12章 王国離脱編 29話 久々の帝国
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王国の辺境都市ノスガンを朝出発して数時間・・・・帝国から来る馬車と数台すれ違うだけで何もない。
この地域はどちらの国の領地でもなく両国が管理する土地でもあり、街道から逸れて不審な動きをしているとどちらかの国の兵士に捕まるらしい。
それに野営も禁止らしいため、日没までに辿り着かなければならないらし・・必然的に歩いて移動している奴は不審者扱いになる。
街を出てからずっと監視されている複数の視線を感じる。最初は背後からだったのが、今は前からも感じる。
(・・探知系のスキル?・・違うな、監視系・・遠見のスキルか?)
陽が沈みかけ、帝国の街が見えてきた頃には背後から感じていた視線は、1つ2つと消えてなくなりしばらくしてから門へと辿り着いた。
「荷台に乗っている物は、全員降りて身分証を!」
門兵に指示に従い荷台から降りた時に、アリスの身分証を作ってないことを思い出す。
(やべ・・忘れてた)
すでに荷台から降りてしまい、門兵の男達にアリスを認知されてしまっている。
「ハル?」
「・・なんとかするよ」
最後尾にアリスと並ぶ。
門兵はメイド服に身を包むラニアとアメリアとカラを身分証を見る前に下心丸出しの視線で全身をゆっくり見た後にやっと身分証を見てリル達の前に移動する。
「獣人奴隷か・・」
そう呟きながら、今度は忌々しい視線で見て短時間で終わらせシェルとアルシアは帝国冒険者のため、パッと見ただけで終わらせる。次は、俺とアリスか・・・・。
ここでトラブルが起きて面倒になると、帝国移住計画に影響が出てしまう。
「・・男はお前だけか?」
「・・はい」
赤髪の俺と背丈が同じぐらいの男が俺の前に立ち呟く。そのまま帝国の冒険者ギルドカードを見せる。
「帝国冒険者ね・・あの獣人の女達はどうした?」
「えっと・・王国のいろんな都市に寄った時に奴隷商で購入した娘達です」
「好き物だな・・」
「まぁ・・そうまりますね」
男の視線が俺から外れてアリスに向く。
「お嬢ちゃん、15より上か?」
アリスは首を横に振る。
「あんた、この子との関係者か?」
「娘みたいなものかな」
アリスとは、同じ黒髪黒目のため顔は似てなくても親族ならば通用すると思い口にする。
「・・帝都で噂の勇者様と同じなんだな」
「そうなんですか?」
俺は惚けてみる。
「まぁ、今日帝国に戻ってきたなら知らないのは仕方ない。最近、国で召喚されたらしい勇者がの容姿がお前と嬢ちゃんと同じなんだと・・」
「そうですか・・」
「まぁ良い、もう行って良いぞ」
「わかりました」
荷台に乗り込み者を通過して無事に街に入ることができた。
「良かった・・」
「あぁ、一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったな?アリス」
「うん・・」
門を近くは大きな広場になっていて、そこから3方向に道が分かれているため通りの邪魔にならないよう壁沿いに馬車をラニアが止めてくれた。
「とりあえず、馬車を預けれるところを探さないとな」
「それなら、私に任せるのだ」
「アルシア?・・あぁ、そうだったね。ラニア、アルシアが知っているはずだから」
「わかりました。アルシアさん、お願いしますね」
「うむ・・ついてまいれ」
久しぶりに帝国に戻って来たことが嬉しいのか、アルシアのテンションが高くなっている気がする。その姿を見送りながら、今夜の宿をどこにするか俺は考えることにした。
ややあってアルシア達が戻って来る。
「ハル、ちゃんと馬車を預けれたぞー!」
「ん?・・あぁ、ありがとな、アルシア」
それから、宿探しに行く前にミオとミリナを呼んで俺はフードでケモ耳を隠させ、尻尾をスカートの中へと隠すように伝える。
「帝国は、獣人に対して嫌悪感が王国より厳しいから、ゴメンな」
「「 はい 」」
それから、初めて来た帝国の街並みを興味津々に見渡す王国生まれのカラ達と獣人シスターズが先を歩き、あの頃のように俺とアルシアとシェルの3人は並んで歩く。
「・・なんか懐かしいな、ハル?」
「そうだな・・帝国で2人に出会ってから遠中からマリアを拾って王国に連れて行く途中に、この要塞都市フェズドレイに来たもんなぁ〜」
「「 ・・・・ 」」
「どうした?急に静かになって」
「すまない・・ハル」
「アルシア、なんで謝ってるんだ?どうせ、マリアのことだろ?」
「・・うむ」
「ば〜か・・そんな器の小さい男じゃねーよ〜」
そう言いながら落ち込んでいるアルシアを掴まえて、黒く艶のある長い髪の彼女の頭をワシャワシャと撫でてやった。
「や・・やめてくれ〜結び目が解けてしまうではないか・・」
「たまには、違う髪型にしてみろよアルシア〜いつもポニーテールじゃないか・・」
嫌がる口振りをするアメリアは、抵抗せず俺にされるがままで身体を委ねている。
「なぁ・・気にいっているから良いのだ・・あっ・・ばかっ・・」
スルッとアルシアの長い髪を結んでいた紐が解け、パサッと髪がなびく・・。
「・・・・やっぱりな。一度だけ、あの家の風呂上がりで見たからな・・髪をおろした方も良いな」
「妾もそう思うぞ?・・アルシアよ」
「ん〜これでは、シェルやリル達と同じではないか・・って、あっ・・」
