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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百八十九


 ジャンは力なくしっぽを下げてしまうが、周りのドワーフたちも状況を理解してくれてはいた。


「ソルジェ・ストラウスの仲間か……竜に乗って暴れ回っているんだから、しゃべる狼がいたところで問題ではあるまい」


「た、たしかに、その通りだよな?」


「不思議な御方だ……」


 納得する声のなかを歩き、ジャンのそばに向かう。ルチアのため息も聞きながら。


「ストラウス卿と一緒にいると、不思議なことにも慣れちゃうのよね」


 刺激的な日々を送れるということは、退屈な人生に囚われるよりは有益なことだと信じることにした。


 楽しいことだぜ。ジャンの口が新鮮な敵の血で赤くなっていることだって、戦士の本能をくすぐる事実だよ。


「ジャン、敵と交戦したのか」


『そ、その。はい。は、破壊工作を済ませたあとで……て、敵の歩哨と遭遇してしまったんです。れ、レイチェルさんと連携して、全員、殺しました』


「レイチェルは、どうしたの?」


『て、敵の偵察に向かうと……っ。て、敵は、同じ場所に集まっているみたいですから。帝国兵どもも、ま、マルド・メロのにおいも、同じ場所にいて……そ、そこを、偵察に向かうと』


「いいタイミングで動いてくれる。こちらは、ドワーフたちを牢から出せたからな。あとは、馬車のところまで移動すれば逃走準備は完了。帝国兵どもに追跡されないために、妨害も仕掛けておかなくてはならん。可能ならば、全滅させておきたい」


『が、がんばります!』


「そんなにがんばらなくても、この呪毒でどうにかなっちゃうかもだから。急ごう」


「ルチア、ドワーフたちを馬車のところまで導いてくれるか?」


「了解。前線で戦いたいところだけど……役割分担は、大事」


「『仲間』の命を救い出すことも、大きな仕事だ。任せたぞ」


「……ええ!こっちは、任せて。無理はしないようにしてよ?……呪毒は、見境なんてしてくれないんだから」


「上手くやるさ」


 猟兵らしく笑顔だ。ジャンを見る。『狼』のアタマは、こちらの言葉がなかったとしても、すべきことを察して縦にブンブンと振られていたよ。


『こ、こっちです!れ、レイチェルさんのところに、案内するので、ついて来てください!!』


「ああ」


「行くよ!」


 ジャンが走り出し、オレとミアが追いかける。『竜鱗の鎧』は、なめらかに動いてくれたから、二人に遅れることはない。


 馬車置き場の近くまで道を戻ると、ジャンは右折した。


『こ、こっちです。敵と、れ、レイチェルさんは、すぐ近くです』


 通路を二度ほど迷いなく曲がり、ジャンの先導によって敵地へと到着した。ドワーフたちの監禁場所よりも、さらに広い地下空間がそこにある。帝国兵どもが、整列していた。そいつらを見下ろすような位置に、黒いマスクと黒いローブを身に着けた男がいる。


 つい先日、ぶっ殺したばかりのセザル・メロと『色違い』でそっくりなヤツだ。帝国兵どもを並べて、壇上から『演説中』らしい。


「―――諸君らには、エルフどもの領域をくまなく探索して欲しいわけだよ。連中の薬草学は、興味深くもあるからね。あらゆる植物種を確保することを、心掛けて欲しい!もうすぐ、焼け野原になってしまうかもしれない土地だからこそ、植物をコレクションしておくことは学術的な価値も高いのだよ!」


 学問に熱心な男ではあるようだが、感心できないぜ。焼け野原にしてしまうのは、他ならぬヤツ自身でもある。リヒトホーフェンの命令だろうが、『寄生虫』を研究し、その脅威をこの地域に広げているのはメロどもなのだから。


「……お兄ちゃん、あそこ、レイチェルがいる」


「……ああ。合流するぞ」


 帝国兵どもの列の背後にある高く積まれた木箱の裏に、レイチェルが身を隠しながらも我々を手招きしていた。


 『人魚』の手に引き寄せられるように、猟兵三人は無音を帯びたまま近づいていく。


「……リングマスター、ミア、無事で何よりです。その表情は、目的を達成されたということでわね」


「……そうだ。ドワーフたちは牢から出せたぞ。今は、ルチアに引率されながら、馬車に合流しようとしている」


「……理想的な状況ですわね。敵は、細かなミーティングをしています。どうにも、違和感がある」


「……どんな違和感?」


「……細かすぎる内容の指示を、長々とマルド・メロと思しき男がしているわけですが、帝国兵どもは異常なまでの集中力で耳を傾けている。リヒトホーフェンお抱えとはいえ、錬金術師であり、帝国兵の指揮官でもないでしょうに……国王でも相手にしているかのような集中。これは、異常です」


「……さすがはレイチェルだ。こいつらは、『寄生虫』の影響下にあるかもしれんのだ」


「……あら。困りましたね。殺しただけでは、終わりじゃないと?」


「……良いものを手に入れた。呪毒だ。もしかすれば、『寄生虫』を無力化することもやれるかもしれん。この空間を、密閉して……この呪毒を、焼き払えば……毒の煙が充満して、帝国兵どもごと、『寄生虫』を仕留められる」


『……ちょ、直接、戦うよりは早いかもしれませんね』


「……上の方に、窓が開いている。あれを、閉めないといけないね」


「……そういうアクロバットは得意です。指示を出してください、リングマスター。帝国兵どもを、皆殺しにいたしましょう」




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