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12章 王国離脱編 25話 宿屋の猫人族

アクセスありがとうございます


 無事に馬を買うことが出来て野営地に戻り、出発しても街の日没の閉門時間に間に合わないため今夜もここで夜を明かすことになった。


 あの名も無き馬はリル達と挨拶?を済ませ、荷台の近くで大人しくしている。


 残っていたメンバーのカラとアメリアは、今夜も野営することを前提にしていたのかいつものように野外調理器具を出して夕食を早めに完成させている。


「明日は、街で食糧の買い出しができるから材料をたくさん使っちゃった・・」


 カラが大鍋を俺の近くに置いて笑っていると食料の消費を取り仕切っているラニアが焦ったようにカラに何を使ったか問いただしていた。


 馬を買えたことで無事に旅を続けられる安心感もあり、久しぶりにアイテムボックスに収納しているエールが入った樽と果実酒と果実水入りの樽を並べて置く。


「これを見ろ〜!今夜は、みんなで飲むぞ〜!この赤い線がエールで、青い線が果実酒ね。アリスはや飲まない子は、印のない樽の果実水を飲むように〜!」


「「「 は〜い!! 」」」


 各人で飲みたい樽の前に並びコップに注いでいく。もちろん間違わないようにアリスには、俺が果実水入りコップを手渡す。


「・・ありがと」


「おう、間違って果実酒を飲まないようにな?」


「うん」


 今夜の夕食は、肉入りシチューだけどたくさんの具が入っていて量もたくさんあり満足なメニューで、エールと果実酒をおかわりする子が続出している。


 酔い潰れた獣人シスターズは、野外イスからずり落ちて終電の疲れ果てたサラリーマンのような姿勢になって、パンツが丸見えになっている。


 その残念な4人を、酒を飲んでいないラニアとアメリアが抱き抱えて順々にテントへと運んで行くのを見送ると、隣りのイスでゆっくり食べていたアリスが、急にしゃっくりをはじめる。


「ヒック・・ヒッ・・」


「アリス?」


 覗き込むようにアリスを見ると、彼女の顔が赤くなっているように感じた。焚き火の光のせいと思ったけど、白目が少し赤くなっている。


 彼女が両手で持っているコップが、いつの間にか俺のエールが入っているコップだった。


「まさか、飲んだの?」


「ヒ・・・・ック・・飲んじゃった・・」


「マジか・・早く水飲んで」


 アイテムボックスから水筒を取り出し、アリスに水を飲ませる。


 グビッ・・グビ・・


「うぅ〜 ハル・・もう飲めないよ」


「わかった・・このままテントに行こうな」


「ん・・」


 アリスを抱き抱えてテントの中に入ると、酔い潰れた獣人シスターズが並んで横になっている。それを見守るようにアメリアが1人座っていた。


「ハルさん・・アリスちゃんどうしたんですか?」


「間違って、俺のエールを飲んじゃったみたいなんだ。一応水を飲ませたんだけどね」


「そうですか・・でしたら、こちら側に寝かせましょう」


 獣人シスターズの寝相に巻き込まれないように離れた場所でアリスを寝かす。


「ハルさんは戻ってください。ここは、私がみてますから・・」


 薄暗いテントの中でニッコリ笑うアメリアを見て、俺は彼女の横に腰を下ろす。


「どうしました?」


「ん?久しぶりに2人で話そうかなと・・」


「もう、そんな気を使わなくても良いですよ」


「まぁ、良いじゃん。こうやって話すことなかったし」


 それからアメリアと2人で、受付嬢時代の時の懐かしい話しをしたり、地方都市の冒険者ギルド嬢をしていた理由を聞いたりと長話をしていたら、外にいたカラやシェル達がフラついた足取りでテントに入って来て、呂律がめちゃくちゃで聞き取れないまま適当に相手をしていると、満足したのかそのまま横になり寝息をたてていた。


