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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百九十六


「『寄生虫』が教えてくれているのに、わざわざ、オレたちの目の前に現れる。兄の仇を討ちたいわけだ。そういう感情は買ってやれるぞ」


『私は、それほど単純ではない。兄も、ライバルの一人ではあった。『ゴルゴホ』から離脱する前も、後も、競争しながらも……いや、それでも支え合っていたか』


「『ゴルゴホ』を離脱して、リヒトホーフェンと合流した理由は?」


『メリットの一致だよ。我々は、医学の革新を求めている。この手で、新たな力を世界にもたらしたい。リヒトホーフェン伯爵は、その力を求めていた』


「もっと教えてくれるか?殺し合いの前だ。情報交換をしてもいいんじゃないか?」


『……ほう』


「知りたいことがあれば、何でも教えてやるぞ。オレは寛大な男のつもりだ」


『知りたいことが、あるとでも?』


「あるだろう。兄貴の死にざまは知っているのかもしれないが、『ルファード』での戦いを知っているか?……面白いヤツが姿を現したんだぞ」


『面白いヤツ……』


 好奇心旺盛な学問の探求者にも、戦士と同じように悪癖があった。知的な欲求に逆らえない。知りたがっている。兄貴の呪いを無視するかのように、オレの放った言葉に釣られていた。


「その蠅も姿を見せた」


『それは、計画として聞かされている』


「『ギルガレア』が姿を現すことも?」


『……ッ!?……ほう、それは、初耳ではあったな』


「まだ情報が伝わって来ていないんだろう。貴様らは、南のエルフのテリトリーに進軍するための準備に夢中となっていたからな。あるいは……リヒトホーフェンは、それについてまで教えてやる気がなかったのかもしれん」


『戦場での情報を、つぶさに察知することなど不可能なだけだ。動くことのない植物からだって、真実を導き出すのに大きな時間がかかってしまうものだからね』


「かもしれん。だが、最新情報だ。貴様が知らない罪科の獣、南のエルフたちの神、『ギルガレア』が『ルファード』での戦いに姿を現した。知りたいのなら、教えてやるぞ。戦いが終わった後では、貴様は聞くことが出来ん」


『殺すからな、お前を』


「オレの見解は、逆だがね。どちらにせよ、互いから知りたい情報を聞き出す機会は今だけだ。そして、互いの情報を独占することもやれる。リヒトホーフェンが密偵を使って『ギルガレア』の情報を集めたとしても、実際に『ギルガレア』を見たわけじゃない。オレは、今朝、その神と遭遇したのだ」


 交渉術だ。情報収集もしたくはあるのだが、それと同時に、時間稼ぎもしたい。地上ではレイチェルとジャンが『赤黒い死者兵/レッド・デッド』と交戦中だ。順調な経過と言っていい。


 馬車隊も、廃鉱から離れつつある。このまま、コイツが介入しなければ、無事に逃げ切れる。被害が、出ているからな。救える可能性があった女と子供を、助けられなかった。罪滅ぼしに近い感情に基づくものだ。助けたい。これ以上、死なせたくはないのだ。


「どうだ?……研究熱心な貴様の心は、求めているだろう?」


『口が上手い男だ』


「事実を指摘することは、とても簡単だというだけのことだよ。貴様は、研究者だ。欲しくないというのならば、このまま知らないまま死ぬがいい。それでも、オレは構わん」


 黒いマスクに隠されていない口もとが、物欲しさに歪む。セザル・メロよりも、丁寧さを感じるが、それでも同類だ。情報を欲しがっている。


「『ギルガレア』や『蟲の教団』の力を欲していたからこそ、リヒトホーフェンと組んでいるのではないか?」


『……こちらの契約の理由を吐く必要はないだろう。教えろ。『ギルガレア』は、何をしたというんだい?『ルファード』で、罪科の獣はどんな姿かたちを選び、どんな力を見せつけたという?』


「漆黒に揺らぐ姿。赤い瞳。背丈は、ヒトよりも大きい。身体能力も見事なものだ。ゾッとするほどに速く、常人では目玉を使って追いかけることも困難だろうな」


『……伝承通りか。戦に応じるときの『ギルガレア』だ。『蟲の教団』と戦うときも、その姿で現れた。指揮官であり、将軍であり、王でもある……どんな権能を使ったんだ?』


「興味深い力を発揮していた。しかし、ギブアンドテイクが基本だろう。オレは採取されるだけの薬草ではないのだぞ。欲しければ、ちゃんと与えてもらわなければな」


『……口車に乗せられたくはないが―――』


「―――それでも、情報を知りたいだろう。リヒトホーフェンのような男と取引するんだ。あいつが素直に多くの情報を与えてくれるはずもない。不安だろう?」


『信頼は、しているよ』


「兄貴が消えた」


『……お前が、殺したからね』


「メロ二人で交渉していた相手が、リヒトホーフェンだ。そんな男と、これからは一人で交渉することになる」


『……まあ、そうなる』


「一つ、教えてくれたな。他のメロはいない。常軌を逸したレベルの『寄生虫』の研究者は、他にいないというわけだ。少なくとも、『ゴルゴホ』からの参加者は、貴様ら兄弟だけだった」


『ふむ。沈黙は、金なりか。しゃべり過ぎているようだな、私は』


「いいや、しゃべり過ぎてなどいない。こんな洞察では足りん。オレの口を開きたければ、本気で『ギルガレア』の情報を教えて欲しければ、リヒトホーフェンの目的について語ってもらいたい。オレを殺せるつもりならば、教えてくれても構わんだろう」




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