12章 王国離脱編 1話 旅のはじまり
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「ラニア、お疲れさま・・」
宿屋から出た俺たちは、いつも通り裏路地で隠密スキルを発動し周囲の目を避けながらラニアとミリナが待つ西門へと向かい、無事に合流を果たす。
「ハルさん・・お待ちしていました」
西門前の乗合馬車が数台並ぶ広場に、ラニアが所有する場所も違和感無く並び荷台に予約済と掲げられているため間違って見知らぬ冒険者が乗ることを回避させている。
そのまま姿を眩ませているリル達を荷台に乗り、ラニアが御者台に乗ったところを確認して最後に予約済看板を取外し乗り込みラニアに声をかけた。
「ラニア、行こう!」
「はいっ!」
ゆっくりと馬車が動き出し西門へと向かう馬車の列に並ぶ。これでこの王都が見納めだと思うと感慨深いものがあるはずなのに、いろんなことがありすぎて俺の心は複雑だ。
門前で少し進んでは止まりをを繰り返しながら門兵の点検を受ける順番を待っていると街並みに騎士達の姿が目立ち始めてきた。
(・・王都の警戒が上がってきたか?)
そう思っていると、俺達の番になったなったようで前の方から門兵とラニアがやりとりをする声が聞こえる。
「・・商人馬車か、目的地はどこだ?」
「西の都市ニシバルへ行く予定です」
「後ろに護衛も乗せず1人で?」
「・・そうですね」
「女・・怪しいな」
前の方で少し不味い雰囲気になってきた。今から、数人の隠密スキルを解除する訳にもいかないし、どうしようかと考えていると、門の詰所から数人の門兵が近づいてきた。
「ケイン!門を封鎖するぞ!・・騎士団からの命令だ!」
「なんだと!?・・わかった!」
ラニアを問い詰めていた門兵が離れた隙に俺は、ラニアに告げた。
「ラニア、すぐに出すんだ!」
パチンッ!
馬に鞭を叩く音が聞こえ、馬車が急ぐように動き西門をくぐり抜けようとする。
「おい!・・待て!」
門を閉めようとしていた門兵達は、急に動き出した馬車に制止を呼びかけるも強硬手段に出ることがなかったため無事に西門から外へ出ることが出来てそのまま西門は固く閉ざされた。
そのまま逃げるように街道を走らせ、俺は後ろで王都西門を見送っていると通用門が開き数人の騎士が姿を見せる。
陽の光に反射する銀色の鎧から見て、王国騎士団の連中とわかり警戒するもそのまま騎士達は通用門から中へ入り姿を消した。
「もう、スキル解除していいよ」
俺は、そう伝えながら自身にかけていた隠密スキルを解除するとみんなもスキルを解除し姿を現し、それから総勢11人での旅が始まる。
パーティーから抜けたマリア達や新しく加入したアメリアそしてイレギュラーなアリス・・この子達と俺の旅は始まったばかりだ。
「・・いったい、どうなっていくんだろうな〜」
そう呟きながらオレンジ色に染まる空を眺めていると、ちょこんとアリスが俺の膝の上に乗って背中を委ねてきた。
「どうした?・・アリス」
「・・べつに・・ただ、こうしていたい気分なの・・」
見た目の幼女とのギャップがありすぎる程の落ち着いた口調のアリスは、見上げながらそう呟いた後は黙ったまま遠い風景を眺めている。
その姿を見ながら風に揺れる長い黒髪を撫でていると、別れた4人の笑顔を思い出してしまい視界が滲んでしまい心の声が口から溢れてしまった。
「・・ちゃんと無事に帰れたかな・・」
「ん?・・泣いているの?」
「あはは・・ちょっとね・・」
俺の頬から落ちた涙がアリスの首元に落ちてしまい、見上げるアリスに泣いていることがバレてしまった。そして俺の感情に敏感なミオが傍に寄り添い無言で隣に座っている。
もう少し琴音や美音そして真衣と愛菜達と話しをすれば良かったと後悔する感情が湧き上がってくるも、もうあとの祭だ・・もう叶わぬ願いだと諦めた俺は、右手で隣に座るミオを抱き寄せ彼女の胸元に頭を乗せる。
「ハル・・」
耳元で聞こえるミオの優しい声を聞きながら、胸の奥に溜め込んでいた感情をミオだけに静かにぶつけたのだった・・・・。
「ありがとう、ミオ」
「ご主人さま、私でよければいつでもどうぞ」
それから街道を順調に移動する俺達だったけど、王都を出たのが夕方だったため移動距離を稼ぐことはできず、まだ遠くに王都の街明かりが見える場所で野営をすることにした。
アイテムボックスから大型テントを取り出し、獣人シスターズに設営を任せた俺は野外調理キットも取り出してラニアとカラそしてアメリアに夕食の支度を頼んでから、馬車の荷台に2個目のテントを張り2つ目の寝床を確保する。
1人で荷台のテントを張る作業をしていると、外から覗き込むようにリル達が見守っている。
「もうテント設営は、終わったの?」
「終わったよ、ハル」
リルが自慢げに答えながら荷台へと入ってくると、張ったばかりのテントの中でゴロゴロと転がり始めた。
「ちょっと、リル・・まだ終わった訳じゃないから・・」
