12章 王国離脱編 26話 冒険者ギルド
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王国の北側で帝国に1番近い辺境都市ノスガン。
他の都市と違って都市を守るように囲んでいる防壁は、魔物対策より人族対策寄りに作られている感じだ。
俺達が入った南門は王国側のため出入りは厳しくないけど、帝国側の北側は厳しいらしい。
部屋決めで熱くなっている彼女達の戦いが終わりそうにないため、1人寝転んで時間を潰していたけど飽きてしまい今は1階の食堂を兼ねている共同スペースの椅子に座り、受付で揶揄った猫人族少女のクロコに無理やり買わされた銅貨4枚の高級?な紅茶を飲みながら彼女から情報を仕入れる。
「それで、帝国に行くニャ?」
「そうだね。しばらくこの街で補給して準備を整えてから帝国に行く予定だよ」
「この街の豪商キンポには気を付けるニャ」
「キンポ?・・あいつには、もう痛い目にあったから大丈夫だよ」
「もう被害にあったニャ?キンポには、悪い噂があるから2度と近づかない方がいいニャ」
「どんな噂なの?」
クロコは、軽い足取りで俺の横の椅子に座り誰もいないのに周囲を見ながら小声で告げる。
「人売りニャ・・特にクロコのような美少女を巧みな話術で誘って、気付いたらお金の支払いをできない状態にさせて売買違反で追い込み美少女を払えない金銭の代用として持ち帰るニャ」
「あれがあの男の手口だったか・・」
クロコは夕方の時間になり依頼を終わらせ戻って来た冒険者達の受け入れで忙しくなり。その様子を眺めているとミオが降りて来た。
「ご主人さま?」
「ミオ・・決着はついたかい?」
「はい、今夜は私とアルシアとラニアさんが同じ部屋になりました」
「りょ〜かい」
「あと、もう1つあります・・」
「なんだ?」
「皆さんが、平等に同じ部屋で寝たいと希望しているので・・」
「いいよ。それまで、この宿に泊まるよ」
「ありがとうございます」
ミオは俺の返事を聞いてから踵を返し階段を上がり姿を消す。
「野営でいつも同じテントで寝てるのにな・・」
それから差し込んでいた陽の明るさがなくなり、魔法ランプの明かりが灯り夜を迎える。
いろいろな組み合わせの冒険者パーティー達が共同スペースで宿の夕食を食べて部屋に戻ったり、外の酒場で酔っ払って帰って来る冒険者を見ているとクロコが俺達の食事の準備ができたと教えてくれた。
『みんな、夜飯の準備ができたみたいだから下に降りて来て』
さすがに11人で1パーティーは他に存在しないため、他の宿泊冒険者達の食事が終わってからとなる。この人数で半分もの席を使っているから。
肉と野菜のバランスが良い夕食を食べたあとは、部屋に戻ると全員が俺が寝る部屋に集まり、俺は1人ずつに生活魔法クリーンをかけて全身の汚れを落とす。
「・・カラ、服を脱ぐ必要はないよ?」
「良いの・・気分が違うのよ」
生活魔法クリーンは、全身と服を浄化してくれる冒険者にとって非常に便利な魔法だ。なのにカラ達全員は下着姿になっている。
「・・・・」
何も言わず生活魔法クリーンをカラにかけて汚れを落としていく。もちろん彼女が手に持つ服も効果範囲内のため浄化される。それを10回繰り返して皆の寝る準備がひと段落した。
「そうそう、この街で準備と休養を兼ねて4日は過ごす予定だから明日は買い物とか自由時間にするからね」
そう伝えると、部屋のベッドに座り女子会が始まる。
そんな楽しそうな会話を聞きながら、男1人の俺は話す相手もいないためベッドに寝転び眠くなるまでの時間を目を瞑り過ごし、いつの間にか眠っていたらしく目を覚ますと部屋の窓から陽が差し込んでいた。
「朝か・・」
モゾモゾ・・
俺の声に反応し胸元に重さを感じる何かが動く。ソッと膨らんだ掛け布団をめくり上げると、リルとクウコが潜り込んで寝ていた。
そんな2人の頭をソッと撫でて布団を下ろす。
(・・相変わらず脱いだままの格好だな)
脱ぎ散らかした2人の服がドアからベッドへ続くように床にあるのが目に入る。
キィ・・
ノックも無くドアが少しゆっくりと開けられ、ラニアが顔を覗かせ視線が合うとゆっくり音を立てないように入ってきてそのまま自分のベッドへと戻り寝間着からメイド服へと着替え始める。
「今日は、白か・・」
目にしたモノにそう呟くと、ラニアは動きを止めてチラッと振り返った後に小さく頷き止めていた手を動かし着替えを終える。
そして部屋を出て行く。
「こんな朝早くに何をするんだろう」
廊下から僅かにラニアとアメリアの話し声が聞こえ、階段を降りて行く足音は3人ある。気配探知スキルを発動し3人目を確認するとアルシアだった。
(アルシアか・・2人の護衛かな)
そのまま宿を出て行く3人の気配を途中で追うのをやめて、足元でモサモサ動く2つの尻尾がくすぐったくなり2人を胸元からベッドへと転がし俺はベッドから出る。
しばらくしてからラニア達が戻ってきて、何処へ行ったのか聞くと朝一があるか探しに行ったらしく、今朝は下見に行っただけで明日買いに行くらしい。
それから宿屋で朝食を食べた後に日没までの自由行動として解散する。
俺は、この街の冒険者ギルドに行くことを話すと獣人シスターズとアリスが同行することになる。
宿で待機するラニアとアメリアに声をかけて宿屋を出ると、通りにはたくさんの人達が行き交っている。
のんびりと街並みを見ながら通りを歩き冒険者ギルドを目指す。途中にあった商店と出店に興味津々の獣人シスターズを見ながら移動するため、なかなか前に進めない。
クイッ・・クイ・・
シャツを引っ張られ、下を向くとアリスが見上げている。
「どした?」
「喉渇いた・・」
店先に置かれた古びた大きな樽の上にアリスを座らせて、アイテムボックスから果実水入りの水筒を取り出し手渡す。
「果実水でいい?」
「うん」
両手でゆっくり飲む仕草を見ながら、近くの商店でウロウロする獣人シスターズを見守る。
「ありがと・・」
アリスから水筒を受け取りアイテムボックスに収納すると、商店から怒鳴り声が聞こえた。
「獣人奴隷が、俺の店の前でうろつくんじゃねーよ!」
「アリス、行くよ」
「うん」
アリスを樽から下ろして、怒鳴り声が聞こえた商店へと移動する。そこには、ケモ耳を倒し俯くミオとミリナの2人の姿があり、ケモ耳がバレないようフードを被らせているリルとクウコの2人は少し先の離れた商店の商品を眺めていて気付いてないようだ。
あと数歩でミオとミリナに辿り着くところで、店主らしき男が桶に入った水を追い払うように撒き散らす動作を視界に捉える。
「吹き飛べ!」
風魔法ウインドショットを反射的に放ち、ミオとミリナに撒かれた水は風圧によって店内へと吹き飛ばされ飛散した。
ビュ・・バシャッ!