何かに気づいたアルシアは、顔を上げて俺を見る。
「まぁ、無理は言わないけどな・・・・ほらよっと」
そう伝えて、俺はアルシアの髪をポニーテールに戻してから歩き出す。
前を歩くカラ達は、偶然にも宿らしき看板を見つけたようで、振り向きながら俺を呼ぶ。
「ハル〜!宿の看板見つけたよ〜!」
「カラ、わかったよ〜!泊まれるか聞いてみて〜」
カラとラニアが宿屋の建物へと入って行き、アメリアは宿屋の前で俺達を見て待ってくれている。
「お待たせ、アメリア」
「いえ、お疲れ様ですご主人様」
「なっ・・急にどうしたの?」
「いえ、一度言って見たかったので・・」
「そっか・・家を買った時は、毎日よろしくね?」
「・・はい、喜んで」
元ギルド受付嬢の笑顔は、素なのか営業スマイルなのか判断がつかないほどの自然な笑顔に俺は見惚れていると、宿屋からカラとラニアが出てくる。
「アメリアさん、その出迎えの言葉は私のですよ」
「良いではないですか、ラニアさん・・経験の長短はありますが、今はお互いにハルさんのメイドの立場なのですから」
「そ・・そうですけど」
そこへカラが乱入する。
「私も、一応ハルのメイド?だよ〜それに、メイドだけの立場でもないでしょ?」
「「 そうですね・・ 」」
「・・まぁ、とりあえず宿の方はどうだった?」
「はい、大部屋が1つあるそうです。普段は会議用で使われているそうですが、追加料金を支払えば私達のような人数でも対応可能だそうです」
「ありがとう、ラニア。この宿に決めよう」
先に俺が宿に入ると、受付に金髪の青年が立ってこちらを見ている。
「いらしゃいませ・・ようこそ宿屋北の鐘へ・・本日は、宿泊ですか?食事のみですか?」
「宿泊でお願いします。先ほど、彼女から聞いたのですが、団体の宿泊も可能だと・・」
青年は一度俺から視線を外し、後ろにいるラニアとカラを見て気付いたようだ。
「・・はい、対応できます。料金が通常より高くなりますがよろしいですか?」
「良いですよ。11人で通常1泊いくらですか?」
「4人1部屋が3部屋で1泊金貨6枚です・・大部屋を使用する場合は、内装などを入れ替えまして、その人件費とベッド等を運ぶ手数料が含まれますので、1泊金貨10枚になりますがどうでしょうか?」
「・・金貨10枚か・・・・ちなみに飯の方は?」
「はい、宿泊される日の夜と翌朝の食事代は含まれていますが、昼食や酒類については別料金となります」
「わかりました。今日から泊まるとして、次に会議で使われる予定はありますか?」
「少々お待ちください・・」
青年は、後ろの棚に置いてある簿冊を取り出し、カウンターの上に広げ確認してくれているようだ。それを見て待っていると、顔を上げて告げる。
「お待たせしました、次回の会議で使われる予定は12日後以降からとなっていますね」
「それなら、その日まで宿泊は可能と?」
「はい、そうなります」
「とりあえず、10日分を先払いでも良いですか?」
「と・・10日分をですか?・・・・問題ありませんが」
アイテムボックスから金貨100枚を取り出し、カウンターに積み上げる。
「・・・・た、確かに全額支払いを確認しました。部屋の準備がありますので、お部屋の案内は1時間ほど待っていただけますか?」
「1時間後・・ちょうど暗くなる頃か。良いですよ、それまでこの辺で時間を潰していますね」
「ありがとうございます。あちらの共有スペースで休憩していてください」
「わかりました」
それから、奥にある広めの共有スペースで休憩する。数人の男達が、宿に入って来て青年の男と話をした後に階段を上がって行き、1時間暗い経過した頃に汗だくとなって宿屋から出て行った・・。
「お待たせしました・・お部屋の準備ができました。こちらが部屋の鍵となります」
鍵をを受け取り階段を上がり3階へと向かう。3階廊下に出ると部屋のドアが1つしかないためこの3階には大部屋しかないのだろうとわかる。
部屋のドアを開けると、11人分のベッドが綺麗に並び部屋の半分を占めている。残りの半分は、コの字のようにソファが置いてあり中央に絨毯が敷かれてあった。
とりあえず部屋に入った俺は、部屋の奥の壁側のベッドの上に寝転がる。すると、背後で何かを動かすような音が聞こえ顔を向けると、カラ達がベッドを隣り合わせになるようくっつけている姿があった。
「なにしてんの?」
「なにって、1人1つのベッドだと寂しいからみんなで寝れるようにしてるの」
カラは当たり前のような表情で答え、なんか俺の質問がいけないみたいな感じになりそれ以上なにも言えなくなってしまった・・。
その作業が終わった後に、ラニアとアメリアが部屋にアヤシイ物がないか部屋を点検している。それを手伝うかのように獣人シスターズとアリスが部屋と廊下をウロウロしている。
部屋の出入り口ではないドアを開けたラニアが急に声をあげる。
「あぁー!浴槽がありますよ、みなさん!」
それからは、久しぶりの風呂ということで夕食のことも忘れて全員で交代しながら楽しむことになったけど、最初から最後まで俺は浴槽に浸かっていなければならず、後半はもう苦行だったことを悟られないように必死だった・・なぜなら、彼女達が楽しそうに俺と風呂に入る時間を壊したくないという男の意地だったから・・・・。
半端な話数ですが、12章は終わります。
休みも終わるので、投稿ペースはいつもぐらいに戻ります。




