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第7話 寝落ち

「えっと…冗談はよしてくださいよ、将軍。俺のどこに、姉さんと並ぶほどの特徴があるんですか?」


「この際、はっきり言わせていただこうか…今や風月殿は、同盟に入っていない我が星にとって唯一の残響対抗手段だ。今は君のお姉さんが君の技を模写(コピー)してくれたおかげでその者は2人に増えたが、それでも戦力としてとても貴重なことには変わりない」


「唯一の……対抗手段…?」


 俺は、街で店を開いていただけなのに…


「ついで、伝えておかなければならないことがもう2つある。どちらも、風月殿の格をこれ以上に上げるものだ。どちらを先に聞きたいかい?」


「どっちって言われても…どちらも良いことなら選ぼうにも選べないじゃないですか」


「確かに、君の言う通りだ。それでは、順番に伝えていくことにしよう…君は術を放った後に、その衝撃波で気絶した。その後の残響の変化については知っているかい?」


「姉さんから少し聞いた気がします…だんだんと消えていった、みたいなことを言っていた気が…」


「その通りだ。今までの常識では残響は完全に消し去る事は不可能で、傲慢(タンタロス)の胃の中に放り込むことでのみ星から引き離すことができると考えられていた。だが…」


「俺が…、文字通り核を消すことに成功したのか…」


 俺は、なんてことをしでかしてしまったんだ…こんなことになるなら、あの時にお客さんからの依頼を受けなければよかった。

 いや、それは違うな。むしろこの星を救うのに協力できたんだから、喜ぶべきだろう。


「そうだ。このような事は、この星系で最も残響の処置に詳しいと言われている歳星殿でさえ聞いたことがないと言っている…どうだい、これで君の異常さがわかったかな?」


「はい…なんだかもう、早く家に帰りたいです…」


「待ってくれ。あと、もう一つある…」


「なんですか…?」


「術を放った後、風月殿は衝撃波に当たって気絶したと聞いている。そして、君のお姉さん…真依殿が、魔術で結界を展開したにもかかわらず、街ではガラスが割れるなどの被害が相次いだ。どこかおかしいとは思わないかい?」


 ん?あの姉さんが作った結界でさえ、あの衝撃波は防ぎきれなかったのか…?それじゃあ、、、


「それほどの衝撃波でなぜ、俺は生き延びたんだ…?」


「そこだ。その観点でも、君はものすごく丈夫だということがわかった。もしかするとこの私よりも、ね。それらを踏まえて…」


「ちょちょ、ちょっと待ってください。さすがに情報量が多くて、頭がパンクしますよ…」


 え?俺は、めちゃくちゃ体が丈夫で?この星系の常識をぶっ壊して?星の唯一の残響対抗手段?


「曜玄。カズが混乱しているじゃない。この子は記憶系統が不安定なんだから、情報伝達は気をつけてくれって言ったでしょう?」


 どこから入ってきたのか、後ろを振り向くと姉さんがいた。というか今、将軍のことを呼び捨てした…?!


「すまない、真依殿。ちょうど今、君の弟君にすべての情報を与えたところだ」


「姉さん…これ、どういうこと…?」


「そうなるのも無理は無いわ。簡単に要約すると、『あんたは私と並ぶほどすごい強かったから、この星と協力をしてほしい』ってこと。まぁ私はオススメしない、ろくなことに巻き込まれないからね。しかも同盟に入ればあらかた片付きはするんだから、今すぐカズと協力関係を結ぶ必要がない…おそらく、裏の理由があるはず」


「ははは、真依殿にはいつでも見透かされてばっかりだ。その通り。私には、君に同盟に入るまでの間の残響処理をお願いしたい以上に重要な思惑がある。全ては、この星のため…」


 そう言うと、曜玄将軍は人が変わったような真剣な目つきになって、こちらを見た。


「君を他の星に取られないようにするため。このまま行くと、君はイガル星か太歳に吸収される。そうなった場合、その2つの星の権力が大いに上がり、この星系の権力バランスが壊れる…それは、この辺鄙なところにある星系で1番起こってはいけない事態だ」


「だから、同盟に入ったとしても入れなかったとしても、カズを所有しておくことで均衡を保つ…」


 曜玄将軍は姉さんのコメントにうなずきながら、1枚の紙を俺に差し出した。


「その通り。風月殿、頼む。私からの依頼、受けてはくれないだろうか」


 そこには、破格の条件が書いてあった。『もし残響の処理で事故を起こした場合、その全てを星が負担する』、『家やお金関係は全て星が負担する』etc……

 だが。俺が重要視したのはそこじゃなかった。


「もしこれに同意したら、俺の店はどうなるんだ…?」


 俺の質問に、後ろにいた姉さんが吹き出すのがわかった。将軍はこちらを見て、ゆっくりと微笑む。


「無論、今まで通りやっていただいて構わない。だが、こちらからの召集があった場合には、できるだけ速やかにその都度指定される場所へ来て欲しい」


 まぁそれなら…俺だって、街が残響によって壊れていくのは見たくないしな。


「いや、でも………うーん………よし、わかった。これにサインすればいいんですね?」


「ああ。その判断に感謝する、風月殿」


「あ、それと、もう一つこちらからも条件を出していい…?」


「ああ。何でも言ってくれ」


「その、『殿』とかの敬語をやめてほしい。普通に呼び捨てて『風月』って読んでください…俺からも敬語使わなきゃいけなくなるので」


 予想外のリクエストだったらしく、将軍は初めて俺に驚いた顔を見せた。


「それは…わかった、風月」


「よし、ありがとう、将軍!これで、契約完了だ!」





 俺たちはあののち、将軍とともに星都を回って楽しんだ後、早めに街へと帰ることにした。

 いくら被害額を国が負担してくれるとはいえ、俺が壊した以上、申し訳なさというものが生まれるものだ。

 街へたどり着くと真っ先に、俺と姉さんは残響があったその場所へと足を運んでみる。


 そこは、すごい騒ぎになっていた。

 俺たちが街の役所に連行された後のここの交通規制が解除されたらしいが、残響に触れた人が体の不調を訴えて病院に運ばれるケースが急増したらしく、周辺一帯が立ち入れなくなっていたのだ。

 俺は先ほど将軍からもらった紙に記されている将軍のサインを見せて、半ば強引に中へ入ってみる。


「うわぁ…この状態で規制を解除なんかするからよ。見るからにまだ、悪影響があるじゃない」


「運ばれたあとに死んだ人もいるらしい。これ以上広がる前に、核を潰せてよかった…」


「ほんと。他の人から見たら、ただガラスを割った変人だけどね」


「そんなことないよ。そんなことを言うなら、今夜の夕食は無しだよ」


「やめて…カズもだけど、ドタバタしていたせいでお昼を食べれてないの。夜ご飯まで食べれなかったら、私死んじゃう…」


「それは大変だな。それじゃあ、ご飯は俺だけ食べさせていただくよ」


「鬼畜…」


 話しながら歩いていると、家に帰って来れた。

 やっぱり、ここが1番落ち着くな。家に着くと疲れがどっと流れてきた。今日のことは一旦忘れて、明日の俺に任せよう…


「……だ……け………。ねえ、聞いてる?!」


 眠くなりすぎたのか、姉さんの声が霞んでいく…


「え、どうした?まあいいや、俺はもう寝る…おやすみ…」


「おーいカズ?!おーい!!」


 だんだんと姉さんの声が小さくなっていったのがわかった。渡月、姉さん、ごめん。今夜は、いい夢が見れそうだ…

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