「カラさんもあそこまで酔うほど飲むんですね・・」


「みたいだね・・カラも俺の人生に巻き込んじゃったしな」


「ハルさん、ここにいる皆さんは、貴方の傍にいたいから自分の意志でいるんですよ?」


「そうだよね・・ありがとう」


 アメリアの頭を撫でてから俺は立ち上がる。


「明日は街に行くけど、早く寝るんだよアメリア」


「はい・・ご主人様に従います」


「おいおい・・ご主人様って・・ハルで良いよ」


「はい、ハルさん」


 一度テントから出た俺は、中身がほとんど残っていない樽をアイテムボックスに収納しイスに座る。


「あいつら、ほとんど飲んでるじゃないか・・」


 間違いなく、シェルとアルシアの2人が飲んだことが容易に想像つく。普段からあまり酒を飲ませていないから今夜ぐらいは良いだろうと思いながら新たな薪を焚き火に投げ込む。


 誰もいなくなり1人で焚き火の前で過ごしていると、アメリアがテントから出てくる。


「眠れないの?」


「そうですね・・きゃっ」


 隣りのイスに座ろうとするアメリアの手を掴み、されるがままのアメリアの腰に腕を回し抱き込みながら膝の上に座らせる。


「夜は冷えるから・・」


「はい・・」


 アメリアと2人で身体を重ね夜を過ごし、静かなテントへと戻り朝を迎えたのだった・・。



「う〜ん・・頭痛いよ〜」


 飲み過ぎた獣人シスターズとカラが、朝から使い物にならない状態でイスに座っている。


 パーティー内のメイド長のラニアと元受付嬢のアメリアの2人が朝食を作り、同じ元受付嬢のカラがポンコツなままなので、久しぶりに俺は朝食の支度を手伝う。


 朝食を食べれそうに無い、青い表情をしている5人を放置して俺達は朝食を食べて出発の準備を進める。


 銀金黒茶色のケモ耳が力なく倒れ目を瞑っている4人を毛布を敷いた荷台の上に寝かせ、寝間着のままのカラも空いたスペースに転がす。


「ハルさん、カラさんは雑に扱うんですね・・」


「アメリア・・カラは、幼馴染でも俺より姉さんだからな・・」


「そういうものなのですか?」


「あぁ・・起きてたら、こんなこと言えないけどね」


 横になっているカラの目がジロリと見ていたけど、それ以上に二日酔いが酷いためすぐに目を瞑り何も言ってこなかったことに安堵する。


「さぁ、出発して街に入ろう」


 忘れ物がないのを確認し、御者台に座るラニアとアメリアに出発の合図を出す。


 あの名も無き馬は、前の馬より能力が高いようで歩く速度が速いようだ。


(・・なかなかやるな、あの馬・・)


 ヒヒィン・・


 俺の心を読んだかのように馬が鳴き歩き続ける。


 それから5時間ほど移動したようで陽が青空に高く上がった頃に街に辿り着くことができ、門での手続きも順調に済み街へと入ることができた。


「ハルさん、馬車を預けて来ます」


「あぁ、よろしく。ここで待ってるから」


「はい」


 ラニアとアメリアの2人が馬車預かり所へ場所を移動させる。


 二日酔の5人は街に着く前に復活したようで、何事もなかったかのようにケロッとしていた。


 それから数分待っていると、ラニアとアメリアが店から出て来て戻ってくる。そのメイド2人が通りを歩く姿をすれ違う男達が振り向いている。


「「 お待たせしました 」」


「おかえりラニア、アメリア」


 俺の前に立ち一礼するメイドから俺に視線が集中する見知らぬ男達に俺はニヤリと笑ってから、宿屋街を目指すことにした。


 そして、過去の記憶によりあの宿屋を探したのだ・・。


「見つけた・・」


 マリアを帝国領から王都へと送る旅の途中に泊まった宿屋ニャンちっ亭だ。相変わらずふざけた名前だと思いながら中に入ると、受付でこちらに黒い頭を向けて寝ているヤツがいた。


「あの〜すいません・・」


 すぴぃ〜・・すぴぃ〜


(ミオと同じ黒髪の猫人族・・堂々と寝る強さは、今も健在か・・)


