第15話 気絶中と夢中
「風月殿…?」「カズ、あんた…」「風月さん…?」
俺の異常な行動を前に、3人は目を見張った。
無理もない。将軍は自国で最強の男に殺されそうになり、姉さんは弟が国の最高権力者を殺しそうになったのを目撃し、藤原はスパイ対象がありえない行動に出たのを必死に止めた。
どう考えても、俺はものすごいことをしてしまったのだ…
「あ……いや、これは……」
俺は咄嗟に弁明しようとするが、何から言えばいいのかが思いつかない。何を言っても誤解されそうなこの状況で、完璧に伝えるなど不可能なのだ。
「君は……風月なのかい?それとも、違う人物…?」
「俺は、渓凛璽風月だ。だけど…さっきの俺は、俺じゃない」
「カズ、さっきの剣…というか、何?何があったの?」
「俺も、よくわからないんだ…!急に声が聞こえて、気がついたら剣を振るってた……」
俺のその発言に、将軍は深く考えているようだった。やがて何かを決めたかのようにこちらをしっかりと見て、将軍は告げた。
「風月、何か辛いことがあるようだったら今日はもういい。真依殿、彼を家まで送ってくれるか?」
「ええ。だけど、カズ……あんた、本当に大丈夫なの…?あの剣といい、あの表情といい…どう考えてもカズらしくないわよ」
「うん……今日はもう帰って、寝てみる。曜玄将軍、申し訳なかった」
「私のことは気にしないでくれ。今は風月殿の安否が1番大切だ。ゆっくり休むといい」
「真依さん。私も、ついていきます」
「…………ええ、いいわ。それじゃあ曜玄、あとは頼んだわよ。この残響の処理は、後から連絡するわね」
「ああ。風月殿を頼んだよ」
「ふう、着いたわよ。とりあえず…あんたは奥で寝ていなさい。私は色々とやることがあるから」
「ああ。ありがとう、姉さん……」
あれから、だんだんと具合が悪くなってきた気がする。というよりかは、体が重いというか…
「藤原さん、あなたはここに残ってカズをみていて。これを押したら、すぐに私に連絡が行くわ。非常時は迷わず、押すのよ。私は戻って、曜玄と話があるの……信頼しているわよ」
「わかりました…!!風月さん、私がいますからね」
「2人とも、ありがとう……俺は少し、奥で寝る…」
「無理しないでね……それじゃあ、また来るわ」
「わかりました!」
姉さんがここから出ると、店は急に静かになった。俺は俺の部屋へ向かって、ベッドに横になる。
店の方で藤原が立てている物音以外に、音は一切聞こえない。
俺はだんだんと掠れていく視界で、だんだんとリアルになっていく右腕の痛みに耐えながら睡魔に身を任せていった。
「お前……何者なんだ……?」
こういう時、寝たら今までのことがフラッシュバックするとかなんとか。
そんな物語を読んだことはあるが…まさか実際に、俺が体験するとは思わなかった。
目の前には、俺が気絶した時に見たあの人物がいる……
「俺か?俺は………判断を間違えて、星間を巻き込んだバカだ。お前の時に、戻りたいよ」
「星間を巻き込むって、どういうことだ?お前は…………いや」
俺の部屋には、鏡がある。自分の写真だって見たことがある。自分の外見は、一通り知っているつもりだ。
その記憶で予想するに、こいつは……
「…………いや、俺は、何をしたんだ?」
「…………」
反応はない。何か、おかしなことを言ったか…?
いやまあ、目の前の人物を「俺」と呼ぶことも大概かもしれないが。
「賢いな………姉に全てを捧げたにしろ、まだほんの少しだけ脳には残ってたのか」
そう言って目の前の俺は体を捻り、至近距離で指鳴らし…俺が使っている調律らしき技を放ってきた。ただ俺と異なるのは、その指先から黒紫の光線が出てきて…
幸い夢の中だったからか、俺の体をすり抜けて後方で大爆発を起こした。
俺はそれを見て、冷や汗をかく。直撃したら、確実に死んでいたな…
「面白くないな」
「お前、さっきのやつとは違う……のか?」
「……………今、俺と話せていることを光栄に思え。あと数十秒で、お前は死ぬ……それまでの間であれば、話は聞こう。ただし、俺の気分で決める」
死ぬ?ここは、夢の中だぞ…?
「お前は、何者なんだ?」
「…………次」
「さっきの剣…!あれは、お前のものなのか?」
「これか?これなら違う。次」
「……さっきの俺に似たやつとはどういう関係だ?」
「つg………いいだろう、これだけ説明する。説明したら、ちょうどお前が死ぬことにしよう」
そう言って、そいつは空間に絵を描いていった。
「あいつは、運命に逆らった。その代償を支払ってもらっただけだ。星を壊すという代償をな………これで、説明は終わりだ。じゃあな」
は?いくらなんでも、短すぎる。それじゃあ、何にも伝わらないだろ!
「おい!運命ってなんだよ!星ってどこのことだ?!おい!!おい!!!!」
「うるさい……死ね」
そいつから、再び光線が放たれた。今回はそれが真っ直ぐに俺の目に向かって突き進み………
「はっ!!!」
俺の頭に直撃する前に、目が覚めた。よかった、死んでいない………
「大丈夫……?とてつもない声で、うなされていたけど」
ベッドの隣には、藤原が座っていた。俺は息を切らしながら、夢で見たことをかいつまんで教えてみた。
「………それも含めて、気絶した時のことは私から言っておくよ。また、風月が言おうとしたことで暴れ始めたら今度こそ危ないし」
「ああ。色々と、ありがとう……」
最近は色々と、疲れたな。寝たはずなのに、起きてもまだこれだけ倦怠感があるとは………
「キッチンって、使ってもいいの?いいのなら、適当にご飯も作るけど」
「ああ……やってくれると助かる。おそらくもうそろそろ姉さんも帰ってくるから、3人分……」
「帰ったよーー。藤原さん、いるー?」
「……風月って、姉さんのことだけはよくわかっているんだね」
いや、今のはたまたまで……そう言おうとすると、なぜか俺は右手が痛くなって後ろにのけぞった。
その勢いのまま、再びベッドに横になる。
「もう一回、寝る?それじゃあ、用意ができたくらいにもう一回来て起こすね」
「ああ…それじゃあ、そうするか。頼んだ」
藤原が出ていったのを確認してから、俺は手のひらを覗き見た。頼む。異常、ありませんように……
そんな願いも虚しく、手のひらには残響のような紋様が深く刻まれていた。




