第一章『荒野の少年』③
空気が凍る。
アブソリュートの紅い瞳が、俺だけを見つめていた。
「何故、貴様の章は読めぬ。」
意味が分からなかった。
章が読めない?
何を言ってる?
人生の章は、誰もが持つものだ。
読めないはずがない。
「……ユウ。」
震えた声。
振り返る。
ミアだった。
顔が青い。
手にした《クロニクル》が激しく震えている。
「ミア?」
「おかしい……こんなの、記録にない……。」
記録にない。
その言葉に、初めて嫌な汗が流れた。
ミアの未来視は外れない。
小さい頃からずっとそうだった。
転ぶ時も。
怒られる時も。
俺が無茶する時も。
こいつはいつも知っていた。
だから。
知らない未来なんて、初めてだった。
「だったら作ればいいだろ。」
ガイが前に出る。
大盾を地面へ叩きつけた。
轟音。
「未来がないなら、俺たちで作るだけだ。」
豪快に笑う。
この人は昔からそうだった。
二つ年上。
兄貴でも親でもない。
でも、誰よりも背中が大きかった。
「まったく。」
隣でレオンが剣を抜く。
銀の刃が夕陽を反射した。
「面倒事を引き寄せる才能だけは、一流だな。」
「褒めてんのか?」
「馬鹿にしてる。」
「おい!」
「だが。」
レオンが笑う。
珍しく。
本当に珍しく。
「退屈しないのは嫌いじゃない。」
あぁ。
そうだ。
俺たちは無敵だった。
仲間がいた。
笑い合えた。
だから。
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
人生に終わりがあることを。
別れの章があることを。
そして。
この戦いが。
俺たちの第一章を終わらせる戦いになることを。