「もしも〜し!」


「・・起きないですね?」


 隣に立つラニアが爆睡している授業員を見ている。


「ご主人さま、他の宿にしますか?」


 同族のミオの声に反応したのか、急に顔をあげる。


「うわぁっ・・」


 思わず驚きの声を出すも、両目を半開きのままだらしなく口を開けて上を向いて寝ているようだった。


「・・こんなダメ猫がいるなんて・・」


 なぜかミオが意気消沈している。


「起こしましょうか?」


「ラニア、ここは俺に任せてくれ」


「ハルよ、またアレをやるのか?」


 少し離れた場所に置かれたソファに座るシェルがニヤつきながら呟く。


「あぁ・・学習能力がない猫には、これがちょうど良いからね」


 気持ち良さそうに寝息をたてて寝ている猫人族の少女にアイテムボックスから取り出した人肌ぐらいに温めた濡れタオルで顔を覆う。


「フゴォッ・・グゴッ・・ンゴゴッ・・」


 たっぷりと水分を含んだ濡れタオルが、ベッタリと顔に貼り付き口と鼻を容赦無く塞ぎ呼吸困難に陥っている。

未だ寝ているのか、両手が必死にバタつかせている。


「くっくっくっ・・あれはネコ泳ぎじゃ」


 不思議な動きにアルシアとシェル以外は驚きのあまり無言で見つめているところで、シェルが笑いながら説明する。


 涙目になりながら満足した俺は、このままだと危険なため濡れタオルを取る。


「ブハァッツ!!・・ハァ・・ハァ・・」


 涙目で必死に呼吸をする猫人族の少女を見ながら、何事もなかったかのように聞く。


「しばらく団体で泊まりたいんだけど、部屋空いてる?」


「・・殺す気にゃー!」


「大部屋1部屋で何人泊まれる?」


「死ぬところだったニャー!」


「1泊いくらだった?」


「見知らぬ川が見えたニャ!・・ワタシじゃなきゃ、素直に渡ってたニャ!」


「・・みんな、ダメだ。このネコは俺の言葉が通じないようだ。ゴメンけど、他の宿屋にしよう」


 受付に背を向けて、皆の顔を見ながら他の宿屋へ行こうと伝えたところだった。


「んっっニャー!!」


「うおっ!猫パンチ!?」


 予想通りの展開のため、軽く猫パンチを躱すと諦めたのか次がなくて残念な気持ちになってしまった。


「最悪な客だニャ・・いったい何しに来たニャ?」


「何しにって、泊まりたいから来てるに決まってるじゃん?」


 しばらく彼女と視線を合わせていると、ケモ耳がピコっと動く。


「思い出したニャ!お前は、あの時の!」


 ダンッ


 素早い動きでカウンターに乗り、俺へ襲いかかって来た・・・・けど、リルとクウコの2人の速さには勝てずカウンターの上に立ったリルとクウコの2人に尻尾を掴まれ、ブランブランと揺れている。


「ハルに何する気?」


 冷淡な声のクウコの警告に、痛みを我慢し声を出す。


「ごめんなさいニャ・・」


 タタンッ


 さすが猫の身体能力・・逆さに落とされても全身を捻り綺麗に着地している。


「おぉ・・」


「猫人族なら、当然ニャ・・それで何人で泊まりニャ?」


「今回は11人だよ」


「じゅ・・11人ニャ?・・はーれむニャ・・1泊で金貨13枚ニャ。」


「わかった・・飯は?」


 料金を支払うついでに飯のことを聞く。


「夜と朝が含まれた値段ニャ」


「お?・・変わったな」


「別だと高いって苦情がいっぱいきて、客が減ったからニャ」


「そうか・・」


 3部屋分の鍵を受け取り2階の部屋へと移動する。これから彼女達の部屋決めの戦いが始まるため、俺は階段から一番近い部屋に入り4つ並んだベッドの一番奥で寝転び終わるのを待つことにしたのだった・・・・。


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