戦は上々のようですな」


「完璧とは言わんが、報告していた通りの戦果をあげたぞ。さらに言えば、共有しておきたい情報も得た」


「ふむ。それでは、こちらへ。ミーティングとしましょう。メダルド・ジーも含め、リーダーたちがそろっていますからな」


「ああ」


 夏の夜が始まるなかで、我々は仕事熱心だったよ。城塞にまつわる脆さの報告は、場を沸かせる話題となった。冷静沈着なガンダラが、情報漏洩を防ぐために、はしゃぐ若手の戦士たちに釘を刺したりもする場面もあったがね。


「敵は密偵を使うかもしれませんので、重要な作戦ほど、情報の管理を確実にしてください。こちらは雑多な混成部隊ですので、忍び入ることは、それほど難しくもありませんからな」


 多くの勢力が参加する集団には、変装して合流する必要さえもない。帝国兵が市民の服を着こんで、『オルテガ』から帝国軍を追い出すためにやって来た義勇兵だと宣言すれば、素直に我々は歓迎している状況でもあった。


 敵が入り込むリスクは、十分にある。


 それでも、密偵が紛れ込むリスクを許容して余るほどに、深刻な人手不足もあるわけだよ。戦いにおいて重要なのは数だからな。絶対とは言わんが、ほとんどそれに等しい。


「義勇兵も、かなり増えているな」


「……ありがたいことにな。敵の動きも、消極的だ。これから、さらに消極的にするぞ。『黒羊の旅団』と、リヒトホーフェンが契約しようというのがハッキリとしたのなら、狙いどころも見える」


「頼むぜ。あいつらの本隊は、守銭奴が仕切っていると有名だ」


「……商人の腕の見せどころだよ。まあ、直前まで、交渉しておくさ」


 敵を減らすための策は、進んでいた。


 会議もすぐに終わり、我々の進軍は再開する。


 体調の悪いドワーフを乗せた馬車は『ルファード』へと向かい、体調が悪くても『オルテガ』での戦に同行したいと申し出たドワーフは全員、認めた。


 もちろん、ワーカホリックなオレは休むこともないまま、新たな仕事へと出かける。『オルテガ』を空中から偵察するためにな。御者台の上にいて、歩いていないし、昼寝もしたんだ。まだまだ眠気も来ない。


 連れて行くことを選んだのは、ミアとジャンだ。レイチェルも誘おうとしたのだが、海上を進む船団と合流することを望んだよ。


「『寄生虫』どもは、かなりのしつこさです。『懲罰部隊』のような者が再び現れないように、船を護衛する者がいた方が良いでしょう。大きな船を沈められでもしたら、人的被害以上に、士気を崩される」


「ああ」


「連戦で、疲弊していますもの。船で運びながら、体力を温存している戦力も、大きな決め手となるでしょう。それでは、行ってまいります。リングマスターたちもお気をつけて。ゼファー、皆をよろしく」


『うん!れいちぇるも、きをつけてねー!じゃあ、いくよー!!』


 働き者な声を響かせて、ゼファーは星の光る空へと戻った。




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