表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3931/5096

第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百九十九


 マルド・メロは戦闘面でも、それなりに賢さを使えるようだ。こちらの策を、見抜いていたか。あるいは、十分な距離に退避してしまった馬車隊を見ることで、理解したのかもしれない。


 どちらにせよ、こちらの思惑通りにはなった。


『馬車を逃がせば、義務は放棄するのかな?』


「いいや。教えてやろう。『ギルガレア』が姿を見せた経緯はこうだ。今の貴様にも似た巨蠅を退けたあと、第九師団の生き残りの軍船が乗せていた『巣箱』と一つになり『変異』した軍人が戦場で暴れた」


『ああ、彼か。第九師団は、お前を恨んでいた。『亜人種びいきの邪悪な男』だと。復讐のためならば、どんな選択だってしただろう……しかし、リヒトホーフェン伯爵は、『巣箱』まで、持ち出したのか……』


「気になることがあるのなら、語ってもいいぞ」


『……ごめんだね。そちらが、義務を果たしてからだ。『ギルガレア』は、何をした?』


 予想がついているようにも見えるし、おそらく、その通りだろう。だが、確認したいと願っているのさ。正確に状況を把握して、『それまでになかった新しい存在』とやらを創り出すための力の研究材料にしたい。


 ……構わんさ。どうせ始末することになるのだから、情報をくれてやろう。


「戦場が混沌としたとき、『ギルガレア』が不意に出現した。あの神は、帝国兵の死体から、『火烏の軍勢』を生み出した」


『お、おお!!やはりか……敵対する『蟲の教団』の力に、対応しようとした。テリトリーに近づかれたと考えたから、罰するために、現れた……っ。千年の沈黙を破り!!ああ、予想されていた通りだね』


「誰に、予想されていた?」


『知りたければ、顛末を話せよ』


「……『火烏の軍勢』は、巨大な燃えるカラスの群れだ。『寄生虫』そのものを攻撃するように、『巣箱』と融合していた男に群がり、またたく間に焼き尽くしてしまったぞ」


『罰を、与えた』


「ああ。罰を与え、『寄生虫』を排除したと考えたのだろう。こちらとは、接触することもないままに、とてつもない速さで『ルファード』から去った」


『……南の方角に、だね?』


「……その通り。そこが、『ギルガレア』のテリトリーというわけか」


『そうだ。『ギルガレア』の片割れは、南の森林に君臨していた。元々は、南のエルフたちの神だ……『蟲の教団』が設立されて、神も……『ギルガレア』も二体になったようだがね』


「それは、森のエルフのベテランにしか伝わらない情報だが……『蟲の教団』にも、同じ情報が伝わっていたわけか」


『おそらく、そちらより明白に残っているんじゃないかな。発掘された彼らの聖典には、多くのことが書かれていたんだよ』


「発掘か。『オルテガ』で、リヒトホーフェンは、それを見つけたと?」


『そうだ。リヒトホーフェン伯爵にとって、『蟲の教団』の聖典を見つけたことは、あまりにも大きな転機となった。彼は、自分が求めている力を……『創造的な変異の力』へと至る道を、照らしている教えと出会えたんだよ』


 邪悪さを漂わせるほどに不気味な『骸群の巨蠅/ベルゼブブ』の姿を、『創造的な変異の力』とやらの産物と思えば、この連中の狂気の深刻さと、間違いっぷりが再確認できるぜ。


『これで、また一つ、証明したことになる。我々の予想は、当たっているのだよ。『ギルガレア』が出現した。『火烏の軍勢』を引き連れて……『ルファード』の街は……火の海に?』


「いいや。すぐに帝国軍は鎮圧できていた。焼き尽くす対象は、限定的だった」


『……ギー・ウェルガーを倒せる怪物がいたか。誘導する対象は、『懲罰部隊』の男か、巨蠅だったが……』


「どちらも、すぐに倒したからだろうな。『火烏の軍勢』は、対立すべき敵が少なく済んだ。おかげで、被害は、最小限になったんだろう」


『……予想外のファクターもいたわけだが……実験結果そのものは、我々の考えを支持してくれているな……『ギルガレア』が出現したことが、大きい』


「あの神さまが出ると、何か、おっちゃんに良いことがあるの?」


『あるとも。『聖餐』の力は、『ギルガレア』がより多くこの世界に出現することで増したという。そういう権能を、『ギルガレア』は持っているんだよ。事実として……呪毒を大量に浴びたというのに……これほどの力を出せている。毒が、大気で抜けただけじゃない。確実に、『ギルガレア』の出現の恩恵を受けているんだ』


「……『時間稼ぎ』は、お互い様だったか」


『ああ。私の作った呪毒以外にも、何かの毒を盛られていたからね……エルフが、いるところを見ると……『ブランガ』だったか?』


「ルチアじゃなくて、私が毒弾を撃ち込んだんだよ。『ブランガ』たっぷりのね」


『『寄生虫』に対して特別効果の高い毒を、二種類か……苦しかったよ。でも、空は、羽を得た私を、祝福してくれているようだ!!すっかりと、毒は抜けた!!……晴れやかな気持ちだよ。兄と共に……『ゴルゴホ』の実験台から生き抜いた日よりも……『ゴルゴホ』に取り込まれたままの日々から、ようやく自由になったあの夜よりも……兄を感じる、自由を感じる!!セザル兄さん!!私たちは……本物の自由を得た!!』


『……『どーじぇ』、あいつの、のろいが……』


「ああ」


 異常なまでに活性化している。『呪いの赤い糸』が、暴走するように。セザル・メロの幻影の形を、赤い糸どもは作り上げ……そいつと、巨蠅の頭部から突き出したマルド・メロの上半身が、一つに融け合っていく。


 魔力が、昂っていたな。情報収集のために使える時間は、もうないようだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