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第11話 裏で行われる暗殺

 藤原の俊足によって10キロ先の街へとついた俺は、後ろから声をかけられた。


「カズ…酔わなかった……?」


「俺?俺は別に。もしかして、姉さん……」


「ええ。少し、休ませて……」


 いつも魔術のワープで移動しているからか、シンプルな速さには慣れていないみたいだ。

 俺はひとまず姉さんを椅子に座らせて、辺りを見回す。


 この周辺には、残響の侵食は見られない。もう少し南か…?それとも、通り過ぎたか?


「どう?私の俊足は」


「正直言って、めちゃくちゃ助かった。だけど、姉さんがこんな感じになっちゃって…」


 姉さんの状況を見た藤原は、苦笑いしながら姉さんの近くへ歩いていった。


「真依さん、だっけ?真依さん、とても強い魔術師だもんね。そりゃあこうなるか…よっこらしょ」


 藤原は姉さんの頭を胸に押し当て、一回叩く。


「これで、目が覚めたらスッキリしているはず…」


「それじゃあ、起きるまでの今のうちに将軍が言っていた残響を探してみるか…その前に、この周辺にあるのかな?」


「調律、してみたら?何かわかるかもよ」


「調律…?」


 調律って…何を調律するんだ?まあ、とりあえずは言われた通りにしてみるか。

 俺は手にタクトを持ち、目の前の空間に向かって一突きしてみる。すると、世界はモノクロになり…周囲の空からは、金色の光の柱が降り立っているのが見えた。


「どう?何かわかった?」


「うん……なんだか、光の柱が見える。多分、そこに行けば何かあるんじゃないかな…?」


「思った通りだ。それじゃあ、早速そこに向かおう!真依さーん。起きてください」


 あれ?藤原って少し前までは、姉さんを見ると少し怯えていなかったっけ?


「ん……あれ?気持ち悪くない……」


「姉さん、行くべきところがわかったみたいだ。藤原の言う通りに調律の力を使ったら、あっちの方の光の柱が見えるようになった…多分、あそこに行けば何かがあるんだと思う」


 姉さんは寝起きのあくびをしながら、大きく背伸びをする。

 あくびをするほど長い間寝てたか…?


「ふああ〜〜〜……本当に…?それじゃあ、行く…?」


「うん。この状態だと世界がモノクロになってよく見えないから、案内してね」


「私には、どこに行けばいいのかわからないんだけど…?」


「まあまあお二人とも。そんなにイチャつかないで、まずは行ってみたら?」


「イチャついてない!!!」






「やあ。久方ぶりだね、歳星殿」


「久しぶり。……といっても、つい最近会ったでしょう?今日は何?私をプライベートで呼び出すなんて、相当な話題があってのことなんでしょうね」


「ああ。歳星殿も、きっと手放せないような話題だ」


「あら、冗談よ、冗談。本当にそんなことのために呼ぶなんて……それで?その話、聞かせてもらおうじゃない」


「……風月殿のことだ。彼のことを、歳星殿はどれほど知っている?」


 曜玄の言葉に、歳星は黙った。その後ろには銃を持った暗殺者が数人、歳星を囲むようにして銃口を向けている。


「………意味があると思ってやっているの?これ」


「もちろん、君には意味がないことを知っている。だが、君の記憶に対しては効果がある」


「あら。そうであれば、私から情報を取り出してから殺さないといけないわ。でも、曜玄。あなたは、それを持ち合わせていない。こんな手段を使おうとした時点であなたの負けよ」


「何か勘違いしているようだ。私の手には、今やこの星系で最強の姉弟となりつつある2人がいるのだよ。彼らは君が思っている以上に単純で、そして強い」


「確かに単純なのは同意するわ。未だに気づいてないんだもの」


「…………スパイにかい?」


 その言葉を聞いた歳星は、フッと息を漏らす。

 悟られていたという驚きと安堵が、彼女を支配した。


「どうやら彼女のこと、見てくれているみたいね。どうするの?今ここで、私を殺す?」


「…………そうさせてもらおう。すまなかった、プライベートの邪魔をして」


 

 その部屋には、乾いた銃声が響いた。曜玄の靴を、赤い血がだんだんと飲み込んでいった。



「急に連絡をしてすまない、真依殿。こちらは処理などがあるから手短に言う。一回で聞き取ってくれ」


「………何?しょうもないことだったら、切るよ」


「歳星殿が、スパイを認めた。藤原氏…彼女は確実にスパイだ。今までの対応同様、いつでも殺せるようにしておいて欲しい」


「『今まで』…ね。私が初めて人を殺したのは、曜玄。あなたの護衛なのよ?」


「ああ、信頼している。今回は、数時間も経ったらまた歳星殿が復活するようだ。動きがあるとしたら、その時かもしれない」






「……えさん!おい、姉さん!」


「え…なあに?」


「大丈夫か?口は動いていたのに声も出してなかったし、直立不動だったし…具合が悪いなら言ってくれよ?」


「大丈夫。少しぼーっとしてただけ」


「ぼーっと、ねぇ…まあいいや。光の柱の元についたよ。ここが、柱の発生源だ」


 見るとそこには、見事なほどの大きな穴が空いていた。

 調律が反応したと言うことはやはり、これは残響によるものなのか…?


「ここね…そりゃあこうもなっていれば、曜玄も私たちを動員するか。さあカズ。あとそれから、藤原さん。飛び込む準備はいい?」


「え、ここ、飛び込むの?!」


「当たり前でしょ。標的も見えないのに、どうやって術を当てろって言うの?」


「いやまあ、それはそうなんだけど…ちょっと怖いっていうか、不気味っていうか」


「ほんっと、勇気がないんだから。それじゃあ、私は先に行ってるわよ。私に受け止めて欲しい人がいたら、言ってね〜」



 そう言うと、姉さんはすっと穴に向かって身を投げた。みるみるうちに暗闇へと吸い込まれ、すぐに姿が見えなくなっていく。


「ええ………どうしよう?」


「でも、行くしかないよな…ええいままよ!!」

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