そう言うも、笑いながら転がるリルは俺を無視している。そして案の定クウコ達も続いて中に入り遊び始めてしまった。
「おいおい・・勘弁してくれよ」
「やっぱり子供ね・・獣人達は」
不意にアリスの声が聞こえ振り向くと、なんとか中を覗き込むような感じで頭をプルプルさせている姿があった。
「アリス・・君もいたのか」
「わ、わりゅい?」
明らかに無理な姿勢で、力んだ声で呟くアリスの声は小さく震えていた。その必死さが面白く、俺は彼女を抱き上げ荷台の中へと入れると赤い顔で俺を見つめる。
「べ・・別に・・アレなんだからね?・・聞いてるの?」
どうやらアリスにはツンデレ属性が備わっているようだ・リルとクウコとは違う新たな属性だと俺は認定する。
「はいはい、わかったよアリス」
「今夜は、一緒に寝るか?」
「ばっ・・ばかなこと言わないでよ、なんで一緒に・・・・」
「一緒に寝ようね〜ハル〜」
さっきまで4人で遊んでいたリル達が、アリスを退かし俺に抱きつき体を密着させている。
「な・・なんなのあなた達の関係は・・」
「ん〜なんだろう、一心同体・・かな?」
アリスの疑問にクウコが答える。
「たしかにそうだな、俺達は一心同体だな・・」
「そうだね、今夜は久しぶりにハルと1つになりたい〜」
突然のリルの言葉に驚いていると、クウコ達が同意し騒ぎ始め逃げられない状況になってしまい俺は同意するしかなかった。
この場にいるアリスだけが顔を赤くし俯いてしまっているところで、カラが俺を呼ぶ。
「ハル〜!夕飯できたよ〜!」
「わかった〜今から行くよ〜」
馬車の荷台から降りるとカラが笑顔で待っていてくれる。そしてスッと手を差し出してくれた彼女の手を握り降りるとギュッと抱きしめられた。
「ふふっ・・つかまえちゃった」
「カラ・・」
カラに抱き締められた俺の横をリル達が走り抜け、夕食の配膳をしているラニアがいる場所へと向かって行く。その背中を見送りながら、俺はカラに告げた。
「カラ・・俺達も行こうか?」
「・・うん」
手を繋ぎ2人一緒に歩き出した直後に、この甘い時間を壊す声が背後から聞こえる。
「ちょっと、待ってよ・・」
足を止めて振り向くと、荷台から顔を出し俺を見るアリスは涙目に見える。
「どうした?飯だから行くよ?」
「うぅ・・降りれないのよ」
「ハル?・・そんなイジめちゃダメよ」
「そうだね・・」
隣に立つカラに耳元で言われ、繋いでいた手を離し荷台から降りれなくなっているアリスに両腕を上げさせ抱き抱えたまま下ろすことなくそのままカラと皆が待つ場所へとゆっくりと歩く。
「・・ハル?」
「なに?・・カラ」
「アリスって、ハルと同じ黒髪黒目だから・・その、親子みたいね」
「そう?それ以外はどこも似ていないよ?」
「そうだけど・・気になっちゃって・・」
「・・・・」
俺に抱っこされたままのアリスは、俺とカラの会話に入ることなくギュッと俺の服を握っているだけだった。
「ハルさん、食事の準備できました」
「ありがとう、ラニア」
焚き火を囲むように野外イスが置かれていて、俺が座ると席順が決まっているかのように皆が座っていく。俺の左右にはリルとクウコが座りその隣にミオとミリナが座っている。
アリスとアメリアは、まだこの流れがわからないため、ラニアが教え動いている。そして食事を食べ終わった後は基本的に自由時間としているため、俺からみんなに干渉することはしない。
空は既に暗くなり夜になったため、特にすることが無い俺は荷台に張ったテントの中へと入り横になる。始めての野営となるアメリアとアリスに配慮した結果だ・・。
「とりあえずは、王都脱出成功だな・・」
そう呟きながら、今後の具体的な行動を考えていると荷台が僅かに揺れて入ってくる存在を感じる。
「寝ちゃった?」
リルの声が聞こえる。
「起きてるよ、リル」
「うん、知ってた・・」
バサっと俺の上に乗ってきてケモ耳を俺の顔に当てるかのように顔をグリグリと押し付けてくるため、期待に応えるためリルのケモ耳をワシャワシャと触り無防備に揺れる尻尾も捕まえた。
「んふふっ・・」
全身をくねらせながら笑うリルと戯れていると、不意に姿を現すクウコ達3人に抱き付かれる。
「うわっ・・隠密スキルで入ってきたな?」
4対1の状態になり圧倒的不利な状況に陥ってしまう俺は徐々にされるがままになっていくものの・・。
「このままじゃ、男が廃る・・」
4人の弱点である長い尻尾をなんとか掴み脱力させたら、もう俺のターンの始まりだ・・・・。
自慢の尻尾を俺に握られてしまった4人は大人しく並んで寝転んでビクビクと尻尾を揺らすため、両手首がつられて動いてしまう。
「急に大人しくなったね・・」
俺の問い掛けに笑顔になるだけの4人は、何故だか嬉しそうな表情をしている。
そして俺を受け入れるかのように4人が両手を上げて俺を受け入れるのをアピールする姿に俺はそのまま飲み込まれるように身体を重ねていった・・・・。
12章もお付き合いお願いします。




