第10話 藤原、便利!
「………厄介ごとが、一つ増えたみたいだね」
「……………」
これが過去を表しているのか、はたまた未来を表しているのか…
どちらにしろ、調律師である俺には多少なりとも関係しているかもしれないから、気をつけろ。将軍は、そう言いに俺をここまで連れてきたんだろう。
「とりあえず、今曜玄が言った内容に関しては後々ゆっくり考えるとしましょう。今優先すべきは、藤原さん…」
「藤原…誰のことだい?そんな名前の人は、聞いたことがないな」
やっぱり、将軍も聞いたことがないのか…それなら、本当に彼女は歳星将軍に命じられてここへ来たのかもしれない。
「将軍。俺たちとあった時に、俺の隣に知らない女性が立っていただろ…?そいつの名前が、藤原だ。彼女は、自分のことを歳星将軍に命じられて俺の援助に来た、と言っている。今はまだ正体も何もかもが掴めない状況だから、できるだけ情報の共有はしておきたくて」
「藤原氏。やはり名前からして、私の元から送った者ではないことは明らかだが……おそらく、そんな堂々なことをする将軍といえば歳星殿のみだろう。彼女のその言葉は、ひとまず信じてみよう。他に、何か言われたことはあるかい?」
「他には、まだ…」
そう言いかけた俺は、忘れていた藤原が言った中で1番不審に感じた言葉を思い出した。そうだ、この言葉が…!
「いや、最後に一つある。彼女は、こう言った。『調律って危ないはずだけど…意外だね。変わったんだ』………考え過ぎかな?」
「『変わった』か…こう聞くと、昔の調律をその目で見ていたほどの長生きであることは分かったが………もしかすると私が見たのは過去の世界で、それを目の前で目の当たりにしたのが藤原氏、という可能性もありえる」
「星系一の戦力の持ち主が、前回の第4次残響侵攻を目の前で止めた人を手の内に引き入れている……こう見れば、対抗できそうにないわね」
「何を言っているんだい?こちらには星々を渡り歩く魔導士と、星系一の戦力の持ち主が恐れるほどの才能を持っている人がいるじゃないか。勝ち目はなくとも、勝ち筋はある」
みんな、俺に期待し過ぎているな。俺でさえ、調律の全てを理解していないというのに…
「戦う前提なのか…平和に行きたいけどな」
「あくまで可能性の話だ。とりあえず、私は歳星殿を招いて真意を図っておく。風月と真依殿は、藤原さんを上手く利用して任務を進めていってほしい……南の町で、残響が確認されたそうだ」
今までは長い間見なかったのに…いきなり、こんな頻度で出るものなのか?
「ほんと、疲れるわね……曜玄が見た世界のことは、こっちで勝手に演算しておくわ。結果が出たら、すぐに知らせる」
「ああ、ありがとう。風月も、くれぐれも気をつけてくれ。君が、この星の希望なのだから」
「……分かった。これからは、最善を尽くすよ」
「遅かった…!私のことを置いて、どこかへいったのかと思った…!」
どう見ても藤原は普通の人間だ。この人が前残響侵攻を止め、今はスパイをしているのか…
「ごめんな。将軍と少し話をしてきたんだ、最近現れたことについて…」
「最近現れたって言えば……この星、確か残響が最近現れ始めたんだよね?曜玄将軍はまだ若いのに、重荷がまた増える…可哀想な将軍だよ、ほんと」
あ。そういえば将軍から、南に行けって言われたな。町は指定されなかったから、南のとこに行けばいいのかわからない…
まぁとりあえず、言われた通りに行ってみるか。
「藤原。俺はこれから南のほうに残響の侵食を食い止めに行く。どうする?………っていっても…」
「もちろん、ついていきますよ!私は、風月を助けるために来たんだから!」
「だよな……姉さんはどうする?正直前みたいなことが起こりそうだし、一緒にいて欲しいんだけど…」
「一緒に行く。カズの言う通り、まだ1人でやるには危なすぎる。人を殺しかねないわよ」
「わかった、ありがとう。それじゃあちょっくら、南へ出発しますか!」
俺は道を踏み出した。初の残響討伐任務…!成功させたい。
だがその1歩目は藤原の足に引っかかり、転ぶ結果で終わった。
「藤原、お前何して………え?」
彼女は来ているパーカーを脱ぎ、道端に脱ぎ捨てた。
「さて、ここで問題です。風月の支援をしろといわれた私ですが、主にどんな支援をすることになっているでしょう?」
「さあ?戦闘とか…?」
「戦闘はカズだけで十分。おそらくそれ以外…食事、移動周りのことじゃないかしら?」
「風月のお姉さん、大正解!私は俊足を持っていて、目的地さえ決めれば一瞬でも移動できるよ!」
「………すごいな………」
だが今は、その肝心の目的地がわからない。とりあえず、適当に5キロずつ進んでいくか。
「それじゃあ早速お願いしていいか?まずはここから5キロ南で頼む」
「うん、わかった。ただし、一度に運べるのは1人だけだよ!まあ移動自体が早いから、2人でも1秒もかからずの終わるけどね」
「ああ、大丈夫だ。運んでくれるだけで嬉しい」
俺は言われた通りに藤原の背中に抱きつく。目を閉じて再び開いた瞬間…あの街とはまた少し違うところに来ていた。
これが、俊足の力…街の建物を見ながら感嘆していると、後ろから声をかけられた。