「うわぁ!」
男の悲鳴と共に店内に水が飛び散る。
「大丈夫か?」
「「 ・・はい 」」
「ちょっと待てよ!俺の店がびしょ濡れじゃねーか」
「・・・・」
びしょ濡れの店主は立ち上がり、俺に文句を言ってくる。
「お前は、この獣人奴隷のなんだ?」
「・・さっきから獣人奴隷ってうるさいんだけど?」
「はぁ?・・どこからどう見ても奴隷だろ?首輪してるのは獣人奴隷じゃねーか」
「なら、この子達が買い物をしちゃいけないのか?」
「獣人奴隷なんか、飼い主に・・ひぐっ・・」
表沙汰に店主を殴り倒すと、面倒なことになってしまうため殺気を飛ばし喉元を締め付けられる感覚を与えて黙らせる。
「どうしたのハル?」
不意にクウコの声がする。
「あぁ、この男がミオとミリナを獣人奴隷だと何度も貶すんだ」
「そう・・消しちゃう?」
「そんなことしたら周囲の人に通報されて牢獄送りになっちゃうよ」
「ふふっ・・大丈夫だよ。任せて」
店主に向けて放っていた殺気を飛散させると、クウコがゆっくりと近づいて行く。
「ねぇ、どうして獣人奴隷が嫌いなの?」
「・・はぁ・・はぁ、人族じゃないからだ」
「それだけで?」
クウコは被っていたフードを後ろに下げて、自らケモ耳をあらわにした。
「お、お前も獣人か?」
「そうよ・・ねぇ、今ここで死にたい?」
「・・い、嫌だ・・俺には娘が・・」
すると、店の奥から6才暗いの小さな女の子が姿を現す。
「とと〜!お手伝いに来たよ〜!」
「・・ステラ」
「あっ・・お客さんだぁ〜いらしゃいませ〜・・あれ?猫ちゃん?」
「違うよ・・あなたのお父さんが大嫌いな獣人族よ」
「とと?・・ととは、獣人族が嫌いなの?」
ステラという店主の娘は、瞳を潤ませ物凄く悲しい顔をする。
(ステラちゃん、グッジョブだ)
「えっ?・・あ・・いや・・嫌いじゃないよ・・逆に大好きだよステラ・・うん」
「ホントに?」
「もちろん・・ととは、嘘をつかないよ」
「・・嘘つき!・・ステラは知ってるもん。このお店に獣人の人が立ち寄らないって・・」
「なっ・・」
「嘘ついた、ととなんて大キライ!」
そう叫んだ少女はそのまま店の奥へと走り姿を消してしまった。
娘に嫌われた店主は、両膝を床につき走り去った娘の方を見ている。その後ろ姿を見て俺は、店主の肩を軽く叩き呟いてから立ち去る。
「・・ドンマイ、おっさん」
凹んだままのミオとミリナを連れて、とりあえず冒険者ギルドへ辿り着くことができた。昼間の冒険者ギルドは冒険者が少なくギルド職員の数の方が多い。
依頼掲示板が掲げられている反対側には、供用スペースがありそこの椅子に座り無造作に棚に入っている情報誌を手に取り誰もいない長椅子へ座りテーブルに情報誌を広げていると、ギルドに併設されている食事処で買ったであろうジョッキに注がれた果実水を嬉しそうに持つミオ達が戻って来た。
「す、凄い量だね」
「うん・・冒険者スペシャル」
「リル・・なにそれ?」
「わかんない・・一番上に書いてあったから、決めたの」
「そう・・アリス、飲める?」
「が・・頑張る」
トントン・・
不意に左肩を叩かれ顔を上げると、30代くらいの女性が俺を見つめ右手を出してくる。
「あっ・・すいません」
「銀貨3枚だよ」
銀貨3枚を支払うと女性は笑顔で頷き隠し持っていたのか、ジョッキに注がれたエールをテーブルに置いて戻って行く。
「ご主人さまもどうぞ・・」
「おぉ・・ありがとう」
支払いは俺だけど、気を利かせてくれた彼女達に何も言えなくなった俺はキンキンに冷えたエールを昼間から飲み情報誌を読むことにしたのだった・・・・。




