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第2章 「境界のほころび」④

あの出来事のあとも、世界はすぐには変わらなかった。


変わらないふりをしているだけかもしれないが。



ユウたちは、いつものように街の外へ出ていた。


理由は単純だ。


「残滓の気配がある」


それだけで十分だった。



ガイは剣を肩に担ぎながら歩く。


「今日は軽いぞ」


「それ毎回言うよな」


ユウが返すと、ガイは少しだけ笑った。


「重い時は言わねぇ」



ミアは少し後ろを歩いている。


いつもより静かだ。



「来る」


その一言だけで空気が変わる。



森の中。


木の影が“少しだけズレている”。


そこだけ現実の密度が薄い。



「残滓だな」


ガイが前に出る。


だが今回は違う。



影が“形を作る前に崩れている”。


昨日のあれに似ている。


ただし小さい。


弱い。


未完成。



「これ……昨日のやつと同じ系統だ」


ユウが呟く。



ミアが小さく頷く。


「まだ“安定してない”」



次の瞬間。


影が“音”になった。


正確には音ではない。


“音になりかけたもの”。



ガイが踏み込む。


一撃。


剣は抜かれない。


柄で弾くように叩く。



影が崩れる。


だが消えない。


“形を変えるだけ”。



「普通の残滓じゃねぇな」


ガイが言う。



ユウが一歩前に出る。


その瞬間。


また、あの感覚。



“触れそうになる”。


昨日と同じ。



ミアの声が鋭くなる。


「ユウ、ダメ」



でも遅い。



ユウは影に触れかける。


その直前。



ガイが腕を掴む。


強く引く。



「それは昨日の続きだ」



影が一瞬だけ“揺れる”。


そして消える。



静寂。



ユウは息を吐く。


「……なんか、昨日から全部繋がってないか?」



ミアは答えない。


ただ視線だけが少しだけ揺れている。



ガイが剣をしまう。


「この世界、ちょっとずつ“壊れ方が変わってる”な」



その言葉に誰も反論しない。



街に戻る途中。


子どもが笑っている。


市場の音がする。


普通の景色。



でもユウにはわかる。



“普通の下に、昨日の続きがいる”。



ミアが小さく呟く。


「これ、まだ始まりじゃない」



ガイが聞き返す。


「じゃあ何だ?」



ミアは少しだけ間を置く。



「準備」

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